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祝・手塚治虫生誕90祭!! 神様が生んだスター・システム

スター・システムのバイプレイヤー

スター・システムのバイプレイヤー

手塚治虫のスター・システムとは 手塚治虫は、宝塚歌劇団の事務所に出入りし、自らも劇団に参加した体験を持つ。また、無類の映画好きもあって、自らが創造したマンガのキャラクターを俳優と考えて、スター・システムをとっている。いろいろな役どころで、それぞれに名演技を展開する手塚一座の役者を紹介しよう。

アセチレン・ランプ
アセチレン・ランプ
『ロストワールド』の新聞記者役でデビュー。ギャング役が多いが、時には女装して登場(『ザ・クレーター』の「鈴が鳴った」の巻)。後頭部にロウソクがあり、興奮すると火が灯る。手塚治虫の親友がモデル。
アッゴ
アッゴ
『サボテン君』や『豆大統領』などで保安官役で登場しているキャラクター。顔のほとんどをアゴが占めるため、この名がついている。手塚西部劇に欠くことができない人物で、独りよがりな面が目立っている。
アフィル
アフィル
『ロストワールド』のママンゴ星秘密結社支部長を好演。アヒルに似た顔つきの悪役だが、アセチレン・ランプらの陰に隠れて活躍の場が少ない。『ブラック・ジャック』の「ミユキとベン」の話にゲスト出演。
大目玉男
大目玉男
通称をタマちゃんという。デビュー作は『アトム大使』で、主役級を演じている。その活躍が買われて、その後の『鉄腕アトム』でもケン一とともにアトムの学友役で出演することになる。眼鏡が特徴だ。
お茶の水博士
お茶の水博士
『鉄腕アトム』でデビューしている。大きな鼻は、手塚治虫のペンが滑って大きく描き過ぎたのが元だ。天馬博士に代わってアトムを庇護し、人間らしい心に教育した。天才科学者だがオッチョコチョイ。
オッサン
オッサン
『怪盗黄金バット』のチンチクリン博士役で登場したヌーボー役者として知られる。立派な口ヒゲのわりには、なんとなく抜けているコミカルな役が似合う。別名テントインカン。味わい深い演技をする。
金三角
金三角
『鉄腕アトム』の「十字架大陸」(単行本時に「十字架島」に改題)の巻でデビュー。中国人風で国際的陰謀団の大物悪役を熱演した。モデルはランプ同様、手塚治虫の級友。『鉄腕アトム』の「人面岩」の巻では、ちょっとイイとこを見せる。
クッター
クッター
いつも何かをモグモグと食っていることから名づけられたバイ・プレイヤー。丸顔で鼻下のチョビヒゲがユーモラスなキャラクターだ。アニメの「ポパイ」シリーズにも似たキャラがおり、その影響か。
下田(げた)警部
下田(げた)警部
ライオンブックスシリーズ『くろい宇宙線』でデビューした、刑事役を専門とするキャラクター。名の由来となった下駄のような四角い顔が特徴。『バンパイヤ』では、一瞬本当の下駄になるシーンがある。
ケン一
ケン一
敷島健一。『新宝島』のピート少年役でデビューした、手塚マンガ初期の代表的な主役キャラクター。『ジャングル大帝』では大人役もこなしている。『鉄腕アトム』の学友、『ケン一探偵長』などの探偵少年が当たり役だ。
佐々木小次郎
佐々木小次郎
『おお! われら三人』でデビューした学生キャラクター。剣を取っては天下無敵の快男児として知られるが、わがままで坊ちゃん気質。ただし、気が短いのが玉に傷で、ケンカが飯より好きだという。
サターン
サターン
