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安彦良和

安彦良和。1947年北海道生まれ。弘前大学入学、学生運動の結果、除籍。上京後、虫プロダクションにてアニメーターに。1973年からフリーとなり『機動戦士ガンダム』『巨神ゴーグ』などを手掛け、キャラクターデザイン、作画監督、監督として活動。イラスト、小説の分野でも才能を発揮し、1979年『アリオン』で漫画家デビュー。代表作に『イエス』『虹色のトロツキー』『ヤマトタケル』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(原案:矢立肇・富野由悠季 メカニックデザイン:大河原邦男)など多数。1990年『ナムジ』で第19回漫画家協会賞優秀賞を受賞、2000年『王道の狗』で第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。

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安彦良和先生の全15作品を掲載!

物語作家としての矜持とエンターテイメント
虹色のトロツキー(全8巻)
表紙『虹色のトロツキー(全8巻)』 - 漫画
虹色のトロツキー(全8巻)

<あらすじ>幼い頃に記憶と家族を失った日蒙二世の青年・ウムボルトは、赤化運動の折、憲兵に捕まり拷問を受ける。しかし、関東軍参謀・辻政信によって釈放され、日本軍統治下の満州に建てられた建国大学に入学する事になった。そこで、ロシア赤軍を創ったトロツキーが父の知り合いであること、自分はトロツキーを招き入れる為に軍上層部の思惑によって学校に入れられた事を知らされる。旧満州を舞台に日本軍の政治的陰謀に巻き込まれながらも、強く生き抜く青年の物語が今はじまる。

<書店員のおすすめコメント>安彦良和氏の漫画作品には、大きく3つのモチーフがあります。1つはイエスやジャンヌといった歴史上の人物を扱ったもの、もう1つは古事記、日本書紀など古代史を扱ったもの、そして近代史をバックグラウンドにしたもの。本作はそんな安彦近代史三部作の最初の作品です。小・中・高と学校の歴史教科書ではあまり触れられることのない辻政信や石原莞爾、甘粕正彦、孫逸文、植芝盛平、川島芳子といった人物が登場し、まるで本当にそうであったかのような物語が展開していきます。本作が成功していると感じるのは次の3つの要素。1つは、舞台を建国大学に設定し「五族共和」の視点から満州にアプローチしたこと、2つめは主人公・ウムボルトを日本人とモンゴル人の混血児として設定したこと、3つめはレフ・トロツキーの存在を主人公の出生にまつわるエピソードに加え、読者を時にミスリードさせながら、物語を牽引する要素としていること。この3つがお互いに絡み合いながら、ウムボルトの成長やロマンス、過去の記憶をめぐってミステリアスに展開していきます。戦中、戦後で日本人の歴史認識が大きく変わり、ある意味臭いものには蓋といわんばかりの近代史を、現在の先入観や思想性にふりまわされることなく「その時代の人はどう考え、どう生きたのか」という同時代感覚で見つめ直そうと取り組んだのが本作です。ネーム量が多く、『アリオン』とは対照的な位置にありますが、物語作家としての強い矜持を感じる作品です。(希/40代/男)

『虹色のトロツキー(全8巻)』コマ
1年戦争に先立つ物語が緻密に描写された原点(オリジン)
機動戦士ガンダム THE ORIGIN(全24巻)
表紙『機動戦士ガンダム THE ORIGIN(全24巻)』 - 漫画
機動戦士ガンダム THE ORIGIN(全24巻)
【連載誌】角川コミックス・エース
第43回星雲賞(コミック部門)受賞

<あらすじ>ご存じファーストガンダムの安彦版コミックがついに登場。アムロがガンダムを起動させ、シャアとの壮絶な闘いを繰り広げる様を綿密に描く。ファン必見必携の1冊。

