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ルールが分からなくても大丈夫! 少女マンガの野球テーマ作品!!

春のセンバツ高校野球大会では、今年もたくさんの感動が生まれました。続く夏の大会を目指して、高校球児たちは厳しい練習に励んでいます。

そんな彼らの情熱に負けない、感動の野球マンガをご紹介します。定番の王道ものからスポ根まで、さまざまな野球テーマがありますが、今回は女性目線で楽しめる作品を特集! 少女マンガならではの描写が加わることで、一般的な野球漫画にはない独自の魅力を楽しむことができます。

ルールが分からない人が読んでも大丈夫! 野球を新しい視点で楽しめる、少女マンガの世界にご案内します。

時代にあらがう野球コメディ

神武天皇即位2600年の記念行事として、進められていた1940年の東京オリンピック。しかし、1937年に盧溝橋事件が起きたのを契機に日中戦争に突入――実現には至らず、幻のオリンピックとなっています。

戦火が勢いを増し、スポーツを楽しむ余裕がなくなる中で、ある野球チームが結成されようとしていました。『紀元2600年のプレイボール』は、少女マンガ家・大和和紀による野球コメディ。激動の時代を舞台に、野球が本来もつ楽しさを描出しています。

紀元2600年のプレイボール 著者:大和和紀

柳橋育ちの竹千代は、花の中学4年生。育て親である、元芸者の花鳥(かちょう)かあさんが理想の女性です。ところがある日、当主不在となった青葉家の跡目を継ぐように命じられます。竹千代の生母は、旧青葉藩当主の家柄だったのです。

恋しいおっかさんと別れた竹千代は、「青葉市」とは名ばかりの山の中へ……。ようやくたどり着いた青葉市には、江戸時代の古い主従関係がそのまま残っていました。竹千代が転入する青葉学問所中学は、青葉城の本丸を校舎に使用。西の丸を宿舎とする全寮制の学校だったのです。

「若君さまの おな~り~ィ」。クラスメイトはすべて旧家臣の末裔で、平伏して竹千代のお国入りを迎えます。その様子を見た竹千代は、旧態依然とした身分制度を取っぱらうことを決意。どうせ藩主になるのなら、時代錯誤の中学を改革し、全国に誇れる学校にしようというのです。

級友の伊賀丸は御庭番の末裔。彼の超人的な身体能力に気付いた竹千代は、青葉学問所中学に野球チームを作ろうとします。目指すは県大会制覇。そして、新聞社主催の中等学校野球大会の優勝です。まずは、戦国時代さながらの知識しかもたないナインたちに、野球のイロハを教えるところから始めます。

果たして竹千代は、野球の「や」の字も知らない連中を甲子園に連れていけるのでしょうか。舞台は、野球の対抗戦が「軍事教練」の一環として行われていた時代――。しかし暗い戦争の影を吹き飛ばすかのように、竹千代と青葉ナインは、野球にギャグにと邁進するのです。

根性論とは無縁の野球マンガ

私立豆の木高校に、やってきた新任教師の広岡真理子。専門は生物で、これまでスポーツとは縁のない生活をしてきました。しかし着任早々、野球部の顧問に任命されて、しぶしぶ引き受けてしまいます。

豆の木高校の野球部は、野球を知らない真理子が呆れるほどの弱小ぶり。しかし、彼らとの出会いをきっかけに、真理子は野球に熱中していくのです。甲子園まで何マイル!? 生物教師が、弱小野球部を甲子園に送った独自の野球理論を紹介します。

甲子園の空に笑え! 著者:川原泉

『甲子園の空に笑え!』は、1984年に「花とゆめ」(白泉社)に連載された少女マンガ作品です。マンガ界の哲学者、カーラ教授こと川原泉による代表作の一つです。

私立豆の木高校は、九州のA県B郡豆の木村にある高校。田舎のうえに無名のためか、生徒数も少なく、ちょっとばかり貧乏です。野球部には、外部から監督を雇う余裕もないため、新任の生物教師・広岡真理子が顧問となるべく説得を受けました。