『魔法屋敷』で百万人の科学者達にケンカをふっかけた悪魔大王として登場。『鉄腕アトム』の「ロボットランド」の巻では、ロボット童話国の大魔王、『ブラック・ジャック』の「魔王大尉」の話ではケネス大尉を熱演。
サファイア
サファイア
『リボンの騎士』のヒロイン。天使チンクによって、男と女の二つの心を入れられて二重の生活に苦しむ役を熱演。続編『双子の騎士』では、デージイ王子とビオレッタ姫の双子の母として再登場する。
サボテン・サム
サボテン・サム
『サボテン君』の主役としてデビューした、西部のガニ股ヒーロー。一見ボーッとしているが、ミルクを飲んだ途端に強くなる。『怪傑シラノ』では、クリスチャン、『大洪水時代』では浦島少年を演じる。
猿田(猿田彦)
猿田(猿田彦)
『火の鳥』全編に関わる重要なキャラ。日本神話のサルタヒコ神が由来で、同シリーズ「黎明編」では古代人猿田彦として登場した。蜂に刺されたように巨大な鼻が特徴で、お茶の水博士との血縁も示唆される。
スカンク草井(くさい)
スカンク草井(くさい)
『鉄腕アトム』の「電光人間」の巻でデビューした悪玉キャラクター。映画スターのリチャード・ウィドマークがモデルといわれる。口角を上げて「へへへ……」と笑う声がいやらしく、なんともおぞましい。
スパイダー
スパイダー
ストーリーの展開に何の関係も無く登場して“オムカエデゴンス”というだけの変なキャラクター。鼻が自由に伸び縮みする。ヒョウタンツギと人気を二分する道化役として知られている。
田鷲(たわし)警部
田鷲(たわし)警部
「アトム」シリーズにおけるレギュラーのバイ・プレイヤーで、中村課長とコンビを組んでいる。いつも私服姿で制服姿の中村課長とは対照的だ。高い鼻の下にタワシのようなヒゲが生えている。
力 有武(ちから ありたけ)
力 有武(ちから ありたけ)
四角くごつい鼻が特徴のキャラクター。『ロストワールド』以来、地味な役柄ながら息長く活躍を続ける。力さんと呼ばれ、柔道七段、ボクシングは元ミドル級チャンピオンの硬派だ。熱血漢が当たり役。
チャニイ・チャック
チャニイ・チャック
『黒い峡谷』に登場し、西部少年を演じている。その後、『大洪水時代』では海老原鯛二、『光』では主役の光少年を熱演する。長くカールする髪、大きな目が魅力の少年スターとして人気が高い。
デコーン
デコーン
『ロック冒険記』でデビュー。『サボテン! 銃をとれ』にも登場して医者役を演じている。その名のとおり顔の大半を占める大きなおでこが特徴で、アッゴー氏とは対照的だ。誠実な医者役が当たり役となっている。
テツノおっさん
テツノおっさん
いつも数本のタバコを同時にくわえている愉快なおっさんだが、嫌煙時代になり出番が少ない。最近では『ブラック・ジャック』に客演したのが知られる。手塚の少年時代、隣にいた大工さんの名がモデル。
天馬博士
天馬博士
ロボット少年アトムの生みの親で、科学省長官となっている。“ひのえうまの年の生まれ 群馬の人 本名午太郎 家は代々馬鈴薯さいばいをいとなむ 練馬大学を卒業後馬力に馬力をかけ……”と紹介される。
東南西北(トンナンシーペイ)
東南西北(トンナンシーペイ)
『ロック冒険記』で初登場した正体不明の悪玉。ディモン星の権利をめぐってロックと対決し、悲惨な死を迎える。目尻の釣り上がった東洋人的な顔立ちで、初期の手塚マンガで名演を見せる国籍不明の悪役だ。
ナイロン卿
ナイロン卿
『リボンの騎士』で登場したユニークな敵役キャラクターで、サファイア王女をたびたび危機に陥れている。ソーセージのような大きな鼻を持ち、少し間が抜けているものの、なかなか悪賢い。
中村課長
中村課長