<書店員のおすすめコメント>漫画家としての練度を高めた安彦良和氏が挑んだ『機動戦士ガンダム』(以下、『ガンダム』)の再構築。キャラクターデザイン、作画監督としてテレビシリーズの制作に深くかかわっていた安彦氏は、『ガンダム』序盤の脚本会議にも参加していたそうです。再構築を行うきっかけは「『覚醒した新人類=ニュータイプが世界を変える。それがガンダムのテーマ』なんていう、とんでもない言葉が一部のオタクや自称評論家から飛び出すようになり、メディアに掲載されはじめた」ことに危機感を抱いたこと。そこに選民思想に近い匂いと安易な差別意識につながりかねない危険性を感じ、「『ガンダム』で人生をまちがう人間が出るかもしれない。だからこそ、作品の裏表を知る人間が知らない顔をしていちゃいけない。当時、どんな考えで『ガンダム』がつくられてたのかを自分は知っている。それを描けるのは自分だけじゃないか」という思いだったといいます。「わかりあえない時代や社会だからこそ、わかりあえたらどんなにいいだろう」が『ガンダム』最大のテーマ。それは21巻以降の「ひかる宇宙編」や「めぐりあい宇宙編」に色濃く描かれています。そして個人的に「THE ORIGIN」で惹かれるのは、9巻~14巻に渡って描かれたシャアとセイラの生い立ち、ジオン公国内部での謀略(特にザビ家の人間関係)、アニメのアバンタイトルで繰り返し行われるスペース・コロニーが地球に落ちる、このシーンを、ギレンやデギン、ドズルといったザビ家の人間関係を交えながら緻密に描写されているところ。とりわけシャアが初めて人を殺めたシーンが、アムロとの最後の戦いの場面でフラッシュバックする演出は、テレビシリーズとは異なる趣を見せてくれます。もしアニメを観ていれば1~8巻までの流れるような展開には驚嘆しますし、初めて『ガンダム』ワールドに触れる方にはこれ以上ない入門書ではないでしょうか。(希/40代/男)

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN(全24巻)』コマ
アニメーターとしての実績が背中を押した諦めていた夢
アリオン(全5巻)
表紙『アリオン(全5巻)』 - 漫画
アリオン(全5巻)

<あらすじ>その昔……3人の兄弟がいた。かれらは世界を3つにわけそれぞれのおさめる部分をくじ引きで決めることにした。一番くじを引いた末弟のゼウスは天界の王となり、次兄のポセイドンは二番くじを引き豊穣な海界の王となった。不運な長兄のハデスは三番くじを引いた。かれはやむなく暗い地底の国の王となった……

<書店員のおすすめコメント>初の商業誌連載となった本作は、当時、アニメのキャラクターデザインや作画監督だけではなく演出にも活躍の場を広げていた安彦氏の映像的な感性が多分に発揮された作品です。コマ割りやカメラワーク、構図の部分で“動き”を意識した演出が施されており、ペンタッチも独特です。そして何より絵が巧い。物語を離れて1コマ、1コマを眺めていても飽きがこないほど、描かれた絵に見入ってしまいます。この作品がきっかけになってイラストや漫画家を目指したクリエイター(森薫氏、寺田克也氏など)も数多くいます。安彦氏は「もともと子どもの頃、漫画家になりたかった」といいます。しかし、「どうも自分の描くものは、商業マンガとはシンクロせず、世の中に受け入れられないようだ」という思いから漫画家になるのを封印したといいます。その漫画家への夢や憧れ、「漫画が描けて本当にうれしい」という思いが、本作には表出しています。(希/40代/男)

『アリオン(全5巻)』コマ
史実として残っていない事件の知られざる側面と人の生き様
天の血脈(全8巻)
表紙『天の血脈(全8巻)』 - 漫画
天の血脈(全8巻)
【連載誌】アフタヌーン

<あらすじ>時は1903年。日露戦争開戦の半年前、朝鮮半島に近い満洲の地に日本からの学術調査隊がいた。彼らの目的は「好太王碑」。古代朝鮮半島の歴史、日朝関係を記したとされるこの碑文の研究のため、嬉田(うれしだ)教授率いるこの調査隊に参加していたのが、本編の主人公、一高の学生・安積亮(あずみ・りょう)である。まだ何者でもない自分に悩む安積が研究自体に疑問を持っていたところ、調査隊は馬賊による襲撃を受けた!果たして彼らの運命は――!?

