<あらすじ>ボードレールを愛する、文学少年・春日高男(かすが・たかお)。ある日、彼は、放課後の教室に落ちていた大好きな佐伯奈々子(さえき・ななこ)の体操着を、思わず盗ってしまう。それを、嫌われ者の少女・仲村佐和(なかむら・さわ)に見られていたことが発覚!!バラされたくない春日に、彼女が求めた“契約”とは……!?話題沸騰!!奇才・押見修造が描く背徳的純愛ストーリー!
<書店員のおすすめコメント>「思春期のころの自分」って、大人になった後であれば、ああ痛かったなとかもっとこうしていたらよかったのにって振り返るのは容易いと思うんです。でも思春期真っ盛りにいる若人にはそれがわからんのです。そして、わからなかったあの頃の右往左往の様子をそのまんま「ほら君もこうだったよね!」と突きつけられるのは大人でもなかなかにキツいんです。そんな作品。だって物語のスタートが「主人公・春日がヒロインの体操服を盗む」ですよ。そこからはクソこじらせ女子・仲村とクラスのマドンナ・佐伯とのゴタゴタによる春日の中学時代の破滅があり、すべてを失ったのち、再生のために出てくるのが高校編ヒロインの常盤。破滅も再生もすべては己の自意識と、そこに密接にかかわる女子。男子は女子によって変わるんだというのは普遍的な事実ですね。恥やプライド、女の子という思春期男子をかたちづくるものをこれでもかと煮詰めている作品ゆえ、アニメ化や映画化等、ほかのクリエーターからのヒキが多いのもわかる気がします。
<あらすじ>謎の少女に襲われ、決断を迫られたあの夜──。幸せでも、不幸でもなかった僕のありきたりな日常は、跡形もなく壊れてしまった…。首筋に残った“傷”。何かを求めて、止まない“渇き”。冴えない高校生だった、岡崎を待ち受ける運命とは…!?
<書店員のおすすめコメント>この作品は、過去のどの押見作品よりも救いが無いと感じるのは僕だけでしょうか。望まずして吸血鬼になってしまった主人公・岡崎とその友人・勇樹。もともと普通の人間だった彼らが吸血鬼となってしまって以降は、古来よりの物語の定番「ヒトならざるものの悲哀」がこれでもかと描かれるのですが、御多分にもれず彼らを追う人間側がひどい。本当にひどい。この手の物語ではよく「結局人間が一番怖い」的な流れがありますが、その通りすぎて反吐が出ます。そりゃ仙水も霊界探偵辞めますわな。中盤以降は、作中で行方不明になってしまった岡崎と勇樹を探し続ける普通の人間・五所さんに視点が移るのですが、なぜ普通の人がここまで悲惨な物語に足を踏み入れ、傷つけられねばならないのかと泣きたいような感情に襲われました。そんな悲惨な物語のタイトルが『ハピネス』だなんて。最後まで見届けましょう。
<あらすじ>「惡の華」「ハピネス」「ぼくは麻理のなか」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」など、傑作を次々と世に送り出してきた鬼才・押見修造氏が、ついに辿り着いたテーマ「毒親」! 母・静子からたっぷりの愛情を注がれ、平穏な日常を送る中学二年生の長部静一。しかし、ある夏の日、その穏やかな家庭は激変する。母・静子によって。狂瀾の奈落へと! 読む者の目を釘付けにせずにはおけない、渾身の最新作!!