野球部に部員は9人いるものの、今年の新入部員はゼロ。地方大会で一回戦突破することが、創立以来の悲願という弱小野球部なのです。

顧問を引き受けたものの、真理子は野球初心者です。ピッチャーの春日晴彦は、名前の通り「春の陽だまり」のような佇まい。対するキャッチャーは、おっとりとした朝比奈周です。おまけに、部員はすべて農家の子どものため、繁忙期になると部活を休んで家業を手伝う始末――。

前途多難に思われた豆の木高校野球部ですが、固い守備と幸運の連続で地方大会を次々と突破。常日ごろ田畑を駆け回っている豆の木ナインの足は速く、泥にも強かったのです。果たして、豆の木高校の快進撃はどこまで続くのでしょうか。

『甲子園の空に笑え!』には、野球マンガでありながら「熱血」とは無縁のほのぼのとした世界が広がります。川原泉は、本作の続編的な野球マンガとして『メイプル戦記』も手掛けています。本作で展開される独自の野球観にハマったら、ぜひ読んでみてください!

スタンドから贈る音のエール

小野つばさは、白翔(しらと)高校に入学した女の子。小学生のころ、甲子園球場のアルプス席で演奏する白翔高校吹奏楽部をテレビで見て以来、この学校への進学と吹奏楽部でトランペットを演奏することを夢見てきました。

しかし、小学校で器楽クラブに入ったことはありますが、気後れして「トランペットがやりたい」といえませんでした。中学でも、周囲に止められて吹奏楽の道を諦めています。少し気弱なつばさですが、吹奏楽の強豪校で部活動についていけるのでしょうか――。

青空エール リマスター版 著者:河原和音

北海道白翔高校は、野球と吹奏楽の名門校です。吹奏楽部でトランペットを吹くため、白翔高校を選んだつばさですが、じつはトランペット初心者です。入学早々、白翔高校が獲得した野球と吹奏楽のトロフィーが並ぶ光景を見て、圧倒されてしまいます。

そんな彼女と一緒に、トロフィーに見とれる丸刈りの少年がいました。つばさと同じ1年C組の山田大介。クラスメイトへの自己紹介で「甲子園行きます」と宣言して、つばさを驚かせます。

憧れの吹奏楽部の門をたたいたつばさ。しかし、顧問から入部届とともに風船を渡されます。風船を吹いて膨らませられるようになってから、初めて入部が認められるというのです。

名門の白翔吹奏楽部には、志の高い経験者ばかりが集まっています。初心者のつばさは、風船を膨らますほどの肺活量もなく、入部早々出遅れて意気消沈。しかし野球少年の山田は、信じていれば成果を出せるといって彼女を励まします。山田が甲子園のマウンドに立つとき、つばさがスタンドでトランペットを吹く姿を思い描くことができるというのです。

野球と吹奏楽――歩む道は違っていても、夢を追いかける姿に変わりはありません。つばさと山田は互いを励まし合いますが、それぞれの夢は叶うのでしょうか。二人の想いが交錯する、青い夏を見届けてください。

野球を通して成長する少女の物語

若草第一小学校に転入生がやってきました。このクラスでは、現在女子16名、男子15名が在籍。運動会の出し物や、音楽会の演目を決めるときには、多数決による一票の差で女子の意見が採用されていました。

果たして、転入生は男子なのか、女子なのか。運命を左右する転入生の登場を、クラス一同が見守りますが、教室に現れたのは男子みたいな外見の女の子。おまけに、野球が大好きだというのです――。笑いあり、涙ありの小学生野球マンガをご紹介します。

少女少年学級団 著者:藤村真理

中谷遥は、野球が大好きな女の子。父親の仕事の都合で、この街に引っ越してきました。転校前の学校では、性別を問わず野球をすることができましたが、新しいクラスは勝手が違うようです。