「アトム」シリーズに登場し、田鷲警部とコンビを組んでいる。田鷲警部の背広姿と対照的に制服姿で、謹厳実直ぶりを発揮している。田鷲警部の面長に比べ丸顔、批判型に対して温情型として知られる。
ノールス・ヌケトール
ノールス・ヌケトール
『メトロポリス』、『ふしぎ旅行記』、『新世界ルルー』などの演技が光っている。半悪役キャラクターで、年中葉巻をくわえており、編集長役が最も似合う。口やかましく、人使いが荒い、部下には迷惑な存在だ。
ノタアリン
ノタアリン
ナンデモカンデモ博士として、「漫画のかき方」や「生物学」、「天文学」を講義している。“ノータリンじゃない”、“ノタアリンだ”と癇癪を起こすが、人がよくのろま。『メトロポリス』でデビューする。
ノンキメガネ
ノンキメガネ
デビューは『おやじ探偵』で、かつてはヒゲオヤジの相棒役だったが、後年では出番が少なくなっている。間抜けだが要領が良く、ヤキイモが大好きだ。丸眼鏡をかけた姿は、いかにも人が良さそうに見える。
花丸先生
花丸先生
本名、花麻呂。元貴族で世界一のヒゲと太鼓腹を持っている。科学者役が多く、朗らかで憎めないキャラクターだ。『来るべき世界』の山田野加賀士博士、『ブラック・ジャック』の山田野博士の演技が光る。
花輪重志(はなわ おもし)
花輪重志(はなわ おもし)
『ロストワールド』でデビューしている。その名のとおり、巨大で重い鼻の持ち主だが、気の弱い面があり、同じように巨大な鼻の持ち主であるレッド公、お茶の水博士などに食われて出番が少ない。
馬場のぼる
馬場のぼる
マンガ家の馬場のぼるがモデルのキャラクターで、鼻ヒゲと帽子がトレードマーク。『地球1954』(単行本時に『地球の悪魔』に改題)に登場する珍祈祷師馬場昇龍、『W3』の馬場先生など、ドラマをしめる役割を担わされる。
ハム・エッグ
ハム・エッグ
手塚治虫デビュー前の作品『おやじの宝島』で初登場。縮れ髪で、出っ歯をむき出しにして笑う卑劣漢で、アセチレン・ランプとコンビで数多くの作品に登場している。悪賢いサギ師が専門だが、意気地なしでケチな面もある。
伴 俊作(ばん しゅんさく)
伴 俊作(ばん しゅんさく)
通称をヒゲオヤジという。神田生まれの江戸っ子で、柔道三段を誇る。若ハゲ、若白髪で、いつも同じ蝶ネクタイをしており、私立探偵役で数多くの作品に出演している。「アトム」シリーズでは、アトムらの学校の先生。
ヒョウタンツギ
ヒョウタンツギ
デビューはヒゲオヤジより古く、その名の通りツギハギだらけの一種異様な怪物だ。何にでもよく吸いつき、臭いガスを吹き出す。シリアスな場面が続いた時、てれ隠しにも顔を出したりしている。
フーラー博士
フーラー博士
『ターザンの秘密基地』でデビューして以来、時々登場しては駄々っ子のように騒ぎ回る。世にもがめつい科学者役をやらせるとピッタリ。小柄だがそのエネルギーは無尽蔵(?)。世間を驚かせて喜ぶ。
ブク・ブック
ブク・ブック
『新宝島』の海賊ボアールとして初登場した悪玉。押しの強いボス役や悪徳政治家、悪徳商人を演じさせたらピカ一だ。ヒゲオヤジとは従兄弟関係にあるという人もいる。幅広い作品で活躍している。
ブクツギキュ
ブクツギキュ
ツギハギだらけで、煙突を立てた石焼き芋の屋台に似た形をしている。ヒョウタンツギの兄弟分といわれているが、ガスを発射することはない。その替わりにいつも湯気を立てているのが特徴だ。
ブタナギ
ブタナギ
『ブラック・ジャック』でデビューした怪物。その名から連想されるのがサナギで、昆虫に夢中だった手塚治虫らしい造形だ。画面の端々に現れては「ワハハ……」と笑い茶化す狂言回し役を担う。