<書店員のおすすめコメント>単行本4巻時点でこれを書いているので、この先話がどうなるかはわかりませんが、とにもかくにもここまでで伝わってくるのは圧倒的な母の狂気。自分の息子を溺愛し、世界を息子だけにしてしまっているような母親・静子。そんな母の異常性を認知しながらも離れることのできない息子・静一。そんな二人の関係性を、これまでとは違う(『ぼくは麻理のなか』の後期のような)タッチで描いています。スクリーントーンを使わずに、すべて描線で描かれる陰影。白と黒のコントラストがとても強めに描かれ、写真でいうところの逆光的な描写も多数。それらが画面に独特の緊張感や空気、静謐さを生んでおり、マンガだから当然なのですが、驚くほど「音がしない」んですよねこの作品。うまく伝わるかな。実際擬音等もかなり少ないと思います。人物の表情のつけ方等も、マンガ的な表現は減り、写実的な表現が増えており、より「人間を描きだす」ことに特化した印象。物語も表現方法も注目の作品です。
<あらすじ>友達が一人もいない大学生の≪ぼく≫の唯一の楽しみは、コンビニで見かけた名も知らぬ女子高生を定期的に尾行すること。いつものようにその娘を尾行していたら突然記憶が飛び、≪ぼく≫はその娘のベッドで寝ていて、≪ぼく≫はその娘になっていた。その娘は≪麻理≫という名だった――。
<書店員のおすすめコメント>冒頭こそ「イケてないぼく(小森)が、ある朝起きたら気になるあの娘(麻理)になっちゃってた☆キャピ」な話ですが、思った以上に主人公の小森がキャピらない。引きこもりがちなコミュ症だったため、かわいいあの娘になっても戸惑いのほうが大きいわけですよ。ある種リアル! トイレで用を足す際もあまりいろいろ見ないようにする謎のジェントルっぷりまで! いやいや見ろよ! と世の男性読者は思ったり思わなかったり。この手の中身入れ替わりものでは当然相手(この場合は麻理)が自分に入れ替わってるはずなのですが、この作品ではなぜか麻理がどこにもいない。小森が麻理の姿で「ぼくはどうなってるんだ…?」なんて見に行くわけですが、いつもと変わらない小森がフツーに生活してました。アレアレ?じゃあ麻理のなかのぼく(小森)はなんだ? というか麻理はどこに? というのがこの作品のキモ。後半にかけては絵柄も変化し、より心象風景を表すような乾いた絵柄に。そこへ着地したか! というラストは賛否が分かれそうな気もしますが個人的には納得でした。
<あらすじ>エロと純愛が同居する独特の作風で、多くの支持者を持つ押見修造「漫画アクション」連載の最新作。ふと入ったネットカフェで初恋の人に再会した土岐耕一、29歳。再会を喜ぶふたりだが、ネカフェの外の街が消えてしまった。宿命のふたりの他にネカフェに居た、オタクや暴力男、生意気な小僧やギャルにサラリーマンなど、日常では接点が無い人々を巻き込んで繰り広げられる、突発的空間断絶ラブストーリー!!
<書店員のおすすめコメント>楳図かずおの名作『漂流教室』を大胆にリブート(?)した本作。『漂流教室』は同じ学校の小学生たちが見知らぬ世界に…という話ですが、こちらはネットカフェに居合わせただけの男女数人が見知らぬ世界にワープします。それまでに面識のない大人たちが複数人で異世界へ……どうなるかなんとなく想像つきますよね。出るわ出るわ人間のエゴ&汚いところ。力でのマウンティングから性的なアレコレまでみなさま欲望全開フルスロットルですよ……(ため息)。主人公・土岐耕一は身重の妻のもとに何としても帰るのだと奮闘するのですが、この世界の秘密はたまたま(?)同じネカフェに居合わせた初恋の人・遠野果穂が関係していそうで…? というミステリっぽい要素もありつつ。ネカフェがジメジメしてて暑いということで登場人物が結構ずっと汗かいてるのですが、その汗のかんじが個人的なフェチ心にズバズバきたことは言っておきます。
<あらすじ>毛が生えないことに悩む中学1年生の太田年彦(おおた・としひこ)は、同じ水泳部の毛深い女子、後藤綾子(ごとう・あやこ)がちょっとうらやましい。ある日、放課後のプールで後藤に呼び止められた太田は、後藤にとんでもないお願いをされてしまった! 「太田くん……あたしの毛を剃ってくれない……?」 電子版だけの「特別番外編」収録!