<書店員のおすすめコメント>歴史モノの楽しみといえば、オリジナルのキャラクターが史実や歴史上の人物とどう絡んでいくかにあると思います。それによって、教科書では知ることの出来なかった、事件の知られざる側面や、人物の内面が明らかになるのがタマランのです。『天の血脈』にも孫文や張作霖、大杉栄に堺利彦、安重根といった歴史上の人物が多数登場します。彼らと出会い成長してゆく主人公が安積亮、18歳の青年です。彼は基本的に軟弱で間抜けでヘタレで荒事にも向かない人間ですが、むやみやたらな反骨心で、間違っていると思えば、偉いさんでも構わず食ってかかる好漢です。なんの特殊能力も持たない彼は、日露戦争を経て混迷を極める満州の地で、抗いようもなく歴史の大きな流れに巻き込まれ、流されていく。『天の血脈』が凄いのは、安積の成長物語からさらに「日本の外征」という大きな物語が見えてくるところ。個人の物語と大きな世界が相互に関わりながら展開される、歴史ロマンの醍醐味がこの作品には詰まっています。(豚/30代/男性)

『天の血脈(全8巻)』コマ
ロシア×自衛隊×任侠映画 荒唐無稽なアクションコメディ
韃靼タイフーン(全3巻)
表紙『韃靼タイフーン(全3巻)』 - 漫画
韃靼タイフーン(全3巻)
【連載誌】MF文庫

<あらすじ>200X年、北海道・函館。ロシアのタンカーが事故で爆発炎上、積み荷から猛毒ガスが発生した。住民には避難勧告が出され、街はパニックに陥った。非常事態下、主人公・荒脇卓馬は幼なじみのヒデコと一緒に入った廃船の中で、ロシア人の美少女に出会う。しかしその少女を狙う武装した謎の覆面軍団に卓馬は襲われてしまう。訳が分からないまま卓馬はロシアや自衛隊、さらにはやくざまでかかわる事件に巻き込まれていく……。

<書店員のおすすめコメント>韃靼騎兵隊、ロシア革命、自衛隊のPKF活動など、いま同じモチーフで作者にお願いしたら、まったく別な物語を創作してくれそうな予感がする本作。安彦作品には珍しく、高校生(しかもホストクラブでバイトしているという設定)が主人公で、眼鏡のヒロインが登場するのも「少し重たい、思想の濃いものが終わった時だったから何よりも楽しい」作品にしようと試みた結果だったのではないでしょうか? 作中に時の首相や官房長官、大統領をモデルにした人物が登場するのも本作ならでは。荒唐無稽を地でいくような作品に仕上がっていますが、後の『麗島夢譚』にこの作品のテンションが引き継がれているとみるのは、ファンの穿った見方でしょうか。(希/40代/男)

『韃靼タイフーン(全3巻)』コマ
アクションを前面に押し出した痛快作
麗島夢譚(全4巻)
表紙『麗島夢譚(全4巻)』 - 漫画
麗島夢譚(全4巻)
【連載誌】リュウコミックス

<あらすじ>人気アニメーターから、徳間書店の旧「リュウ」誌上で『アリオン』を連載し、マンガ家へと転進した安彦良和が、徳間書店では14年ぶりとなる新刊コミックスを上梓。時は寛永十五年―― 島原の乱の終結からしばらく後、南洋上で水軍の一団を率いる青年、伊織はオランダ商船を襲う。首尾よく船を制圧し、お宝を奪い取るのだが、その際に船倉で歳若い日本人宣教師補と紅毛人の虜囚見つけるのだが……。安彦良和が以前から興味を持ち続けていたモチーフをついに漫画化! 安彦良和、ひさしぶりの歴史巨編!

<書店員のおすすめコメント>今回ご紹介した安彦作品のなかで、一番肩の力を抜いて読めるのが本作だと思います。もし本作が初の安彦漫画体験だとしたら、『虹色のトロツキー』や『イエス』『我が名はネロ』ではまったく別な読書体験ができます。「シリアス基調で行くか、もともと設定が設定なのだから軽いノリをベースでいくか、なかなか判断できかねていた」と「あとがき」にもありますが、作者にとってこの時代は以前から描きたかったモチーフの一つだったようで、「鎖国」と「禁教」にはいまでも興味を惹かれているようです。伊織とミカ・アンジェロのバディアクションに加え、二天一流の宮本武蔵、空飛ぶバスク人・ミゲルなど魅力的なキャラクターが多数登場し、終盤では忍者アクションもあるので、内容的には何でもありな『パイレーツ・オブ・カリビアン』を思わせます。思い切りエンターテイメントに振り切れた作品なので、この作品をきっかけに美麗な絵とアクションで魅せる安彦漫画に入門してみてはいかがでしょうか。(希/40代/男)