フランケンシュタイン
フランケンシュタイン
『フランケンシュタインの怪物』の人造人間のように、恐ろしい顔をしたスターだが、不思議なことに徹底した悪役を演じたことがない。やや陰のある博士役など、個性が強い役が似合う。『フィルムは生きている』などに出演。
ヘック・ベン
ヘック・ベン
『サボテン君』でデビューした、西部劇の貴重なバイ・プレイヤーだ。モデルは映画『駅馬車』の俳優トム・タイラーで、線が細くやや神経質な役どころがピッタリ。時代劇の『どろろ』に出て、新境地を見せる。
丸首ブーン
丸首ブーン
『鉄腕アトム』の「ロボット爆弾」の巻でデビューした性格スター。モデルは映画スターのリノ・ヴァンチュラで、ドスのきくことではナンバー1だ。タフでしかも、現代的センスにあふれた敵役を演じる。
ミイちゃん
ミイちゃん
耳男(みみお)。『ロストワールド』の改造ウサギがデビュー作だ。二本足で歩き、人間の言葉も話せる。『月世界紳士』ではウサギのような月世界人、『ふしぎ旅行記』では耳の長い天使ハロウィンを好演している。
ミッチイ
ミッチイ
手塚治虫の初期作品で、ヒロイン役を一人で背負った。理知的で、しかも神秘的な美少女役を得意とした。『メトロポリス』では、髪を切って男女両性のロボットを演じた。後期は専ら品の良い中年婦人役。
ムッシュウ・アンペア
ムッシュウ・アンペア
『ふしぎ旅行記』の二重人格者役でデビューして以来、彫りの深い演技をしている。地味だが貴重なバイ・プレイヤーで、映画スターのシャルル・ボワイエがモデルだという。最近では『ブラック・ジャック』に出演。
メイスン
メイスン
『ナスビ女王』でデビューした、中年のイケメンとして人気を集める。イギリスの映画スターのジェームズ・メイスンがモデルで、しぶい敵役を演じる。時にはヒーロー、ヒロインの父親役もこなしている。
モンスター
モンスター
『ターザンの秘密基地』(のちに『シャリ河の秘密基地』に改題)などのターザン役専門だったが、二枚目ぶりを買われて、西部劇のヒーローや大人ものに進出。モンスターという名とは裏腹に、手塚治虫初期の成人ヒーローのほとんどを演じる。
ヨッツン
ヨッツン
手塚治虫のデビュー前の作品『オヤジの航海記』で、ミッツンの恋人役として二枚目半的な演技を展開。近年では主として、下男役やコック役などを多く演じるが、意味のない狂言回しの場合が多い。
ラムネとカルピス
ラムネとカルピス
またの名をチックとタックという。『怪盗黄金バット』でデビューした凸凹コンビだ。お人良しで男気の強いデブのカルピスと、ノッポでうるさ型のラムネの名コンビは、手塚マンガに欠かせない脇役の一つ。
レッド公
レッド公
横顔がオウムにそっくりな怪キャラクター。『メトロポリス』の悪役でデビューして人気を博した名脇役だ。『怪傑シラノ』では、シラノ・ド・ベルジュラック役で好演し、手塚マンガのスター・システムの一人に名を連ねる。
ロック・ホーム(間久部緑郎)
ロック・ホーム(間久部緑郎)
『少年探偵ロック・ホーム』の少年探偵役でデビューした、ケン一と並ぶ手塚マンガの少年ヒーローだ。シャーロック・ホームズの名をもじっていることでわかるように探偵役が多いが、後年は黒眼鏡をかけ悪役を演じる。
ロンメル
ロンメル
『ジャングル大帝』でデビューした大物バイ・プレイヤーとして知られる。オーストリア人の俳優エリッヒ・フォン・シュトロハイムがモデル。出演作は少ないが、押し出しの強烈さでその存在感をアピールしている。
ブラック・ジャック