<書店員のおすすめコメント>毛が無くて悩む男子と毛深くて悩む女子のラブコメなのですがこれはとんでもないですよ。わからない人はまったくわからない。わかる人には刺さり倒すフェッチフェチな作品ですよ。ひょんなことから毛深い系女子(だがかわいい)後藤さんに頼まれて、腕毛を処理することになった毛無し系男子の太田。最初こそ腕毛の処理だけだったものの、徐々に要求はエスカレートし、次はすね毛、その次はわき毛、そしてついには下の毛まで……! 女子の毛を見るという背徳感、剃っているときの表情、すべてが官能的……! 太田は中1なのですが、絶対この経験で性癖歪むと思います。初期作品のため絵柄がだいぶ違うのですが、電子書籍版には巻末に特別番外編として「いまの絵柄で描いてみました」が! これがまたいい! プロの漫画家として研鑽を積んだ結果、演出や表現が段違いに。とにかく毛に興味がある人はぜひ。
<あらすじ>“普通になれなくてごめんなさい”ヒリヒリ青春漫画のマエストロが贈る、もどかしくて、でもそれだけじゃない、疾走焦燥ガールズ・ストーリー。“自分の名前が言えない”大島志乃。そんな彼女にも、高校に入って初めての友達が出来た。ぎこちなさ100%コミュニケーションが始まる──。いつも後から遅れて浮かぶ、ぴったりな言葉。さて、青春は不器用なヤツにも光り輝く……のか?
<書店員のおすすめコメント>緊張するとどもってしまって上手くしゃべることができなくなる志乃。それをからかわれ、どんどん内に籠ってしまうわけですが、このへんの「どもりをからかわれる描写」は見てて辛くなるやつです。なんですかね、なんでそんなんからかうんですかね。思春期のダメなやつですよね。そんな志乃を救ったのは、「しゃべれないなら書けばいい」と筆談を提案してきた加代。加代は加代で音痴ということにコンプレックスを抱えており、そんなふたりがある行動に出ることで物語は動くのですが…。本作の最後で、「うまくしゃべれない」ということに対する自分の感情を志乃が吐き出すのですが、その感情は「いまの自分に満足していない人」であれば誰しもが共感できるものだと思います。志乃はその感情を吐き出したことで自分を肯定するわけですが、ホント肯定って大事。まぁそれがなかなかできないから思春期ってツラいんですよね。
<あらすじ>解き放て、自分自身を!幽体離脱はキモチイイぞ。青春オカルティック・ストーリー!──とあるキッカケで「幽体離脱」できる能力を手に入れた大学生の桂木晴(ハル)。毎晩、向かうは元彼女の部屋。話したり触ったりはできないが、彼女の全てを見ることができる。ただ見るだけ……それで十分幸せだった。あんな場面を見るまでは!?アニメ化もされた青春漫画の傑作『悪の花』連載前の押見修造が描いた、超常人気の問題作!!
<書店員のおすすめコメント>幽体離脱ができるようになった大学生。何をするかと言えば……元カノの行動監視。いやまあそうかもしれないけども……! そんなことしてもいいことなんかあるわけないんですよ。案の定、「お互い童貞&処女ということもありうまくセックスができずに別れてしまった」元カノの見たくもないところを目の当たりにし、ドン底に落ちます。それが第1部で、第2部では幽体離脱できるヤツらが集まってアイドルにたかります。もうどっちの話も(主人公以外が)ホントひたすら性欲にまみれててキッツイです。だからこそラスト近く、「性欲に流されてたまるか!」と叫ぶ主人公は褒めてやりたくなりますね。初期の押見作品はド直球な欲望&それをがんばって理性で抑える主人公の葛藤がイイと思います。
<あらすじ>悪魔的魅力の巨乳風俗嬢500人が在籍する、ナイトメア・ヘルス「デビルエクスタシー」へようこそ……!!幼い頃、巨乳の女の子に「私は本当は悪魔なのよ」といたずらされたノボルは、それ以来女性恐怖症になっていた。このままでは一生童貞のまま。あせる友人と偶然見つけた風俗へ足を踏み入れたノボルは、初めて胸をキレイだと思った、微乳のメルルに恋をする。一方、友人の高橋は、絶頂を味わい翌日死亡した。彼にいったいなにが!?
