<あらすじ>美しい壁に囲まれた世界で暮らす子供たち。少年・トキオはある日、「外の外に行きたいですか?」というメッセージを受け取る。一方、外では、マルとおねえちゃんがサバイバル生活をしながら、天国を求めて、魔境となった世界を旅している。未来の日本を「あね散歩」。二つの世界を縦横無尽に行き来する、超才・石黒正数最新作、極大スケールでスタート!!
<あらすじ>人情あふれる丸子商店街に存在するメイド喫茶(カフェではない)「シーサイド」。まさに、天真爛漫!女子高生にして名探偵に憧れる嵐山歩鳥は、地元丸子商店街のアイドル(?)兼お騒がせ娘。ありふれた町のちょっとおかしなメイド喫茶を舞台に繰り広げられるドタバタ活劇!
<書店員のおすすめコメント>1話完結作品というのはスキマ時間に手軽に読めて好きなのですが、他方、創り手としては毎回一話でまとめるのって大変だよなぁとか思うのです。毎度オチつけないといけませんし。石黒正数はそんな1話を、笑いやら、驚きやら、ちょっとしたホロリやらを情感たっぷりに彩ってくれる魔法使い的な作家だと個人的に思っています。読めば読むほどその魅力と奥深さにハマっていきます。
さて、本作も基本的には1話完結形式で、主人公の女子高生歩鳥(ほとり)がバイト先の喫茶店「シーサイド」や高校生活の日々に、ちょっとした不思議を交え展開されていきます。とにかく本作が、他と一線を画すのは、歩鳥が過ごした高校3年間を時系列バラバラにして構成されており、かつ巻数どおり読んでも違和感を感じさせないところでしょう。1話1話の起承転結が、もっと大きなくくりで起承転結になっている大胆な構想。そして矛盾なく整合性をとるための緻密な計算。そこから広がっていく物語は、読むたびに新しい発見を与えてくれ飽きさせません。何気ない会話だと思っていたことが、別の話とリンクしているのに気づいた時は鳥肌ものですよ。単純に何も考えずに読むも良し、じっくり読み込むも良し、ご都合に併せて是非お楽しみください。
<あらすじ>単行本に収録されることのなかった未収録マンガ4本にそれ町読者が待ち望んでいた年表に加え、全キャラを描き下ろしした設定集も収録。カバーも描き下ろし、それ町完結にふさわしいトリビュート本! 最終巻と一緒に必ずゲット必須!
<書店員のおすすめコメント>「それ町」好きなら持っていて損はない1冊。この中には、作者による「それ町」全話の時系列(上述参照)が掲載されているのです!これだけでもファンには垂涎の1冊なのですが、それ以外にも各種カラーイラスト、キャラクター設定(いずれも解説入り)、全話の背景や裏話、単行本未収録原稿(なんと、まるまる1話!)など、これでもかというほど盛りだくさんの内容となっております。
著者が楽しんで描いていたことや作品に対する愛情がビンビン伝わってきて、ファンとしては読んでいて嬉し楽しくなります。これを持っているだけで「それ町」が2倍、いやもっと楽しくなるので、女房を質に入れてでも買いたい1冊です。女房いませんが、わたくしは買いました。
<あらすじ>外天楼と呼ばれる建物にまつわるヘンな人々。エロ本を探す少年がいて、宇宙刑事がいて、ロボットがいて、殺人事件が起こって……?謎を秘めた姉弟を追い、刑事・桜場冴子は自分勝手な捜査を開始する。“迷”推理が解き明かすのは、外天楼に隠された驚愕の真実……!?奇妙にねじれて、愉快に切ない――石黒正数が描く不思議系ミステリ!!
<書店員のおすすめコメント>1話目からエッチな本のゲット方法を真面目に語りはじめたので、ギャグ漫画?と思っていたら泡食った1冊。SFミステリーともいえる、人型ロボットや「フェアリー」という人工生命体が存在する近未来が舞台のお話。一見、非連続なオムニバス形式で語られているのですが、そこは石黒正数。全てが伏線であり、最後の最後で一つに収束していくさまは、ある種のカタルシスを与えてくれます。また、ギャグテイストで間口を広くしておきながら、徐々に人間のもつエゴや狂気など深いテーマへ切り込んでいくのはさすがの一言。各話のピースが一つの解へと到達する爽快感と、物悲しいクライマックスの読後感と相まって、1巻完結ながら何度も読み返してしまう1冊です。端的に作家の魅力を知りたければ、この本から入ることをオススメします。
<あらすじ>半ノラ猫のフルットとダメ飼い主の鯨井先輩のスローライフな日々……。ゆるゆる猫コメディー登場!!
