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新生活応援! 友だち作りが楽しくなる友情マンガ特集!!

少年マンガに少女マンガ、成人向け作品など……マンガには、さまざまな読者を対象にした作品があります。その中で共通して人気があるのは、人の心を動かす「友情テーマ」の作品です。

人との交流は、すべての人にとって身近なテーマ。他方、コロナ禍に人と会う機会が減ったことをきっかけに、人間関係の在り方も変わってきています。オンライン授業やリモートワークに慣れたことで、友だち作りに苦手意識をもつ人もいるかもしれません。

新年度がスタートして、環境の変化によるストレスをためていませんか? そんなあなたに、人とのコミュニケーションが楽になる友情マンガをご紹介します。

新感覚コミュニケーション・コメディ

オダトモヒトの『古見さんは、コミュ症です。』は、「週刊少年サンデー」(小学館)で2016年から連載中の人気作品です。

只野くんは、ただの人です――。平凡な少年・只野仁人(ただのひとひと)は、この春から私立伊旦(いたん)高校に通うことになりました。しかし、ここは名前の通り「異端児」ばかりの学校です。個性豊かな高校生たちが彩る友情コメディをのぞいてみましょう!

古見さんは、コミュ症です。 著者:オダトモヒト

只野くんは、中学時代に無理に個性を出そうとして、イタい思いをした経験の持ち主。高校進学に際し、「周りの空気を読み、波風の立たない高校生活を送る!!」という目標を掲げています。しかし、入学早々自己紹介でスベってしまい、早くも自分の高校生活が終わりを告げたことを悟ります。

只野くんの隣の席になったのは、古見硝子(こみしょうこ)。周囲が話しかけるのをためらうほど美しい少女ですが、自己紹介の番が回ってきても口を開きません。じつは、古見さんはコミュ症でした。他人とのかかわりが苦手で、喋るときにも声がうわずってブルブル震えてしまうのです。そんな彼女の気持ちに気付いた只野くんは、黒板を使って筆談で会話をします。

やがて黒板は、白い文字で埋め尽くされました。古見さんは、人と話すのが苦手なだけで、本当は喋りたいことがいっぱいあるのです。只野くんは、古見さんにとって初めての友だちになりました。

こうして只野くんの「普通じゃない」高校生活が幕を開けます。目標は古見さんのコミュ症を治して、残り99人の友だちを作る手伝いをすること。果たして、古見さんは100人の友だちを作ることができるのでしょうか――。

伊旦高校の生徒はアクが強すぎて、古見さんの友だち作りは前途多難! 登場人物が起こすアクシデントの数々が、読者の笑いを誘います。そして、人との交流の在り方に、決まりはないのだと気づかせてくれます。

最強の不良が極める茶の道

船橋雅矢は、生まれついての悪魔顔。不良に絡まれては撃破する、争いの絶えない生活を送っています。しかし高校入学を機に心機一転、「悪魔(デビル)まークン」の悪名を捨てようと決意します。

しかし、ナイフのように鋭い眼光で、高校でも一般人から避けられてしまいます。まークンは、高校に安住の地を見つけることができるのでしょうか。『天使な小生意気』の西森博之が贈る、優しさいっぱいの部活コメディをご紹介します。

お茶にごす。 著者:西森博之

「悪魔(デビル)まークン」こと船橋雅矢は、自称・心のキレイな素敵な男。誰かを殴りたいわけではありませんが、中学時代は不良から次々とケンカを挑まれて、やむを得ず修羅の道を歩んできました。高校に入ったら、そんな黒歴史を闇に葬って「ほのぼのスクールライフ」を送りたいと思っています。

しかし悪魔顔が災いして、部活勧誘でも嫌厭されてしまいます。そんな中、茶道部部長の姉崎奈緒美は、他の生徒に声を掛けた勢いそのままに、間違ってまークンにお茶を勧めてしまったのです。

「お茶…いかが…ですか」の誘いに、「頂きましょう」と応じたまークン。引っ込みがつかなくなった奈緒美は、震えながら彼を茶道部に勧誘します。これまでのまークンは、ケンカのため「表に出ろ」といわれたことはありますが、それ以外の誘いを受けたのは初めてこと。男として、この勧誘を受けないわけにはいきません。

こうして、まークンの茶道一直線の高校生活が幕を開けました。部長の奈緒美は、茶室の掛け軸を指して「一期一会」という言葉の意味を説きます。一時の出会いを喜ぶ言葉は、明日をも知れぬ武人が戦国の世に生んだ美しい教えだというのです。

まークンは、高校でも不良から目をつけられて、戦国時代さながらの争いから足を洗うことができません。それでも彼は、茶の湯を通して心豊かなコミュニケーションを見つけようと奮闘を続けます。

友だち作りのハウツー・マンガ

働く職場によって、就業時間が異なるのは当たり前のこと。社会人になって、友だちと生活リズムが合わなくなり、疎遠になった経験はありませんか。

『僕にはまだ友だちがいない』は、マンガ家の中川学による自伝的エッセイ・コミック。友人と疎遠になった著者は、新たな人間関係を築くため孤軍奮闘しています。「オトナの友だち作りのトリセツ」ともいえる、本作の魅力を紹介します。

僕にはまだ 友だちがいない 大人の友だちづくり奮闘記 著者:中川学

『僕にはまだ友だちがいない』の著者・中川学は、大学卒業後に教師や映写技師など、さまざまな職業を経験したといいます。あるとき、くも膜下出血を発症して生死の境をさまよったことで、子どもの頃から好きだったマンガ家を目指すことを決意。一念発起して、北海道から上京しました。