『麗島夢譚(全4巻)』コマ
イエスを「人間」として描いたフルカラー作品
イエス(全2巻)
表紙『イエス(全2巻)』 - 漫画
イエス(全2巻)

<あらすじ>安彦良和のオールカラー描き下ろしコミック登場!かつて救世主と呼ばれた男がいた。ナザレの男イエス。ローマとエルサレムの二重支配に苦しむイスラエルの民ヨシュアは、危険人物の一人としてイエスを監視するのだが、彼の言動にいつしか惹きつけられていくのだった。

<書店員のおすすめコメント>世界一の有名人、それは間違いなく「イエス・キリスト」でしょう。この物語はイエスの弟子であるヨシュアの目を通して描かれたイエスの物語です。冒頭で「人」と書きましたが、そもそもイエスは人でありながら神として崇められています。キリスト教に詳しくない私には、世界一有名であるにもかかわらず、もやもやとしたキャラクター像でした。と、過去形で書くのは、この作品を通じてイエスが少しイメージしやすくなったからです。端的に言ってしまえば、人間イエスの生きざまがこの物語には描かれているのです。重篤に陥ったヨシュアの妹を看病して、快方に向かわせ、それをきっかけにヨシュアはイエスに従います。この作品に描かれる「奇跡」はこのエピソードを含めてわずかばかり。また、従者たちもこの上なく人間臭く描かれています。著者自らがあとがきで述べているように、高弟ペドロでさえも最期まで愚かで世俗的な人物ぶりです。この作品ではイエスは数々の奇跡を起こすわけではなく、復活もしません。しかし、ユダヤ教改革者……人としての確固たる生きざまが炙り出されているのです。(T・M/50代/男)

『イエス(全2巻)』コマ
心打たれるラストシーンは必見
ジャンヌ(全3巻)
表紙『ジャンヌ(全3巻)』 - 漫画
ジャンヌ(全3巻)

<あらすじ>“奇跡の少女”ジャンヌ・ダルク。ジャンヌの幻にみちびかれ、ひとりの少女が人と歴史の宿命に挑む。気鋭・安彦良和がオールカラーで描く歴史ファンタジーの傑作。第1弾。

<書店員のおすすめコメント>タイトルに『ジャンヌ』とありますが、ジャンヌ・ダルクが主人公ではありません。ヒロインのエミールを通してジャンヌの生きざまを深く感じさせてくれる物語です。まず、全編フルカラーの色彩が素晴らしく、15世紀の中世フランスの混沌とした戦乱の日々が、すぐ目の前で繰り広げられているかのような錯覚に包まれます。フランスとイギリスの間に勃発した100年戦争のさなか農夫の娘として生まれ、フランス軍に従事して大切な戦いの勝利に大きく貢献した、ジャンヌ・ダルク。ジャンヌが世を去ってから10年後に生まれたエミールは、少女ながらジャンヌと同じ運命を背負って戦乱へ飛び込んでいきます。エミールの心の支えであるジャンヌは、ここぞという場面で幻のように現れては、エミールを導きます。終盤にはジャンヌの最期と同じく、エミールも火刑の階段を上ることとなりますが……。ジャンヌが何を願って戦いに明け暮れたのか、そして、本当はどんな生き方をしたかったのか、物語には散りばめられています。そして、ラストシーンに心打たれます。読後はカタルシスの余韻が心地よいです。(T・M/50代/男)

『ジャンヌ(全3巻)』コマ
自分の弱さを覆い隠そうとしたときに出る攻撃性
我が名はネロ(全2巻)
表紙『我が名はネロ(全2巻)』 - 漫画
我が名はネロ(全2巻)

<あらすじ>ネロ・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス。西暦54年、ローマ皇帝・クラウディウスは暗殺され、16歳にしてネロは皇帝に即位する。家庭教師で哲学者であるセネカの補佐のもと、元老院、民衆を味方につけ確固たる地位を築く。しかし、ネロに執着し、政の場にも顔を出す母・アグリッピナの存在を次第に疎ましく思う。時を同じくしてゲルマニアでは、ドミティウス・コルブロがゲルマン人の騒乱を鎮圧し、勇猛な闘いぶりから「レヌス(ライン川)の狼」と呼ばれたカウキ族の少年が、奴隷として買われようとしていた。いまここに、数奇な宿縁で結ばれた2人の少年の物語が始まる!!謀略と暗殺、怠惰と背徳……欲望のままに己が権勢を振るい、全盛を極めた暴君ネロの生涯を名匠・安彦良和が描く!!

