
放っておいて欲しい。それが僕が他人に求める唯一のこと――ファッション誌編集者の羽野は、花と緑を偏愛する独身男性。帰国子女だが、そのことをことさらに言われるのを嫌い、隠している。女性にはもてはやされるが、深い関係を築くことはない。羽野と、彼をとりまく女性たちとの関係性を描きながら、著者がテーマとしてきた「異質」であることに正面から取り組んだ意欲作。匂い立つ植物の描写、そして、それぞれに異なる顔を見せる女性たち。美しく強き生物に囲まれた主人公は、どのような人生を選び取るのか――。※この電子書籍は2017年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
最初から最後まで一つひとつの言葉が繊細で綺麗な一冊でした。また、登場人物の言葉の所々に伏線が散りばめられているのもとても面白かったです。私は同じ性ということもあるのか、本書に登場する女性キャラクター達...
『女は花なのかもしれない。愛でられたいという本能だけで咲く花。』
植物を偏愛し、自宅に自分だけの庭を持ち、そこに自己の存在肯定を見出す編集者の羽野は、表面だけ相手が望むようにふるまっているだけで、...
きざしに敏感で不器用なひとたちの物語。
p.83『「いま、流行っているんですって」』
この物語の主人公にとって、この言葉が交わされる日常は苦痛ではないのだろうか。
生き方が不器用なひとたち。
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