立原あゆみ先生が描く本格極道ロマン『本気!』を大特集! 1986年の連載開始以来、30年以上も愛され続ける物語『本気!』の世界を徹底的に紹介します! 物語の舞台である渚橋のモデルになった千葉県船橋市の風景もたっぷりとお届けします。
『本気!』は1986年から1996年の10年間、週刊少年チャンピオンで連載された本格極道まんがです。全50巻という大作にして、その後も多くの続編や関連作品、世界観を共有する作品が描かれています。主人公の白銀本気(しろがね・まじ)は、連載開始当初はあどけなさの残るチンピラとして描かれていますが、物語が進んでいくにつれて名もなき組員から組織の幹部、そして組長へと出世を遂げていきます。それはある種のサクセスストーリーでもあります。しかし、物語自体はそうやって成り上がっていくこと決して賛美しているわけではありません。自らがヤクザでしか生きられないことを悟り、決して多くを望まずに生きていこうとするものの、自身の人徳が故に図らずも極道の世界の階段を昇っていくことになる、そんな皮肉が描かれています。そして本気はその宿命のすべてを懐深く受け入れていくのでした。
主要な舞台である渚橋のモデルになった千葉県船橋市には味わい深い風景がたくさんあります。生活に根ざした息づかいの感じられるノスタルジックな景色は、本作に漂う哀愁をより濃くしています。
作中で本気は多くの人物たちと出会い、そしてときに悲しい別れを経験していきます。それらのひとつひとつが本気を一人前の男へと成長させていきます。末端の構成員という立場から巨大組織のトップに押し上げられていくなかで、ひとりの男がどう生き、どう困難を乗り越えていくのか。任侠の世界を舞台に繰り広げられる男たちの純情物語をぜひ本編でお楽しみください。
白銀本気
本作の主人公。出身は北海道の帯広。中学時代に教育実習の女性教師をレイプした級友を刃物で刺し、少年院に送られていた。出所後に帯広の街でケンカしていたところを渚組の平河内に拾われ渚組組員となる。社長令嬢の久美子と交流を深めていくなかでお互いに魅かれあっていくが、自分が極道者であることを理由に一線を引こうとする。数々の抗争を経て渚組の構成員という立場から、やがて広域組織・風組の最高幹部となる。
本城久美子
渚橋に住む社長令嬢。花束を贈られたことをきっかけに本気のことを意識し始め、極道者と知りつつも魅かれていく。教会の孤児院で子どもたちの面倒を見るボランティアをしている。
教会の子どもたち
渚橋にある教会が運営する孤児院で生活を送っている子どもたち。本気や久美子たちとの関わりのなかでたくましく成長していく。本気の飼猫が子猫を産んだ際に名付け親になった。
阿比留次郎
赤目組のチンピラだったが、組の金を持ち逃げした一件が本気のとりなしで許されたことをきっかけに本気の身内となった。以後、本気の一の子分として行動をともにしてゆく。
平河内公平
渚組二代目組長。帯広でチンピラとケンカしていた本気を渚橋に連れてきた。地域の平和を大切にするという考えで街の人々からも慕われていたが、徐々に激しい抗争に巻き込まれていく。
風岡翔
渚組の上部団体で関東最大の広域組織・風組の総長。ひそかに本気を自分の後継者だと思っている。渚橋にある教会が立ち退きの危機に瀕した際、自ら土地を買い上げてその存続を守った。
望月健次
風組の若頭で総長の側近のひとり。本気や渚組のことをつねに気にかけてくれる良き理解者。本気が風組に行儀見習いに行った際には、本家での立ち居振る舞い等を教えた。
長野正
風組の最高幹部のひとり。本気が風組を継承することを警戒し、自身の傘下組織や他の幹部を使って本気に抗争を仕掛けていく。他の広域組織の幹部とも懇意にしている。
赤目新山
風組の最高幹部のひとり。組織のなかでは武闘派として通っている。本気とは風組に行儀見習いに来た当初は相いれなかったものの、やがてお互いを理解し合うようになる。
久里林力
渚組三代目組長。二代目組長・平河内の側近として、数々の抗争を経験する。本気に渚組三代目組長を継がせようとするものの、本気に諭され自身が継承することになる。
染夜壮志
集優会を破門になったインテリヤクザ。本気と出会ったころは反目し合っていたものの、やがて互いをライバルとして認め合う仲になっていく。さまざまな場面で本気をサポートする。
飛田英希
関西の巨大組織・極地天道会の若頭。本気とは佐渡島で出会い、のちに五分の兄弟盃を交わすことになる。若くして出世したため、古参の幹部からは疎ましく思われている。
図譜猪佐男
極地天道会の理事長補佐。所払いのため大阪に身を寄せていた本気とは当初敵対関係にあった。お互いに心を開いてからは、本気の理解者として何かと手助けをしている。
石神治
渚署の刑事で階級は警部補。街の人々からも厚い信頼を寄せられている。警察組織の人間だが本気のことは一目置いている。キャリア官僚とは考え方の違いで対立することも多い。
市川
市川医院の医師。抗争で傷ついた渚組組員を治療することが多々あるが、ヤクザに麻酔は使わないのが信条。外科手術の腕は一流。本気と久美子のことを誰よりも心配している。
立原あゆみの極道物語の原点
本気!
