苛烈な戦いをすることから「死神」と仇名されるストロハイム大佐と、彼の率いる装甲兵・地獄の降下兵(ヘル・ダイバー)の搭乗機が、小型超光速船「ブラック・メイデン」だ。船体全体に電波吸収塗料が塗布されて暗黒色になっており、敵兵には死の使いのように恐怖されている。これは敵陣への奇襲攻撃のために隠密行動が要求されるためで、西暦20世紀のステルス機などで開発された技術も応用されて建艦されていると思われる。
『超人ロック 完全版(4) ロンウォールの嵐』
©聖悠紀/少年画報社
惑星ロンウォールの革命を目指すゲリラ軍。地球政府からその一掃を命じられたストロハイム大佐は、大型のスパイロボット・ミラージュと地獄の降下兵とでゲリラ基地を急襲する。ミラージュの自爆で超能力者であった記憶を取り戻したロックは、地獄の降下兵を倒して単身「ブラック・メイデン」を奪う。そして、光速船を太陽系連合艦隊の真っ只中に転位(ワープ)させると、艦隊の反応炉を次々と爆発させて撃退させた。
旧連邦期に開発された遠隔操作のロボット兵器が「ニケ」だ。人間大の人型ロボットは、ヘルメット状の操作端末で操作されるが、個人で操作するロボット・ウェポンとしては最強のものと言われている。武器は持たないが、人間の260倍の力と30倍の反射(応)速度で、格闘あるいは体当たり攻撃で敵を粉砕する。ただし、「ニケ」のあまりの速さがオペレーターの精神に負荷をかけるので、人体に危険な加速剤を投与しなければならない。
『超人ロック 完全版(5) 冬の惑星』
©聖悠紀/少年画報社
「ロンウォールの嵐」でロックに敗れたストロハイム大佐は、殺人兵器「ニケ」を奪って逃走した。その目的はロックを倒すこと。宇宙船でロンウォールを目指すストロハイムは殺人を繰り返し、地球軍の艦隊から追われた。その追撃から逃れようとH・D(ハイパー・ドライブ)したストロハイムは、遭難していたロックと出会った。「ニケ」にロックの首を締め上げさせるが、光の天使にも似たエレーヌの幻を振り払おうとして息絶える。
連邦の宇宙艦隊の主力艦として運用されている「アイネイアス級光速巡洋艦」。西暦19世紀後半に活躍した航空母艦(Aircraft Carriers)を発想の基礎にしている。メイン駆動装置(エンジン)には、ノーマル・ドライブで光速30%まで加速出来る高出力ブラスターを4基搭載。物体は光速に近づくと質量が無限大となるため、これ以上の速度が必要な場合はH・D(ハイパー・ドライブ)をかける。最大跳躍距離は22光年/時だ。
『超人ロック 完全版(10) スターゲイザー』
©聖悠紀/少年画報社
死から復活したグルンベルグは、部下の科学者・ウォン博士が開発した「亜空間フィールド」に宇宙船を隠しながら略奪を続け、アウター・プラネットのラフノールを目指した。エスパーが多く住む惑星を支配しようというのだ。連邦軍は一瞬にして姿を消すグルンベルグの宇宙船を幽霊海賊船と名づけて恐れたが、放置することも出来ない。地球本部は幽霊海賊船を打破すべく、「アイネイアス級光速巡洋艦」の大艦隊をラフノールに急行させた。
西暦20XX年、人類は超光速飛行を実現させ、無人機をアルファケンタウリまで飛ばした。さらに、宇宙開発公団は有人飛行を計画。アルファケンタウリまでの2年半の航行に耐える巨船「インフィニット1」を、木星の衛星ガニメデの軌道上で建艦した。同船は光速の2倍のスピードを出すが、これは「転位」によるもの。通常空間では宇宙船は光速を超えられないため、亜空間を使用したH・D(ハイパー・ドライブ)が開発されたのだ。
『超人ロック 完全版(19) 永遠の旅人』
©聖悠紀/少年画報社
オーストラリアの公立中学に通うロック。幼い時マクミラン夫妻の養子となっていたが、養父のマクミラン技師の宇宙開発公団の出向命令により、その任地である木星の衛星ガニメデに赴いた。ロックは転校先のクラスメイトに案内されて「インフィニット1」の壮大な姿に驚かされる。しかし、謎のクラスメイトのナターシャに同船が殺戮用のスーパー・ウェポンであると吹き込まれ、その心臓部に爆発物を仕掛ける手伝いをしてしまう。
ファントムレディースは博士号をいくつも持つ優秀なメンバーだ。「パラ・サイコメイル」は彼女らが開発した鎧状の戦闘スーツだが、ネーミング通りあらゆるESP攻撃を無効化出来る。惑星ディオスの億万長者プリンス・オブ・ファントムの宇宙船から送られる集束ビームによりエネルギーを供給することで、さらにパフォーマンスを向上させられる。理論的にはエネルギーの許容限度がないため、相当量のエネルギーを内包させられる。
『超人ロック 完全版(36) プリンス・オブ・ファントム』
©聖悠紀/少年画報社
プリンス・オブ・ファントムこと、ミ・ロードは、博士号をいくつも持つ程優秀な7人のファントムレディースを率いて、スーパー・ウェポン(超兵器)の開発や密売を行っていた。プロの革命家で兵器屋のゾーバーの部下であるアイザック・モーフの依頼で、ロックを殺すべくつけ狙うミ・ロードだったが、エスパーのロックに興味を持ち戦いを挑んだ。ファントムレディースは、ファントムの船からパラ・サイコメイルにエネルギーを送るが・・・!?