<書店員のおすすめコメント>半野良猫フルットと、その飼い主的立場の鯨井先輩(年齢不詳無職)との日常を描いたコメディー作品。基本1話2Pで気軽に読めるのですが、どの話も石黒節とも言える、よく練られたネタの数々とウィットに富んだギャグ、欲張ると失敗するみたいな童話的人生哲学がゆるい絵柄とともに展開され、読み始めるとクセになっていきます。猫の世界も人間の世界も優しさに包まれているので、肩の力をぬいて読んで欲しいです。日々の疲れが癒やされ、ほっこりできます。寝る前に1話ずつ読むのがオススメです。
<あらすじ>大学の女子寮で同室のセンパイ&コウハイ。バンド活動に打ち込むセンパイは、いつも金欠ピーピー状態。これといって打ち込むもののないコウハイは、とりあえず「古本MAX」でバイト中。ぬるま湯に頭まで浸かったような、でも当人にはそれなりに切実だったりもする「大学生」という不思議な時間…。ぐるぐる廻る青春のアレやコレやを描いた大学生日常ストーリー♪
<書店員のおすすめコメント>大学生といえば、大人の自由と子供の自由を持っている最強のモラトリアム時代ですが、そんな時代に誰もが直面する理想と現実の乖離を描いた本作。主人公はバンドでデビューを目指す「春香」と、ごく普通の後輩「入巣」という女子大生二人。生きる目的ともいえる「目標」のある人とない人の対比というのはよくある設定ですが、作家自身も美大出身だからでしょうか。自称クリエイティブな人あるあるを独特に煮詰めた表現で随所に散りばめてきて、なんとなく生きているような自分にはグサリと刺さるのです。綺麗事や正論、漠然とした希望とぬるい情熱だけでは何一つ変えられないのです。ネタバレになるので詳しくは控えますが、最後に春香のとった行動は、やりたいことをやれた人だからこその苦悩と解放を見事に描いていて胸を締め付けられました。何をしていいかわからない、でも何かしたい、自分にも何かあったんじゃないか、などと思っている人には読むとその「何か」が得られるんじゃないかと。年食ったおっさんでも、毎日心躍ることに情熱を捧げたいものです。
<あらすじ>イラストレーターの響子と、だらしなく風変わりでちょっと困った父親。そして行方不明の妹と旅行好きの母親…父親の自由な発想に振り回される娘の物語。(じつは、この家族は『ネムルバカ』主人公の父と姉でもある)。
<書店員のおすすめコメント>「ネムルバカ」の主人公春香の家族を描いた本作。ネムルバカの衝撃的なラストで気持ちがロスした人はこの1冊を読めば救われた感じになると思います。春香の姉響子と父との日常の物語。突飛な行動をした父に、響子がツッコミしたり振り回されたりして進んでいきます。破天荒な春香によく似た父で、頑固でシニカル、斜め上(というか、ぶっとんだ)発想が「THE・昭和の親父」臭がしてたまらないです。親父にだって何かと苦労があるのですが、誰もわかってくれない空回り具合と、それでも自分の価値観で生きている様は不思議と勇気づけられます。春香の過去や、ちょびっとですが現状の春香も登場します。これだけでも「ネムルバカ」ファンの人は一見の価値があると思います。
<あらすじ>「それでも町は廻っている」で大ブレイクした石黒正数の短編7点収録。石黒作品に流れる熱き血潮と冷静の閃きがここに存在する!収録作品「ススメサイキック少年団」「Presentforme」「なげなわマン」「カウントダウン」「バーバラ」「泰造のヘルメット」(未発表作品)「ヒーロー」(デビュー作品)
<書店員のおすすめコメント>石黒正数の真骨頂は短編にあると(勝手に)思っているので、こうした短編集は当然期待値が上がるのですが、それを軽々超えてくるのが本作。自分がバカなのか作者が巧みなのか、ミスリードされてそのままオチまでいって、ひとりで勝手に腰抜かしている、という展開が多いです。毎回異なる背景で、決して複雑でない、むしろシンプルな設定でありながらも、あっと驚くオチまでもっていける技量には魂レベルでやられてしまいます。どの話も今回はどんな話になるんだろうとワクワクしながら読みすすめて欲しい1冊。
<あらすじ>表題作『探偵綺譚』は、ヒット作『それでも町は廻っている』の人気キャラクター「嵐山歩鳥&紺双葉」の先輩後輩コンビが登場する、『それ町』プロトタイプと言える作品。この先輩後輩コンビの系譜は「COMICリュウ」連載中『ネムルバカ』の主人公コンビへと繋がる。全10作品収録。
<書店員のおすすめコメント>ここまできたら、もう骨の髄まで石黒正数に浸りたい気持ちだと思いますが、こちらは初期作品を集めた短編集。特筆すべきは「それ町」の企画段階だった頃に描いた表題作「探偵奇譚」です。なんと、この中には、あの歩鳥と紺先輩も登場します。もちろん企画段階なので諸々設定は違いますが、「それ町」ファンには必見の作品ではあるかと思います。全般的に初期作が多いせいか、こなれた熟練度よりも、若さゆえのエネルギッシュな印象を受けて、また違った味わいがあって良いです。