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『九条の大罪』法律とは、そして正義とは何か? 読者に訴えかける戦慄の人間ドラマ

『闇金ウシジマくん』の作者として知られる真鍋昌平先生の最新作『九条の大罪』。

前科持ちやヤクザ、半グレといった曰く付きの人間を顧客に持ち、複雑且つ厄介な案件をそつなくこなす異様な雰囲気を醸し出す弁護士九条間人(くじょうたいざ)が主人公です。

九条の大罪 著者:真鍋昌平

九条の信条

九条が受け持つ顧客は前述の通り、およそ一般人からはかけ離れた裏の世界の人間ばかりです。弁護士と聞くと、依頼人を守る為に奮闘する正義のヒーローであり弱者を救済する存在、といったイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?

世間から見れば、九条は善良な人間の対角に位置する自己保身に走った被告人を擁護する悪徳弁護士、という印象を持たれています。

そんな世間の声を気にも止めず、ただ依頼者を守ろうとし続ける九条とは何者なのでしょうか。

倫理観を揺さぶる程の衝撃

作中で被告人として九条が受け持つ人間の多くは、社会から、そして世間から何かしらの搾取を受けてきたいわゆる社会的弱者です。生き地獄のような日々を生きてきて尚、騙され罪を犯して更に泥沼に嵌まってしまう姿を見ていると正しさとは一体何なのか、心が揺らぎます。

見る角度によっては、九条の存在はドン底まで落ちた人間に対しても平等に手を差し伸べてくれる救済者にも見えます。しかし角度を変えれば弁護をする必要性の感じられない悪人の側につく、道徳的観念を持ち合わせていない弁護士と見ることもできるでしょう。

分かりやすい正義が持て囃されがちな現代において、読者の目に九条間人の姿がどう映るのかにも注目したいところです。

九条の個性

作中の注目して頂きたいポイントが九条間人の個性的な生活スタイルです。

知人のビルオーナーから1万円でビルの屋上を借り、そこにテントを張って暮らしている九条。急を要する依頼よりも朝食のハンバーグを先に食することを優先するマイペースぶりを発揮することも。ある意味で自分なりの正義を貫いているように見えますが、その反面何にも関心がないような空虚さも感じられるのです。

依頼者に対してどこまでも誠実な九条。恩義のある先輩弁護士を前にしても自分の信条を貫く九条。作品の端々から醸し出されるその不思議な魅力。正義や悪などといった言葉で一括りにできない程の吸引力のある主人公なのです。

法律とは、そしてモラルとは何か

法律とは、国民がルールを守り社会秩序を守ることで生活をより豊かにするために存在しているもの。私達はそう学校の授業で習ってきました。

しかし、本作を読んでいると今まで自分が見てきたものだけが世界の全てではないことに気が付くことでしょう。そして法律は弱者を守ってくれるものではないかも知れないということにも。

読み進めることが怖い、でも読み進める手は自然と進み、絶えることなく流れ込んでくる感情の波に溺れそうになる『九条の大罪』。法とモラルと感情が交錯する極限のドラマを、ぜひ堪能して下さい。

執筆/もり氏(https://twitter.com/morishi0522

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