C国製のステルス戦闘機が「アングラー」だ。ステルス技術は敵から発見されにくくする欺瞞のテクニックで、ステルス機は機体に斜面を多用することで、レーダー波をレーダーのある方向に反射させないようにしている。また、機体表面はレーダー反射波を吸収するRAM素材を使用。斜面を多用したステルス機の特異な形状の機体は、空力的に飛行は不可能と言われていたが、フライ・バイ・ワイヤなどの電子技術により飛行が可能となった。
『超人ロック 冬の虹』(1)
©聖悠紀/少年画報社
「軌道エレベーター」の完成を阻止したいC国。F国に売却したステルス機「アングラー」をアフリカ連合のゲリラ達に盗ませた。「軌道エレベーター」の基部のアンカーを破壊すべく突入するゲリラ機。2発のASM(空対艦ミサイル)を発射するもロックに撃ち落とされ、アンカーに突入しようとしようとする。無謀なゲリラのパイロットをテレパシーで説得するロック。応じようとしないゲリラ機に、ロックはサイクロン(電磁誘導砲)の引き金を引いた。
リニアモーターガン(電磁誘導砲)の「サイクロン」は、セラミック製のペレットを音速の50倍で撃ち出す強力砲だ。元々は対戦車砲として開発され、ぶ厚い戦車の装甲を打ち破る程の威力がある。ペレットの中身はモノポールの磁石となっており、砲筒との間で生まれる吸引力、または反発力を利用して撃ち出すが、強力な磁場が必要となる。リニアモーターの技術は、直線的に物体を運搬するのに便利で、21世紀には高速鉄道に使われるなど研究が進んでいる。
『超人ロック 冬の虹』(1)
©聖悠紀/少年画報社
ロックは「軌道エレベーター」のアンカーを破壊しようと侵入してきた、ステルス機「アングラー」が発射する2発のASM(空対艦ミサイル)を、この「サイクロン」で撃ち落とそうとする。この時にロックは目隠しをしているが、「物がニ重に見えて狙いにくい」というのがその理由だった。超能力者のロックだけに、実眼と心眼(超能力の透視力)がダブってしまうためなのかもしれない。心眼に集中するための目隠しであることが分かる。
対エスパー用の兵器で、特殊なフィールドを発生させエスパーに苦痛を与える。フィールド内ではほとんどのエスパーが行動出来なくなり、出力によっては失神や死に至ることもある。ジャム(Jam)とは、通信などを妨害すること。銀箔をまいてレーダー波を散乱させ、レーダー兵器を混乱させることをジャミングと言うが、「ESPジャマー」はフィールド内のエスパーの超能力波を散乱させるのかもしれない。さまざまな種類のジャマーが登場する。
『超人ロック ブレインシュリンカー』
©聖悠紀/KADOKAWA
異星古代文明を研究、古代種族のDNAを復元させたラーセン博士が殺された。研究所に派遣されていた遺伝子工学の学者、ソクラレス・フォン・ノイマンが姿を消したことから犯行を疑われる。ノイマンの娘ナターシャにその行方の捜査を依頼された探偵ハントは、助手のロックと調査を開始。古代人の不死のDNAで不死者になったノイマンを追ったロックは、超能力者であることを見破られ、ESPジャマーで力を封じられる。
「ナノボット」は、ナノサイズのロボットで、常温で液状のただ一つの金属元素の水銀のような金属製だ。「ナノ(Nano)」は10億分の1のことで、このロボットが極小であることがうかがえる。生物界にはサンゴやカイメンのように、多くの個体がつながった形で生きているものがいる。これを「群体」というが「ナノボット」もまた群れで行動させることで、様々なプログラムをこなすことが出来るとともに、様々な形態を取ることが可能だ。
『超人ロック エピタフ』(2)
©聖悠紀/KADOKAWA
エンテラートの内乱鎮圧のために派遣された、マイノック艦隊を率いるテレーズ・マイノック。大公の娘であることから、現皇帝の退位によって身の危険にさらされていた。その危機を打開するため帝都ファーゴの「銀河コンピュータ」への侵入を計画。しかし、ファーゴ宮殿の地下に通じる資材搬入用通路には、番犬のように「ナノボット」が配置されていた。「ナノボット」は人型になって攻撃してきたが、センサーを破壊されて静止した。
力場の一種が「停滞フィールド」だ。フィールド内のエントロピーの傾斜を緩やかにすることで、フィールド内の時間を遅くすることが出来る。エントロピーとは分子運動や分子配置の乱雑さを示す量のこと。この「停滞フィールド」は軍艦の装甲にも使われるが、恐ろしくエネルギーを消費するので、使用される場所が限られている。「エピタフ」のエピソードでは、ファーゴ宮殿の地下深くにあるビッグコンピュータ「ライガー1」を守るために新設された。
『超人ロック エピタフ』(2)
©聖悠紀/KADOKAWA
銀河コンピュータの端末「ライガー1」へ侵入するため、ファーゴ宮殿の地下の資材搬入用通路を進むテレーズ・マイノック達。通路を守る「ナノボット」を倒してさらに先に進むが、その前に立ちはだかったのが、図面にも載っていない壁だった。軍艦の装甲にも使われる「停滞フィールド」の壁は、銃撃にもビクともしない。「ライガー1」のストレージをぎっしりと収めているため厳重にガードされているのだ。動力には星の核の一部が使われている。
文/綿引勝美