『ブラック・ジャック』人気スター

手塚治虫のワンマン劇場と銘打って連載が開始されたが、依頼された段階では5回連載だった。毎週読み切りとして掲載されたこともあって、手塚治虫の抱える名優達が数多く出演している。ことに連載第1回、第5回にはゲスト・キャラが数多く見受けられる。

ブラック・ジャック
ブラック・ジャック
本名、間黒男(はざま くろお)。外科手術の天才だが、無免許医のブラック・ジャックだ。全医学界を敵に回すが、富も権力も彼のメスの前にひざまずく。不発弾の爆発による絶望的重傷から救ってくれた本間丈太郎を恩師と仰ぐ。
ピノコ
ピノコ
畸形嚢腫(きけいのうしゅ)として切除され、足りない部分を合成繊維で作って生まれたピノコ。外見は5、6歳だが実年齢は18歳。ブラック・ジャックを愛し、細君顔をして彼の手術などを手伝う、可愛いパートナーだ。
ブラック・クイーン
ブラック・クイーン
女ブラック・ジャックと呼ばれる“メスの女王”が桑田このみだ。恋人のロックにそんな異名をあげつらわれて酒に逃れる。そんな時に恋人ロックが事故で重傷を負う。悩んだこのみは、ブラック・ジャックをたよる。
本間丈太郎
本間丈太郎
ブラック・ジャックの恩人の名外科医だが、自らが“本間血腫”と名づけた病気の治療が人体実験と非難されて引退した。老衰のためB・Jに看取られながら死去する。手塚スター・システムより、猿田が迫真の演技を見せる。
ドクター・キリコ
ドクター・キリコ
軍医時代の凄惨な体験から“安楽死の医師”となったドクター・キリコ。“延命”を、そして“メス”を否定し、ブラック・ジャックと衝突する。ただし、ドクター・キリコが絶命させるのは回復不能の患者だけだ。
琵琶丸(びわまる)
琵琶丸(びわまる)
鍼灸(しんきゅう)師免許を未取得のまま、ハリ治療を行う盲目の放浪者だ。数多くの病人をハリ一本打つだけで完治させる凄まじい腕を持つが、報酬は一切受け取らない。“鳥獣は病気になっても手術をしない”とメスを否定。
ハリ・アドラ
ハリ・アドラ
素手で患者の患部のみを掴み出して治療する超能力者で、透視能力も持っている。ブラック・ジャックが胎児を殺して母体を救おうとするのを神に背くと怒り、彼のメスを念力でねじ曲げて代わるが……。
如月(きさらぎ)めぐみ
如月(きさらぎ)めぐみ
ブラック・ジャックの大学病院医局時代の後輩で、彼を熱愛する。子宮ガンのため卵巣摘出の手術を受けるが、女性らしさを失うことを恐怖する。執刀医を務めるB・Jから手術室で愛の告白を受け、永遠の刻(とき)を胸に秘める。
鉄腕アトム

『鉄腕アトム』人気スター

1951(昭和26)年に『アトム大使』として、光文社の月刊「少年」誌に登場して以来、68(同43)年まで13年に渡って同誌に連載されている。そのため、数多くのバイ・プレイヤーが登場し、手塚治虫のスター・システムに名を連ねている。