ここでは男子と女子の仲が悪く、男女が入り混じって遊ぶことはありません。まして女子が野球をするなんて、考えられないことなのです。野球好きの遥は、女子から「変わり者」と陰口をたたかれ、男子からは「男オンナ!!」といわれてしまいます。

野球への想いを諦め切れない遥は、かつてのチームメイトとともに「初勝利」を収めた記念のボールを握りしめます。そして、校庭で野球をする男子に向かって「あたしも 入れてよ!」と頼むのです。

しかし、クラスメイトの田辺渡は「初勝利」と書かれたボールを「だっせー」といって、離れた場所にある神社まで投げて失くしてしまいます。「女がなまいきに 野球なんてやってんじゃねーよ」。その一言を聞いた遥は、思わず渡を平手打ちしました。

渡の兄は、甲子園出場を果たした高校球児。弟の非礼を詫びながら、野球好きの遥のため優しく諭します。人を殴ったら、自分も痛い思いをするもの。暴力で、大好きな野球ができなくなったらもったいないというのです。女性として野球を続けるには、壁が立ちはだかることもあります。しかし、遥はさまざまな人との出会いを経て、野球選手になる夢をかなえるため一歩ずつ前進します。

野球×恋愛テーマの人気マンガ

山田ひろの16歳の恋は、春に始まりました。春休みの高校のグラウンドに、入学前にもかかわらず野球の練習に励む一年生の姿があったのです。野球少年の名前は緒方くん。ひろのは、入学後に彼と同じクラスになったことで、運命の恋だと直感します。

それから告白を繰り返すも、玉砕すること十数回。野球一筋の緒方くんは、何をしても一向に振り向いてくれる気配がありません――。『太田川純情ラバーズ』は、野球少年を一途に想う女の子のラブストーリー。野球×恋愛マンガの名作をご紹介します!

太田川純情ラバーズ 著者:尾崎あきら

「『諦める』って言葉は、やれる事を全部やりきった人が使うものでしょ?」山田ひろのは、野球部の緒方くんが大好きで、何度ふられても諦めることを知りません。少しでも彼の力になりたくて、野球部のマネージャーになろうとするも失敗。手作り弁当や、お守りマスコットのプレゼントで攻めますが、緒方くんは野球一筋でわき目もふりません。

一年生でありながら、ベンチ入りを決めた緒方くん。入部早々、実力の高さが評判になっています。緒方の投入で、春季大会ベスト8も夢ではない――周囲の期待が高まる中、彼のために「何かしてあげられたら」という気持ちが、ひろのの心に募っていきます。

ひろのは、お弁当を作ろうか、欲しいものはあるかと、緒方くんを質問攻めにします。しかし緒方くんは、ひろのに付きまとうのを止めてほしいと告げます。試合に向けて「集中したい」というのです。ひろのは、そっと身を引くことを決めました。

エースが怪我をしたことで、緒方くんが急遽先発に抜擢されることになりました。重責を感じて、思うような動きができなくなる緒方くん――しかし、そんな彼の心を解きほぐしたのは、ひろのが自分の「代理」として緒方くんの鞄につけたマスコット人形でした。

「少しでも 力になれますように」。ひろののエールは彼に届くのでしょうか。高校球児に恋する女の子の物語は、少女マンガのテッパンです。グラウンドを走る彼の姿を、そっと見守るせつなさが読む者の胸をキュンとさせます。

野球マンガもさまざまある

野球テーマのマンガといえば、男性向けの作品がほとんどですが、少女マンガにも秀作がたくさんあります。登場人物の繊細な心理描写は、少女マンガならではの魅力です。

歴史の荒波にあらがう野球少年を描いた作品、「野球=スポ根」という概念を覆すコメディ、野球で性別の壁に立ち向かう少女を描いた作品など……。同じ野球というテーマでも、さまざまなドラマの作り方があるのだと感心させられます。

ご紹介作品の他にも、野球マンガには多くの名作があるので、お気に入りの作品を探してみてください。青空高く飛ぶ白球を、マンガの登場人物たちと一緒に追いかけましょう。

執筆:メモリーバンク / 柿原麻美

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