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令和ラブコメは刺激よりもやすらぎを!「単独ヒロイン」の存在感が増大中!

ラブコメといえば複数ヒロイン。どの子も魅力的で目うつりしちゃう。つきあうのかつきあわないのか。ライバルも登場してハラハラドキドキ。平成にはそんな作品が多数をしめていました。しかし令和においては、恋愛する相手は最初から決まっていて、比較的刺激は少なめながら、読むことでやすらぎを得ることができる「単独ヒロイン」のラブコメ作品が増えているのです。

作品の冒頭からただひとりのヒロインを見定め、徐々にその関係を深めていく。その過程をながめて楽しむ。これまで「ラブコメ」としてくくられていたものとはひと味違い、もはやひとつの新しいジャンルではないかとさえ思っています。

そんな今の時代の「単独ヒロイン」ラブコメを紹介していきます!

妻に夫に、おしみない愛を注ぐ作品たち

平成も終わりかけの2018年に連載がはじまったのは畑健二郎先生の『トニカクカワイイ』。アニメ化もされている大人気作品です。

トニカクカワイイ 著者:畑健二郎

出会ったばかりの少女に求婚し、紆余曲折はあったものの無事、本当の夫婦となるところから物語ははじまります。少なくとも夫側からの好意はあるものの、もちろん互いに相手のことはほとんど知らない状態です。

スタートこそ突飛なものの、そこからはタイトルそのままにヒロインの『トニカクカワイイ』部分を発見し、積みかさねていくことに面白さがあります。もちろん先生らしいコミカルさも健在です。

結婚がスタートラインなマンガは他にもあります。例えば、ドラマ化もされ大きな人気をはくした『逃げるは恥だが役に立つ』です。

逃げるは恥だが役に立つ 著者:海野つなみ

ハンガリーのことわざをタイトルとしたこのマンガは、雇い主と労働者という雇用契約のつもりで結婚した男女が、さまざまなエピソードを通して、愛だけでは語れない新しい夫婦の形をはぐくんでいく物語です。こちらも結婚という契約を機に、その関係性と愛の意義を確かめあっていきます。

このあたりの作品を契機として「関係性を深めること」。それ自体を楽しむ風潮が生まれてきたのではないでしょうか。

2020年には「結婚」という言葉自体がタイトルに入った『結婚するって、本当ですか』も連載開始されました。こちらもすでに実写ドラマ化されています。

結婚するって、本当ですか 著者:若木民喜

社内で異動の話がもちあがり、単身者は遠い異国の地に転勤させられるかもしれない。さけるためにはだれかと結婚しなければならない。そんな利害関係の一致により勢いで結婚してしまった二人が、一緒に過ごしていくうちに互いの良さに気がつき、ひかれあっていく作品です。

2023年4月に実写ドラマ、アニメ化が決まっている雨隠ギド先生の『おとなりに銀河』も夫婦になるところからはじまる物語です。

おとなりに銀河 著者:雨隠ギド

売れない漫画家のもとにやってきたのは、卓越した技術と美貌をもつアシスタント。仕事も順調にすすみ、無事原稿を仕上げられたと思った矢先、ちょっとした手違いで「一蓮托生の契り」を結んでしまいます。しかもアシスタントさんから「実は自分は人間ではない」と告げられるのでした。そんなSF要素も楽しめるラブコメです。

「結婚」という、一般的にはゴールとされることも多いイベントをスタートとして、特定の相手との親しい関係性を作りあげていく。そんな「単独ヒロイン」のラブコメが人気を勝ち得ているのは間違いありません。

もちろん結婚からはじまるものばかりではありません。恋人同士や、つきあう前の関係であっても「単独ヒロイン」の作品は沢山あります。

うら若き学生たちもよそ見をしない

2018年に連載が開始された『僕の心のヤバイやつ』。主役の二人は学生同士です。

かたやモデルなどもやっているクラスでも人気の女の子。かたや教室のすみでちいさくなって、心のなかで日々殺人の妄想をするような根暗な男の子。普通なら接点すらなさそうな二人によるラブコメディです。二人はつきあっているわけではありませんが、互いの好意はぶれることがありません。

僕の心のヤバイやつ 著者:桜井のりお

またアニメ化もされている『その着せ替え人形は恋をする』は、コスプレを軸としたラブコメです。こちらもつきあっているわけではありませんが、コスプレ衣装の作り手とコスプレイヤーという関係から築かれる信頼関係が、そのままお互いの信頼と愛情に発展しており、他の異性が入りこむ余地がありません。