アトム
アトム
交通事故で亡くなった天馬博士の息子の飛雄の身代わりとして作られた10万馬力(後に100万馬力)のロボット役を演じ、シリーズで大活躍する。だが『世界を滅ぼす男』などで人間役を演じて好評を得ている。
コバルト
コバルト
アトムの試製として作られ、日本海溝に沈んだ水爆探索のため、行方不明のアトムの“代役”として誕生した。その後、「ミドロが沼」の巻で、力尽きる寸前のアトムを助け、東京を救うため兄弟で大活躍する。
ウラン
ウラン
アトムの妹ロボットで、「ウランちゃん」の巻でコバルトとともに誕生している。勝ち気で負けず嫌い。アトムが意気地なし呼ばわりをされた時は、アトムになりすまして怪物プルートウに挑戦する無謀さも見せる。
アトムの両親
アトムの両親
玉男が両親に甘える姿を、うらやまし気に見るアトムを哀れに思ったお茶の水博士がプレゼントした。母親はお茶の水博士の亡妻そっくりだというが、手塚のキャラクターバンクのミッチイが好演している。
四部垣
四部垣
『アトム大使』で顔出しした後、「フランケンシュタイン」の巻で、アトムの同級生の不良役で再登場。父親はロダンの彫刻や立体テレビの輸入品を購入するほどの資産家で、スカンク草井に狙われている。
プルートウ
プルートウ
「地上最大のロボット」の巻で、元国王のサルタンことチョチ・チョチ・アババ三世が、世界最強のロボットを作れと命じて作られたロボット。100万馬力を誇り、アトムら7人のロボットと闘う闘士だ。両角から放つ破壊電磁波は強力だ。
ゲジヒト
ゲジヒト
プルートウが戦いを挑む7人のロボットの一人で、ドイツのロボット刑事だ。金のように光る特殊合金ゼロニウムの体を持ち、熱線、磁力線をはね返して戦う。プルートウを逮捕しようとドイツのユングブルーメンで対決。
モンブラン
モンブラン
モンブラン山が由来となる名前からわかるとおり、スイスで一番の山案内ロボットだ。10万馬力のアトムより少し力の強い13万5千馬力だったが、100万馬力のプルートウの前に、あっけなく倒される。
ノース2号
ノース2号
プルートウが挑戦する一人が実直な執事として、スコットランド北部の古城で作り主の“ご主人さま”に仕えている。体側から鍵爪、ドリル、鉄槌を持つ6本の腕を出して、プルートウを分解しようとする。
ブランド
ブランド
トルコーのロボット力士としての誇りをかけて、友人のモンブランの復讐を誓いプルートウに戦いを挑む。壮烈な死闘の末プルートウに敗れはしたものの、敵にも大きなダメージを与えている。
エプシロン
エプシロン
保育ロボットとしてオーストラリアの州立保育園に勤める。光を動力源とする光子ロボットで、太陽の下では底無しのパワーを発揮してプルートウを恐れさせたが、正々堂々の勝負の末に敗北している。
ヘラクレス
ヘラクレス
ギリシア神話の英雄から名をもらっているように、世界最強を自負するギリシアのロボット。伸縮自在の槍と暴風を起こす盾を武器にプルートウと戦う。両腕と首を失っても、情けをかけられるのを嫌い死を選ぶ。
電光
電光
新発明のP・H(ペー・ハー)ガラス製のロボットで、ロボット芸術展覧会に出品された。普段は透明で姿が見えないが、偏光を受けると虹のように輝く。幼児のような無垢な心のため、スカンク草井に操られる。
プーク
プーク
戸沢白雲斎の18代目の子孫で、魔法や変身術に憧れていた戸沢博士の息子として作られたロボット。背中のスイッチを押すことで変身する。「十字架島」の巻でアトムに挑戦するが、変身を急ぎすぎて戻らなくなる。
ガロン
ガロン
惑星の改造用ロボットだが、ユラ星王からメガローパ星系総官に送られる途中、誤って地球に落下した。アトムの計算によれば、その力は無限大。天川(あまのがわ)博士の命令で、地球の大気を毒ガスに変え始める。
ロボイド
ロボイド
人間に似た者を意味するアンドロイド。それに対してロボットに似た者を意味するのがロボイドだ。人間が絶滅した星を支配する進化したロボイドが、隊長に率いられて地球人絶滅を計画して地球にやってくる。
どろろ

『どろろ』人気スター

手塚作品には珍しい時代もの、それも中世を舞台にした因果応報ものということで、本人の意欲がかき立てられたと言う。「主人公の二人に自分ながら惚れぬいたのもめったにないこと」とまで記す手塚治虫。二人の主人公、百鬼丸とどろろ、さらに彼らを囲む登場人物を紹介しよう。

