ここでは『ミステリと言う勿れ』1~10巻までの各エピソードを、書店員の一押しポイントと共にご紹介!
ぜひ作品の予習・復習にお役立てください。
※コミックス10巻までの内容を扱っています。本編のネタバレも含まれますので、ご注意ください。
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カレーをこよなく愛する大学生・久能整(くのう ととのう)。ある日突然自宅に刑事が訪れて、身に覚えのない殺人事件の容疑をかけられてしまう。
刑事たちから取り調べを受けるなか、一見すると事件とはまったく関係ないように思える世間話や愚痴から刑事たちが抱えている悩みに気付きアドバイスをするうち、事件の裏に隠されたヒントに気づいていく。冒頭での何気ない会話の中に事件へとつながる大きなヒントが隠されていたりと、読み進めていけばいくほどもう一度はじめから読み直したくなる!
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ある晴れた秋の日、印象派展に向かうために整が乗り込んだバスでバスジャックが発生。整はいつものマイペースな語り口調でバスジャック犯・犬堂オトヤを激昂させ刺されそうになりますが、間一髪で乗客の一人・坂本が犯人を取り押さえる。
一件落着のホッとした空気が流れたのも束の間、実は坂本も共犯者だったことが発覚し、バスは彼らの目的地、犬堂邸へと到着する。
整は邸宅内で犯人の目を盗み、警察に通報することに成功。警察が到着すると犯人たちはあっさりと名乗り出ますが、整が感じた違和感を語り始めると、実は乗客全員がとある事件に関わりのある人物であることがわかり、犯人たちの本当の目的が明らかになっていく。今後、何度も関わることになる犬堂我路との初対面となるお話。
普段うざがられがちな語りも面白いと言ってくれて、何かと波長が合いそうな2人。部屋に遊びに来て欲しいと誘った約束が果たされるのはいつになるのか、気になります。 -
印象派展が広島で開催されることを犬堂我路から聞いていた整は、新幹線に乗り一人広島へと訪れていた。
無事に印象派展を鑑賞した後、新幹線からずっと彼の後を尾けていたという狩集汐路(かりあつまり しおじ)と知り合い、唐突にバイトを持ちかけられる。
汐路の祖父・狩集幸長の遺産相続会議に配偶者として出席させられ、代々死者さえ出るといういわく付きの狩集家相続問題に巻き込まれていく。「子供はバカじゃない」と、情報を共有したがらない母親の代わりにその娘から言葉巧みに情報を引き出そうとした新音に対して、整が彼らしい言い回しで注意するシーン。ふとした瞬間にみせる整の細かな配慮に魅力を感じます。
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坂で転がり落ち、とある病院に検査入院していた整。退院を翌日に控えた夜、病院の掲示板に秘められた暗号に導かれて向かった院内の温室で、謎の美しい女性・ライカと出会う。
「自省録」のページや行を組み合わせた数字で言葉を伝えるライカに誘われて動く内に、整は子供を虐待する親を焼き殺しに来ると噂の都市伝説"炎の天使"の謎を探ることになっていく。親を殺してほしい子供が、家の壁にマークを描くと天使が来てくれるという噂だが…。まるで暗号をやり取りするように会話する、ミステリアスな美しい女性・ライカ。以降は整と交流を深め、2人で様々な場所に出かけるようになりますが、2人の会話のテンポや独特な空気感がとても好きです。
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バスジャック事件が解決した矢先、横浜で女性を狙った連続殺人事件が発生。情報によると、被害者は全員、闇カジノでのバイト経験があったという。見つかった凶器から、捜査線上には22年前の連続殺人犯・羽喰が浮上していた。
一方、姉・愛珠の死に納得のいかない犬堂我路は、彼女の死の真相解明に乗り出していた。愛珠がカウンセラーの薦めで闇カジノでアルバイトをしていたことを知りとあるカジノに潜伏するが、そのカジノはこの横浜での連続殺人事件にも関わっていて…。姉・愛珠の事件を追っていくうち、一人のカウンセラーに行き当たったガロたち。今後どういう結末へと繋がっていくのか…何かとてつもない大きな渦に飲み込まれそうでゾワゾワしてきます。
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「いっぱい考えて、誰かに話そう。誰もいなかったら、わたしに話して」そう言って、ちいさな整を支えてくれた恩師・喜和が亡くなってから5年。整が彼女のお墓参りに訪れると、そこには整が通う東英大学の心理学准教授であり、彼女と同じく幼少期からの整の恩師で喜和の元恋人・天達春生(あまたつ はるお)の姿があった。
墓参りを済ませた後、天達から友人の別荘で開催する謎解きミステリー会の、お手伝いのバイトをしないかと誘われる整。訪れた山荘で天達の友人たちを交え謎解き会をするはずが、思わぬ出来事に巻き込まれ、5年前にそこで起きた事件の真相が明らかになっていく。同じく天達の依頼できていたバイト仲間相良レンからの「教師に向いてなくね?」という問いかけに対しての整と天達のセリフ。
仕事だけじゃなく、全ての人付き合いの場においても言えることだとハッとしました。 -
ライカを誘って病院から一番近い美術館、通称"オニバス"を訪れる整。鑑賞をしている最中、あやしげな男たちが他の観覧客にスタンガンを使って襲いかかる姿を目撃。逃げようとするも、整たちもまた彼らに捕まってしまった。
「満月に 頭を垂れて 星降る夜」という上の句を告げ、これに続く下の句を知っているか、と問いかける犯人たち。
自分たちで解読できなければ命があやうい…咄嗟に知っているフリをした整とライカ、そして巻き込まれた観覧客・黒松とともに、犯人たちと駆け引きをしながらその意味を解き明かしていく。はじめて外出した先の美術館で強盗に囲まれても、「面白い」で片づけてしまうライカの肝の座りっぷりが見ていて気持ちがいいです。
尻込みしつつも、語るべきことは遠慮なく語る整と本当に良いコンビですね。 -
大学で花の観察をしていた整は、いきなり大学まで押しかけて来た狩集汐路と半ば無理やり再会する。狩集家の遺産相続事件でも登場した汐路の従兄弟・理紀の知り合いである瓜生晃次からの依頼を受けて欲しいと言う汐路。その依頼とは、「入れ替わりを続けて見分けがつかなくなった双子を見分けて欲しい」という奇妙なものだった。
一見すると、容姿の似ている双子が入れ替わるという、子どものいたずらのようにも思える行為だったが、その裏には彼女たちの命に関わる大きな秘密が隠されていて…。この発想の柔らかさが本当に羨ましい!この柔軟さが、様々な気付きへの起点となるんだなぁと、整の「常々思っていること」を知る度、感心してしまいます。
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大隣署の青砥刑事の娘が、"してんちょう"と名乗る人物に誘拐された。犯人の要求は、犯人が指示した子供を誘拐すること。
人として誘拐など出来ないとしながらも、娘の為に必死に行動する青砥だったが、犯人の要求に答えられないままタイムリミットになってしまう。いつの間にか犯人と関わっていた整も青砥と行動を共にするが、事件は思わぬ展開で当時青砥も捜査に加わっていた8年前に起きた未解決の連続幼女誘拐殺人事件、通称「鍵山事件」へと繋がっていく──。娘を助け出すためならどんなことでも、例え自分の命をかけるようなことでもなんでもしようと、一人静かに覚悟を決めた青砥刑事の姿にグッときました。
はじめは少し怖そうな印象がありましたが、登場するたびに本当は優しい人だということがわかり、魅力が増していくキャラクターです。
©田村由美/小学館