その着せ替え人形は恋をする 著者:福田晋一

数多くのラブコメ作品が、このように単独ヒロインであり、単独ヒロインを求める需要が強まっていることは間違いないでしょう。

では、なぜここまで単独ヒロインのラブコメが広まっているのでしょうか。

大衆的でおおきな刺激よりも、個人的でちいさな安寧を求める時代

これらの作品に共通しているのは、まず最初から恋愛する相手が決まっていること。そして二人の仲を深めることに重きがおかれており、ライバルがあらわれたり、あまりにも大きな困難が訪れたりするなど、ハラハラする展開は少な目の作品が多いです。

理由はいくつも考えられます。若者の数が減り、これまでマンガを好んで読んできた世代が年齢をかさねたことによって、「周囲に気になる異性がたくさんいてドキドキする」という状況に共感しづらくなっているのではないでしょうか。

またSNSで作品を発表することが一般化してきたことも一つの要因でしょう。

これまでは出版社が主導し、多くの人に受ける作品を作りだすことが重視されてきました。ところが個人が容易に作品を発表することができるようになったことにより、手の届く範囲の、個人的でちいさな幸せを追求する作品がいくつも生みだされ、それが支持される土壌が作られてきているのです。

そして最大の要因は世の中にあふれるコンテンツ量の増加でしょう。どれも触れれば面白いコンテンツばかり。取捨選択がなされるなかで、ストレスが少なく、気軽に多幸感を得ることができる作品がもてはやされるようになってきているのです。

それらを要因として数多くの「単独ヒロイン」作品が作られ、広く受けいれられているのではないでしょうか。

最新の「単独ヒロイン」ラブコメ!

そんな世間の需要にこたえる形で存在感を増してきた「単独ヒロイン」ラブコメの勢いは止まりません。次々に生み出されている新しい作品からも3つ紹介いたします!

『正反対な君と僕』

「マンガ大賞2023」第3位。宝島社「このマンガがすごい!2023」オトコ編第9位など、すでに知る人ぞ知る人気作です。

正反対な君と僕 著者:阿賀沢紅茶

明るく振る舞うヒロインが、ひそかに思いをよせているのは、自分の意見をはっきり言い、人に合わせることもあまりない男の子。周りの空気ばかり読んでしまう自分と正反対な部分に憧れ、いつしか好きになっていました。

普段は自分に正直になれず、ダルがらみばかりしてしまいますが、徐々にそんな自分の気持ちを隠しておくことも出来なくなり、真正面から気持ちをぶつけるのでした。

POPでかわいいキャラクターたちで彩られており、二人だけではなく周囲との関係性の変化が描かれることも魅力のひとつ。そして「正反対」とされる二人の性格が、溶けあって混ざりあっていく様が心地よい作品です。

『白山と三田さん』

バイトから帰る途中に老人を助けたところ、自分の孫娘と付きあってくれないかと頼まれます。最初こそとまどいますが、どこか似たような空気をもつ二人は無事つきあうことになるのでした。

白山と三田さん 著者:くさかべゆうへい

二人それぞれがひょうひょうとしており、序盤から長年連れそった夫婦のような安心感にあふれています。それにもかかわらず、実際には二人一緒になにかをやるのは初めてのことばかり。互いに相手の知らなかった部分はどこか世間とはズレていて、そんな部分が愛らしく、読んでいてクセになってくる作品です。

『恋人以上友人未満』

元AV女優がお見合いをしたところ、お相手としてきたのは、昔、一緒に仕事をしていた元AV男優。仕事関係上の体の関係はもちろんありますが、これまでにちゃんと話したことなどはありません。そんな「恋人以上友人未満」の二人が織りなす物語です。

恋人以上友人未満 著者:yatoyato

相手のことをまったく知らない状態からはじまるわけではなく、セックスはすでに何度も経験しているということが切れのいいフックになっています。仕事をしていた当時の互いのビジュアルも、仕事上作り上げられたもので、今とはかけ離れているのもまた初々しさにつながっています。

ラブコメの楽しみ方は多種多様!

昨今では単にヒロインが固定されているというだけでなく、さまざまな趣向をこらした作品が次々にうまれています。そしてもちろん複数ヒロインの作品もいくつも存在していますし、どれも面白いものばかりです。

「ラブ」も「コメディ」もすたれることがない普遍的なテーマです。数多くの作品が生みだされるなかから、自分にあった作品を選んで、楽しんでいけるといいですね。

執筆: ネゴト / たけのこ

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