<書店員のおすすめコメント>過去のトラウマで巨乳がコワい童貞大学生・ノボルと微乳のサキュバス・メルルの恋物語。メルルは男の精力を奪って殺すサキュバスなのですが、だいたい他のサキュバスたちは巨乳なため、自分のおっぱいにコンプレックスを持っていたと。そこに現れたのが巨乳嫌いの主人公・ノボルで、コンプレックスだった小さなおっぱいを褒めてもらったからときめいてしまったと。でも結局メルルもサキュバスなので、ノボルとちょっとエロい感じになると見境がなくなっちゃいまして、思わず精を吸って殺しちゃいそうになるんですね。はてさて二人に幸せは訪れるのか。俺は何を言ってるのか。良くも悪くもヤンマガで連載してました感がすごい。単行本半分くらいはちんこかおっぱい出てるんじゃないでしょうか。初期連載作ということもあっていろんなことが直球ですよね。
<あらすじ>『惡の華』の押見修造、幻のデビュー作!自らの危険な超能力をひた隠して生きてきた中年コンビニ店員が、かわいいバイト女子とレジに入った時、あの力が動いた…。本作品はここでしか読めません!「技術も経験も何も無いけど、初期衝動は1000パーセントです。ある意味今よりヤバイかも?」ーー押見修造描きおろし最新カラー表紙付き!本作は2002年太田出版刊「コミック焦燥」収録作を電子書籍化したものです。(28頁)
<書店員のおすすめコメント>かつてあったマイナー誌『ガロ』の雰囲気を存分に纏い、読むものの共感などどこ吹く風、自分の吐き出したいものを紙にただ素直に吐き出したといった風情の、狂気のみが刻まれた27ページの短編。とはいえ根底にはどこにも属せない自分というか認められない世の中に対する鬱屈というか、『惡の華』ほかの著名作にも通ずるものがある…ような気がします。押見ファンなら読んでおきましょう。
<あらすじ>これは変態マンガではない。青春マンガだ!「見たい!描きたい!!○○○を!!!」高校1年生・望月夢子の頭の中は、男のヒトのアレで一杯?が、それは単なる性欲ではなく、強烈な好奇心の発露だった。願望はエスカレートし、ついに男のヌードデッサンを実現させた夢子だが!?悩める青春の陰を支配するのは芸術か哲学か恋愛感情か?別冊ヤングマガジンで圧倒的支持を得た奇才が描く、青春ソフトコア・ワールド!
<書店員のおすすめコメント>ちんこのことしか考えられない高校1年生・夢子。どうしたらちんこが見られるのかを考えに考え、「そうだヌードデッサンだ!」という結論に至り、美術部の門を叩く。そこで出会った唯一の男性部員・本田を(半ば無理やり)モデルにし、ようやくちんこと対面を果たす。問題はちんこの付属物的な扱いを受ける本田である。明らかにちんこに興味がある(さらには時々触ってくる)女子と、密室二人きりなのだから。やはりというか当然というか暴走してしまう本田。しかしそのうえでまだ「触らないでください」といいながら、デッサンだけでは飽き足らず、魚拓よろしくチン拓までをも取り出す夢子。ついに再び弾けた本田は「夢子もハダカになれ!」と……。もうなんか説明するのもアレなんで読んでください。とにかくAll She Needs is ちんこです。ちんこって言い疲れた。