私が中学１年生の冬、『週刊少年サンデー』に『ビッグコミック』創刊の予告が出た。ビッグ５（白土三平、手塚治虫、石森章太郎、水木しげる、さいとう・たかを）の自画像がメインに据えられ「お兄さんに教えてあげよう」という惹句が添えられていた。
さっそく発売日に書店で手に入れて驚いた。当時の中学生にはかなり刺激の強い内容だったからだ。「これはまずい」と押し入れに隠したことを覚えている。
実はサンデーにはもう１誌、兄貴分があった。６３年春に創刊された『ボーイズライフ』だ。編集長はサンデーの名編集長で、ビッグの創刊編集長でもある小西湧之助。さいとう・たかをの『００７シリーズ』や佐藤まさあきの『Ｚと呼ばれる男』などが読みたくて級友の兄貴に貸してもらっていたが、今にして思えば少年向きだった。ビッグは小学館にとって初めて青年を意識した雑誌。中学生には刺激が強かったのも宜なるかななのだ。（中野晴行）

今年１１月にはさいとう・たかをの『ゴルゴ１３』が連載５０周年を迎える。ひとりの主人公で、これまで一度も休載することなく５０年続いているマンガは他に例を見ない。
しかし、当初ゴルゴはこんなに長期連載になるはずではなかったのだ。創刊号からさいとうが連載したのはタフな便利屋を主人公にした『捜し屋はげ鷹登場！！』全１０話。続いたゴルゴも１０話の短期連載としてスタートしたのだった。この時点で、作者のさいとうとスタッフの石川フミヤス、武本サブローは１０話分の構想を話し合っていたそうだ。
ところが編集部からは連載続行の注文が出た。そこで、さいとうは、最終話の前にエピソードを挿入しながら連載を続けることにした。仮に休載が告げられても、オチさえ決まっていれば大丈夫、と考えたのだ。こうして５０年の歳月が流れ、最終話のことを知っているのはもはやさいとう・たかをだけ。それでも、最終回の構想はできあがっているのだ。（中野晴行）

１９７２年、『ビッグコミック』の増刊として『ビッグコミックオリジナル号』が創刊された。読者対象はビッグよりも１歳半上。当時のビッグの読者は大学生が多かったから、社会人を狙ったのだろう。８０年には『スピリッツ』８７年には『スペリオール』が創刊された。いっぽうで、この間に登場して消えていった兄弟姉妹もいる。７７年にはビッグの子ども版という位置づけで『マンガくん』が創刊。７９年からは『少年ビッグコミック』に改題され、８７年には『ヤングサンデー』にリニューアル。２００８年に休刊してスピリッツに吸収された。レディス向けでは８１年に『ビッグコミックフォアレディ』が登場。レディス誌ブームの先鞭をつけたが、残念ながら９０年に休刊。７８年にはビッグよりも上の世代を狙った『ビッグゴールド』が登場したが、休刊、復刊ののち９９年には正式に休刊。時代に合わせて変化しながら、ビッグはマンガの歴史を刻んできたのだ。（中野晴行）