ebook japan

ebjニュース&トピックス

『キャプテン翼』連載開始40周年を超えたレジェンド作品が今も尚愛され続ける理由

サッカーマンガの先駆けとして1981年の連載開始から40年以上が経過した今も尚第一線で活躍し続ける『キャプテン翼』。なぜ本作品がこれほどまで多くの読者に長きに渡り愛され続けているのでしょう。長年『キャプテン翼』を愛し、追いかけ続けてきた筆者の独断と偏愛を交えながら、本記事では5つのポイントに絞ってその魅力をお届けさせていただきます。

キャプテン翼 著者:高橋陽一

主人公、大空翼の想像力と読者に夢を見させる力

まず1番にお伝えしたい本作品の推しポイント、それは本作の主人公であるキャプテン大空翼の想像力の豊かさです。そして読者に自分が描いた夢への軌跡を絶えず見せ続けてくれる大空翼の行動力、着実にステップアップを続けていく実行力も本作品が持つ大きな魅力であると感じています。

日本がまだW杯に1度も出場したことがないサッカー黎明期だった時代から、世界で1番のサッカー選手になるという大それた夢を堂々と掲げた姿。サッカー大国ブラジルでプロになることを目指してひたむきにサッカーに打ち込むその姿勢に、日本サッカーの明るい未来を予感した人は少なくないでしょう。

そして誰よりも自分が掲げた言葉の力を信じていたのは、他でもない大空翼自身だと感じるのです。日本をW杯で優勝させる、そんな夢の物語の結末を見届けたい。彼なら何か大きなことをやってくれるんじゃないか。読者の期待感と高揚感を駆り立ててくれる主人公の存在感がとにかく際立つ作品なのです。

そしてその魅力に感化されたのは読者のみならず、作中に登場するキャラクター達も大空翼が切り開く夢の物語に影響を受けていく様が描かれている点にも注目したいです。

何度窮地に立たされても不死鳥のように蘇り、新しいステージへと進み続けていくことで周りのキャラクターもどんどん影響されその熱量が飛び火していく展開も見逃せません。

大空翼の小学生時代からのライバル、日向小次郎は初め大空翼に勝つことを目標にしていましたが、やがてより大きな目標として世界1のストライカーになることを目指します。

また、大空翼が転校してきた弱小サッカー部のキャプテンだった石﨑了は、初めはお世辞にもサッカーが上手ではありませんでしたが、大空翼の影響を受け、ついには世代別の日本代表にまで成長を遂げます。

さらに、当初は選手とマネージャーの関係でありながら、やがて公私ともに大空翼を支えることとなる中沢早苗など主人公を中心に様々な物語が展開されていくことも本作の魅力なのです。

世界中のサッカー少年達をプロの道へと導いた影響力

『キャプテン翼』の凄みはマンガの枠を超え、実際にサッカーという世界中で愛されているスポーツそのものにまで少なからず影響を与えた点です。

日本を代表するプロサッカー選手の中にも『キャプテン翼』の影響を受けている選手は多く、現実世界での日本サッカーの発展にも大きく貢献された偉大な作品であることは疑いようがありません。

それどころか、世界的にも有名な数々の選手が、作中で登場する必殺シュートに驚愕したり、高い壁に挑戦する気持ちを学んだ、といった『キャプテン翼』に影響を受けたという発言をされています。

世界中のプロサッカー選手にとってのバイブル的存在だったと言っても決して過言ではない本作の影響力は計り知れません。

読者も選手も「なにィ!?」と叫んでしまう想像を絶する程の創造力

必殺シュート、という概念が最もピッタリ当てはまる作品こそ『キャプテン翼』でしょう。これぞスポーツマンガの真骨頂であり醍醐味ではないでしょうか。

また作中の随所に「なにィ!?」という印象的なフレーズが登場します。対戦相手はもちろんのこと読者でさえも思わず「なにィ!?」と声が漏れてしまうような、想像の軽く斜め上をドライブしてくるそのオリジナリティと想像力こそが『キャプテン翼』を唯一無二の名作にしているということはまぎれもない真実でしょう。

対戦する相手との激しい攻防、防いだかと思いきやそこから更に2転3転するスリル満点の展開にページを進める読者も思わず力が入ってしまいます。そんな技と技の応酬と、読者に今までみた事のない世界を見せてくれるオリジナリティに溢れた試合展開にこそ本作の魅力が詰め込まれています。シリーズが進むごとに複雑さを増している感のある必殺シュート名にも注目したいところです。

シリーズごとに戦いのステージを駆け上がっていく成長力

1981年の連載開始では小学生だった選手達が、2022年時点では23歳以下の日本代表として、各カテゴリーごとに1段ずつ闘いのステージが上がっている点も本作の魅力と捉えています。

年齢を重ねていくにつれて更なる成長を見せてくれる大空翼をはじめとした登場人物達。闘いの舞台が地域から全国、そしてアジア、やがて世界へと次第に広がっていく流れはキャラクターの成長をじっくりと堪能でき、読者も歳を重ねながらそれぞれのステージへ成長していく中で『キャプテン翼』と共に階段を上っていくような気持ちにさせられるのです。

また、成長を重ねる中でかつてのライバル選手が同じチームとなったり、その逆にかつてのチームメイトが今度はライバルチームに移籍して闘うことになるなどといった展開が見られます。

特に戦いの舞台がプロリーグへと移行してからは移籍先のチームで奮闘する選手達の成長を見届けることができるという、リアルにサッカー選手の移籍市場を追いかけているのと同じような気持ちで作品を楽しめることも推したいポイントです。

永遠のサッカー小僧、大空翼の深すぎるサッカー愛に見るバカ力

誤解を恐れず言わせて貰えるならば、大空翼はバカです。そしてバカはバカでもサッカーバカです。ただひたすらにサッカーに打ち込む大空翼の姿は作中でどれだけの時間が流れて身体は大人になっても、その中身はフィールドを自由に駆け回り続ける永遠のサッカー小僧そのものなのです。

大抵の人なら諦めてしまいそうになる展開でもにっこり笑顔で前を向く、そんな大空翼のサッカーバカぶりにどうしようもなく惹かれてしまう自分がいます。そしてとことんサッカーを愛し、楽しみ続けているからこそどんな困難にも恐れず前を向いて立ち向かうことができるのだと、読者の気持ちをも前に進めてくれる力があるのです。

40年を超え、更なる景色を読者に

連載開始からの40年間で生まれた数々の激闘。そして現在も連載中の本作が次に見せてくれる新しい景色への期待。世代を超えてサッカーの楽しさと自由で魅力的なスポーツであることを伝え続けてくれた『キャプテン翼』。

どの時代であっても変わらないのは主人公である大空翼が心からスポーツを楽しむ気持ちと、誰よりも強くなりたい、もっとサッカーが上手くなりたいと純粋に願う真摯な姿勢です。

全ての世代、そして全世界のスポーツを愛する人に今この瞬間のドライブ感をめいっぱい味わっていただきたいです。

そして日本が世界ナンバーワンになる、そんないつか訪れるかもしれない夢の瞬間を味わうように、驚きとワクワクが詰まった愛すべき作品『キャプテン翼』の魅力を全力で感じていただければ幸いです。

執筆:ネゴト / もり氏

関連記事

インタビュー「漫画家のまんなか。」やまもり三香
漫画家のまんなか。vol.1 鳥飼茜
完結情報
漫画家のまんなか。vol.2 押見修造
インタビュー「編集者のまんなか。」林士平

TOP