<書店員のおすすめコメント>ローマ帝国の第5代皇帝ネロといえば「暴君」。一般的にも暴君といえば「ネロ」みたいになってますが、いったい何をしたのか、なぜそうしなければいけなかったのか、実はよく知りません。本作で彼が皇帝として大成していくなかでの出来事を追うことによって、当時の政治環境と彼の内面の変化を知ることができるので、ネロが少しずつ「暴君」となっていった経緯が良く分かります。「歴史を正しく理解する」という点で本作はオススメです。個人的には「自分の弱さを覆い隠そうとしたときにでる攻撃性」というものは本当に恐ろしいのだな、と感じましたね。「皇帝」という立場にあるものが自分の弱さを自覚し、受け入れるのは並大抵ではないと想像しますが、うーん、やはり古今東西、「リーダー」というものの業の深さを感じずにはいられません。僕は永遠に遠慮したいです。(Y・I/30代/男性)

『我が名はネロ(全2巻)』コマ
伝説の英雄を親友の目線で捉える
完全版 アレクサンドロス(全2巻)
表紙『完全版 アレクサンドロス(全2巻)』 - 漫画
完全版 アレクサンドロス(全2巻)

<あらすじ>人間と戦争を描いて並ぶ者なき偉才・安彦良和が描く歴史コミックの傑作!!かつて西方の地に“歴史”を作り、“世界”を変えた一人の青年がいた。彼の名はアレクサンドロス。トラキア遠征、カイロネイアの戦いを経て、誰もがマケドニアの王フィリッポスの後継者と認めるが、フィリッポスはマケドニア人のクレオパトラを見初め7人目の妻に迎える。王妃たるもの、マケドニア人がふさわしいと言うアッタロス将軍の言葉に反感を抱き、アレクサンドロスは父王に刃を向けるが……。『NHKスペシャル文明の道アレクサンドロス――世界帝国への夢』をもとに、完全コミック化。※本書はNHK出版より刊行された『完全版アレクサンドロス~世界帝国への夢』を分冊しています。

<書店員のおすすめコメント>学校では「アレキサンダー大王」で習わなかったでしたっけ? ギリシャの将軍でなんか強かったんだよね……? というくらいの知識しかない人も多いんじゃないでしょうか? 本作はその「アレキサンダー大王」であるアレクサンドロスを幼少の頃から見てきた親友・リュシマコスの視点で描かれており、「伝説の英雄」というイメージであまり人間味を感じることのない「アレキサンダー大王」が少し身近な存在のように思えます。リュシマコスは最後にアレクサンドロスを評してこう言います。「欠点の多い、大酒呑みの自惚れ屋で傷つきやすい、愛情が豊かで酷薄な、誇り高い、そして誰よりも勇敢なマケドニア生まれの良い青年だった」 アレキサンダー大王といえども幼少時代はあって、揺れ動く青春時代を経て、外からは見えない葛藤を抱えていたのだろう、ということを改めて感じます。この時代に詳しいひとは大河ロマンとしても楽しめますし、ギリシャ・ローマ史のおさらいとしても、いかがでしょうか。(Y・I/30代/男性)

『完全版 アレクサンドロス(全2巻)』コマ
『ナムジ』『神武』に連なる古代史へのロマン
ヤマトタケル(全5巻)
表紙『ヤマトタケル(全5巻)』 - 漫画
ヤマトタケル(全5巻)

<あらすじ>父の名代で奴国に遠征してきた皇子オウス(後のヤマトタケル)は、近隣の賊・川上タケルの砦攻略に悩む。だが、その娘・鹿文と出会った事で、衣装を借り砦への潜入を試みることに…。ヤマトタケルの物語、堂々開幕!