しかし、東京で新たな友人を得ることができず苦しみます。追い討ちをかけるように、地元・北海道の友だちとも疎遠になっていきます。いつしかカラオケやスポーツなどの楽しみも、一人ですることが苦にならなくなりました。

ある日、実家の母から電話がかかってきて、地元の親友・かみちゃんの結婚を知ります。かみちゃんが結婚するときには、友人代表として披露宴のスピーチをしたいと思っていたのに――スピーチを頼まれるどころか、結婚したことすら知らされませんでした。

かみちゃん事件で傷ついた著者は、新たな友だちを作るべく行動を開始します。まずは、自己分析のため「自己啓発本を読む」「占い師に相談する」ことを実践。続いて実践編として、SNSを駆使してオフ会に出たり、サブカルイベントに参加するなど、知らない世界に踏み出すのです。

大人になると、友だちを作るのも簡単ではありません。腹を割って話せる親友を作るとなると、ハードルは一層高くなります。中川学の作品はユーモラスな筆致でありながら、一人の人間が友だち作りに向き合う様子を真摯に描いて、読者の共感を誘います。信頼関係を築くには時間がかかるもの。焦らなくても大丈夫だと感じさせてくれるマンガです。

人間力の高さで、悪魔を魅了する

強欲な両親によって、悪魔に売られた不憫な少年・入間(いるま)くん。孫のいない大悪魔・サリバンに引き取られて、悪魔の学校・バビルスに通うことになりました。しかし、この世界では人間界の常識が通用しません。さらに、人間だとバレたら悪魔たちに食べられてしまうというのです。

だけど、入間は強靭なメンタルで魔界をサバイブ! さらに類まれなる危機回避能力と運の強さで、悪魔のクラスメイトたちを味方につけていきます。

『魔入りました!入間くん』は、西修による学園ファンタジーのヒット作! 今回は、主人公・入間くんのコミュニケーション能力に焦点を当ててご紹介します。

魔入りました!入間くん 著者:西修

人間の少年・入間は、大悪魔サリバンに熱望されて、彼の孫になりました。そして、サリバンが理事長を務める悪魔学校バビルスに通うことになったのです。

「人間丸々我らの食い物 魂・血と肉 残さず啜(すす)れ――」入学式の会場には、世にも恐ろしいバビルスの校歌が響き渡ります。悪魔にとって、人間は食い物でしかありません。サリバンは、特別な香水を使って人間の匂いを消してくれたといいます。それでも異形の悪魔たちに囲まれると、入間は生きた心地がしないのです。

しかし入間は、ただの人間ではありません。彼の両親は、規格外のクズ人間。入間が一歳で歩き始めると、さっそく社会にたたき出しています。入間は子どもでありながら、遠洋のマグロ漁船など過酷な職場で働いてきました。

トラブルの英才教育を受けた結果、何事にも順応するクセを身につけた入間くん。「柳に風」という言葉がありますが、風に逆らわず、穏やかにあしらうことも処世術の一つです。入間は、知らないうちに身につけた柔軟なコミュニケーション力で、恐ろしい悪魔でさえ味方につけてしまうのです。

食が紡ぐ、新しい家族のカタチ

コトブキ荘は、ふじみ坂を登り切ったところに建つアパートです。ここは、ワケアリの人々が一緒に暮らす、ちょっと風変わりなシェアハウス。お風呂もトイレも共同で、食事は持ち回りの当番制です。

『コトブキ荘の食卓』を手掛けるのは、『戦争めし』のヒットで注目のマンガ家・魚乃目三太。「食」が紡ぐ人間関係を描いて、読者の共感を誘います。孤独が社会問題として顕在化している現代。食事の在り方を描くマンガが、これからの人間関係のヒントとなるはずです。

コトブキ荘の食卓 作:魚乃目三太

駆け落ち同然に、実家を飛び出した夏川なぎさ。しかし、恋人が浮気をしたことで、帰る家を失いました。行くあてもなく、不動産屋の前に立ちつくす彼女に、一人の老女が声を掛けます。

要(かなめ)ばあさんは、シェアハウス・コトブキ荘の大家です。そこには、社会からはじき出されたワケアリの住人たちが集っています。食事は持ち回りの当番制。要ばあさんは、お腹をすかせたなぎさをコトブキ荘の食卓に誘います。

コトブキ荘では、同居人は家族と同然。持ち回りで作られる献立には、家族への思いやりが込められているのです。今日の食事は、日雇いの建設現場で働く合田さんによるものです。コトブキ荘の住人が、「合田さんの作るみそ汁には 必ず玉子が入ってんねんで!」となぎさに教えてくれます。

みそ汁の鍋の中に玉子を落とすのは、お店ではできないことです。みそ汁がすぐに濁ってしまうため、食べる直前に玉子を割り入れる一手間があるからです。家庭だからできる、愛のこもった玉子のみそ汁――なぎさは、コトブキ荘の一員として受け入れられたことを知って、涙を流します。

赤の他人同士でも、「同じ釜のめし」を食えば家族同然の仲になるといいます。おいしい食事は、誰かと繋がるコミュニケーション・ツールになるのです。

好きなマンガを語り合う楽しさ!

三年間の高校生活をかけて、じっくり友だち作りに励む学園マンガ。SNSを駆使して、オトナのコミュニケーションを模索するマンガ。異世界で友だちを作る学園ファンタジー。シェアハウスの食事情を描くグルメマンガなど、さまざまなマンガをご紹介しました。

十人十色といいますが、人間関係の在り方やコミュニケーションの方法も、人の数だけあっていいはずです。新しく出会った友だちと、好きなマンガを紹介し合うのも楽しいことでしょう。ここでご紹介した作品が気に入ったら、ぜひお友だちと情報をシェアしてみてください!

執筆:メモリーバンク / 柿原麻美

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