物語は主人公・本気の駆け出し時代から始まります。渚組のチンピラとして極道のイロハを学んでいき、徐々に組織のなかで頭角を現していきます。また物語の前半では恋人・久美子との切ない恋模様が描かれます。後半では渚組の上部団体・風組の跡目をめぐる多くの人々の思惑に翻弄されていき、それはやがて本気自身が所属する風組との抗争へと発展していくのでした。全50巻という壮大なスケールで描かれる極道ロマンです。
渚橋に戻ってきた本気の新たな脅威
本気!Ⅱ
風組との抗争が終結し、渚橋に戻ってきた本気。平穏な生活を取り戻したかのように見えましたが、そこには警察組織という新たな敵が待っていました。渚橋署の副署長として赴任したキャリア官僚の西辻は本気の検挙を自身の手柄にするべく、さまざまな策略をめぐらせるのでした。一方、幼少のころから本気や久美子が面倒を見てきた教会の子どもたちはみな大人になり、それぞれの生活が始まるのでした。
『本気!』を知る上で欠かせない物語
本気!番外編
全3巻にわたって描かれる番外編です。番外編という位置づけではありますが、1~2巻は本編のストーリーと密接に関係し、物語全体を補足しています。1巻では風組総長・風岡翔の若き日の姿や風組の成立が描かれています。2巻は本編ラストシーンの後日談となっています。病に侵された身でありながら、風組との抗争のさなかに重傷を負った本気が、どのようにして生きながらえたのかが詳細に記されています。
警察官僚・西辻の陰謀が生んだ抗争
本気!Samdhana
本気と風組との抗争において板挟みとなり、やむなく本気を殺しにかかった男・火田五郎。刑期を終えて刑務所から出所した彼はその直後に何者かに殺害されてしまうのでした。五郎の死の裏で渦巻く陰謀とは?見え隠れする警察官僚・西辻の影。そんななか、西の巨大組織・極地天道会は会長の死によって極地天道会と種倉会というふたつの組織に分裂してしまいます。抗争はやがて、思いもよらない展開を迎えるのでした。
本気とクジラの異色の競演
本気! 外伝 クジラ
『極道の食卓』の主人公・久慈雷蔵によって語られる本気本編に関する裏話と、それにちなんだ料理が紹介される異色の作品。一話完結式となっていて、それぞれのエピソードにちなんだ一皿はどれも緻密に描かれており食欲をそそります。本気本編の後日談的な内容にもなっているので、タイトルは外伝という形になっていますが、続編的な意味合いもあります。懐かしさと新しさが入り混じる作品です。
仁と義郎のコンビが極道の世界を席巻
JINGI 仁義
組織の鉄砲玉だった神林仁と元東大生にして過激派テロリストの八崎義郎が手を組み、極道の世界をのし上がっていくというストーリーです。『本気!』に登場する風組とは覇を競う関係にある関東一円会という組織が舞台となっています。本作も『本気!』同様に息の長いシリーズとなっており、映画やVシネマなどのさまざまな形で映像化されています。ドライで計算高い男たちが織りなす緊張感のあるストーリーをお楽しみください。
小組織の抗争を緻密に描き出す
弱虫
「弱虫」と書いて「ちんぴら」と読む本作は、『本気!』の最終話で失脚した風組の最高幹部・長野の傘下だった組織の物語です。かつての風組最高幹部・長野は関西で極地天道会と勢力を二分する組織・紅屋組に拾われます。その下部組織だった月島組のチンピラ・北爪修と月島組組長の愛人・景子の二人の視点を軸に物語は進んでいきます。物語の終盤にかけては『本気!Samdhana』のストーリーとも密接に関わってきます。
©立原あゆみ(秋田書店)