<書店員のおすすめコメント>『古事記』『日本書紀』に記述こそあるものの描かれ方が異なっており、「実在しなかったのではないか?」と言われているヤマトタケルを、実在した「人物」として描いているのが本作。『ナムジ』『神武』に連なる物語ですが、『古事記』『日本書紀』に描かれている事象に基づきながら、独特のイマジネーションで再構成されています。それは『虹色のトロツキー』『天の血脈』に近い手つきといえるかもしれません。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、アニメーションでは描かれなかったシャアやセイラの過去が明かされたわけですが、本作でも物語の序盤で女装した小碓皇子が敵である川上タケルから、「ヤマトタケル」の名を授かる場面があります。小碓皇子は川上タケルを暗殺するべく対峙し、死の淵にある川上タケルから「ヤマトを統べる勇者」として、「ヤマトタケル」の名を授かります。敵から「ヤマトタケル」の名を授かるのは、ずいぶん奇妙な設定ですが、『古事記』の倭建命(やまとたけるのみこと)のクライマックスシーンで描かれているエピソードです。『古事記』『日本書紀』に描かれた「ヤマトタケル」に関する足跡をたどるわけではなく、あくまでその時代を生きた人間として「ヤマトタケル」に迫っていく作者の視点は、まさにその時代に生きた「人間」を通して現代の私たちに何かを語りかけてくる、漫画家・安彦良和氏の円熟を感じます。(希/40代/男)

『ヤマトタケル(全5巻)』コマ
自身の来歴を明かした唯一無二の書籍
原点 THE ORIGIN-戦争を描く,人間を描く(全1巻)
表紙『原点 THE ORIGIN-戦争を描く,人間を描く(全1巻)』 - 漫画
原点 THE ORIGIN-戦争を描く,人間を描く(全1巻)

<あらすじ>『機動戦士ガンダム』の生みの親の一人であり,『虹色のトロツキー』など歴史に材をとった作品を世に送ってきた漫画家・安彦良和.戦い,殺し合ってしまう人間を,彼は,なぜ,どのように描いてきたのか.東奥日報記者・斉藤光政がその人生に迫り,ついに安彦本人も自らの「原点」を綴った! 生い立ち,学生運動,アニメ・マンガ界での出会いと模索…….作品世界のバックには,この人間観があった!

<書店員のおすすめコメント>これまであまり自身のこと、特に学生運動当時のことを明かしてこなかった安彦氏が、70歳の節目に自らの言葉で明かしたのが本書。まさにタイトル通り、悩みながらそれでも明日を乗り越えてきた、人間・安彦良和のこれまでの歩み、アニメーター、漫画家として取り組んできた作品の背景にあったものが言語化されています。もはや“全共闘”という言葉すら死語に近いのかもしれませんが、安彦氏は学生時代、友人ふたりと『こんみゆん』という新聞紙を創刊し、「ベトナムの平和を願う会」を立ち上げ、反戦運動を本格化させます。『レッド 1969~1972』(山本直樹)という連合赤軍をモチーフにした作品にも、安彦氏がモデルとなったキャラクターが登場しますが、結果的に「東奥日報」に顔が載り、警察に逮捕され、弘前大学からは除籍処分を受けます。そしてこの平和運動での挫折が、安彦氏を東京に向かわせる遠因にもなり、やがて虫プロダクションのアニメーター養成所に二期生として採用されることとなるのです。ご本人に取材した際、確かに学生運動のお話をされ「ぼくはフダ付きだから」と自嘲気味におっしゃっていましたが、当時は「天才アニメーターで、漫画家として道を切り拓いてきた大先生が逮捕経験のある前科者」とは到底想像できず、話半分で聞いていて本当に失礼いたしました。巻末に、ジュンク堂池袋本店で開催された「安彦良和書店」で取り上げられた書籍が「読んできた本、おすすめの本」として紹介されているのも漫画家・安彦良和の書棚を覗くようで興味が尽きません。(希/40代/男)

『原点 THE ORIGIN-戦争を描く,人間を描く(全1巻)』コマ

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  • ご注意事項
  • ※本ページに掲載している連載中作品の巻数は、2018年9月時点のものです。