百鬼丸(ひゃっきまる)
百鬼丸(ひゃっきまる)
醍醐景光(だいご・かげみつ)と縫の方の間に生まれたが、父・景光と地獄堂の魔像(魔神)との契約によって、目、鼻、耳、両手、両足など48か所の体を奪われている。14歳になった時、奪われた48か所の体を魔神から取り戻すべく旅に出る。
どろろ
どろろ
野盗団の頭目である火袋とお自夜との間に生まれる。放浪の途中で父を、次いで母を失った後も、コソドロをしながら独りたくましく生き抜く。旅をしている百鬼丸と出会い、彼の義手に仕込まれた刀を盗むと宣言してついて歩いている。
醍醐景光(だいごかげみつ)
醍醐景光(だいごかげみつ)
天下を取る力を得るため、地獄堂の48匹の魔像(魔神)に、生まれてくる我が子・百鬼丸の目、耳、口、手などの48か所を分け与えた。後に、朝倉領と富樫領の国境で、富樫領の一の砦を守る侍大将となる。
縫の方(ぬいのかた)
縫の方(ぬいのかた)
醍醐景光の妻。百鬼丸と多宝丸を産む。景光に命じられて川に流さざるを得なかった百鬼丸に、強い負い目を感じている。しかし、母は強し。成長し容貌も変わった百鬼丸を一目で見抜いている。
上人
上人
地獄堂を含む寺を守る僧。景光と地獄堂の魔像(魔神)との密契を覗き見たと思われて、景光に斬り殺される。景光の魔像(魔神)への最初の供物だ。
寿海
寿海
薬草を取りに出かけた時に、川に流されてきた赤子を拾って育てた医師。この赤子が口や耳を使わず話ができることを知り、木と焼き物で精巧な義眼、義手、義足などを作り手術を行って装着している。彼が魔神との対決に旅立つ際に「百鬼丸」と名乗るように言っている。
びわ(琵琶)法師のおっさん
びわ(琵琶)法師のおっさん
百鬼丸の目前で飛ぶ羽虫を真っ二つにして、盲目であっても剣を修める術があることを数える。百鬼丸に迷いが生じた時に現れ行く道を暗示している。
みお
みお
戦場となった村の生き残りの孤児たちの親代わりを務める優しい娘。武士たちの侮辱にもめげない強さは、百鬼丸に初めて人間らしい心を吹き込む。しかし、立ち退き命令に抵抗したため、孤児たちと共に殺される。
万代(ばんだい)
万代(ばんだい)
病床の女長者。村の貧者に施しを与えたり、村の道路や橋を作ったりして人望が厚いが……。
火袋(ひぶくろ)
火袋(ひぶくろ)
戦に巻き込まれ肉親を失ったことから、農民仲間を糾合して領主や武士たちに反抗する。しかし、いつしか野盗団の頭目となるが、襲うのは武家屋敷としているのが彼の矜持だ。イタチの斎吾の裏切りで地位を追われ、親子3人で放浪者となる。その最期で、路上で侍たちと死闘を演じている。民衆蜂起の軍資金として奪った宝を隠したが、その秘密は子のどろろに託されている。
お自夜
お自夜
火袋の妻で、その子・どろろを産む。火袋と共に野盗として活動している。夫の火袋を失った後、放浪しながらどろろを育てていく。食器がないため熱い慈善ガユを両手で受けて幼いどろろに食べさせている。吹雪の中で寒さからどろろを守って凍死している。
イタチの斎吾
イタチの斎吾
火袋の配下の野盗の一人だが、代官と組んで火袋を陥れ、その頭目となる。火袋が埋宝の秘密をどろろの背中のイレズミに託していることを知り、どろろを探し回わる。しかし、最期にはどろろを助け命を捨てている。
代官
代官
イタチの斎吾に命じて、赤ん坊だったどろろを人質として火袋に仲間になれと強要する。それがいれられないと火袋親子3人の斬殺を命じるが、どろろが盗み出した牢の鍵で脱出した火袋によって、屋敷を破壊させられて死んでいる。
田之介
田之介
足軽に取り立てられたが、砦のやぐらの秘密を守るために大工たちの皆殺しを命じられる。斬殺に用いられた刀の「似蛭(にひる)」を拝領するも、多くの血を吸った刀は妖刀となって、彼に辻斬りを強いる。
お須志
お須志
田之介の妹。百鬼丸が初めて肉眼で見た美しい娘だ。田之介の持つ刀「似蛭」を拾ったどろろに斬られた父のために、血止め薬をもらいに居酒屋に行き兄と再会した。兄を斬った百鬼丸を怨む。
醍醐多宝丸(だいごたほうまる)
醍醐多宝丸(だいごたほうまる)
百鬼丸の弟として生まれる。父の醍醐景光に後継者として期待を託されていたが、「ばんもんの巻」で、兄である百鬼丸と生死を賭けて戦って斬り死にする。
助六
助六
朝倉と富樫の争いで国境に建てられた板塀(ばんもん)によって、両親と生き別れになった少年。野狐に襲われるため、橋に吊るした俵の中に入りミノムシのように寝ている。富樫の領民の拷問に遭ったどろろを助け、心を通わす。両親に会いに「ばんもん」を突破しようとして捕まり、弓矢で射殺される。
慈照尼(じしょうに)
慈照尼(じしょうに)
捨て子を拾って50人もの子を育てている住職。何者かに点けられた寺の火災により、子供とともに焼死している。
鯖目(さばめ)
鯖目(さばめ)
三本杉の郷士。妻で妖怪の「マイマイオンバ」に操られているため、死んだ魚のような目をしている。
しらぬい
しらぬい
鮫の二郎丸、三郎丸を飼っている少年。どろろの背中のイレズミに記される「白骨岬」へ向かう海で、二郎丸、三郎丸に人を襲わせている。百鬼丸に二郎丸を斬り殺され、人間ザメの腕を見せてやると百鬼丸に斬りかかるも返り討ちとなる。しらぬいの希望で、二郎丸の死骸に結ばれて海に流される。
真久和忠兵衛(まくわちゅうべえ)
真久和忠兵衛(まくわちゅうべえ)
白骨岬辺りを支配する代官。火袋の埋宝を横取りしようと、イタチの斎吾らを大軍で攻める。
お館
お館
朝倉勢の一武将で、醍醐景光勢と火打ち谷などで戦う。部下の陰口で出世したのは軍馬のミドロ号の恩と言われ、ミドロ号から子馬を取り上げるなどきつく当たる。醍醐勢との死闘の際にミドロ号に踏み殺される。
賽の目の三郎太(さいのめのさぶろうた)
賽の目の三郎太(さいのめのさぶろうた)
仕官先を探している浪人。妖怪となったミドロ号を拾ったものの、逆に操られてしまう。火打ち谷で百鬼丸と戦うが、ミドロ号が焼殺されたため気を失っている。
どんぶり長者
どんぶり長者
醍醐景光の領内の町の長者。戦が続き年貢を取り立てられ粟(あわ)と稗(ひえ)で暮らす民を尻目に、秘密の地下室で人目を盗んで暴食しているが……。
お米
お米
どんぶり長者の一人娘。秘密の地下室に人を寄せ付けぬように化け物に扮して人を脅かしている。人は馬鹿にしていたが、実は知恵を持つ娘だった。
ギンバ
ギンバ
どんぶり長者に仕える、フランケンシュタインの怪物のような怪力の大男。
アドルフに告ぐ

『アドルフに告ぐ』人気スター

三人のアドルフと呼ばれた男達の物語が、昭和の歴史の中で描かれていく。現代史を背景にしたリアルな物語だけに、手塚のスター・システムの役者達の出番は少ない。その中で光っているのが、アセチレン・ランプとハム・エッグの熱演だ。アセチレン・ランプはゲシュタポの幹部スパイ、ハム・エッグは特高の刑事・赤羽警部を演じている。

アドルフ・ヒットラー
アドルフ・ヒットラー
若い頃は貧しく、画家あるいは建築家を志望していた。後にユダヤ人絶滅を推進するナチス・ドイツ総統となる。「誰一人信じず 誰にも頼れない 途方もなく孤独な男」として描かれる。極度に情緒不安定型でもある。
アドルフ・カウフマン
アドルフ・カウフマン
ドイツの外交官の息子で、神戸の高級住宅地に住む。母は日本人の由季江。少年時代にユダヤ人のアドルフ・カミルと親友となるが、父によりAHS(アドルフ・ヒットラー・シューレ)に入学させられ思想を矯正、ユダヤ人を迫害・虐殺するようになる。
アドルフ・カミル
アドルフ・カミル
神戸でパン屋を営むユダヤ人夫婦の間に生まれる。カウフマン少年をいじめから助けて親友となり、「ヒットラーはユダヤ人」という途方もない秘密を共有する。‘73年、パレスチナ難民キャンプにいたカウフマンと決闘する。
エヴァ・ブラウン
エヴァ・ブラウン
アドルフ・ヒットラーの愛人だったが、死の2日前に正式の妻となっている。ベルリン陥落の際、ヒットラーに渡された青酸カリを飲み自殺する。彼にユダヤの血が流れていることを知る一人だった。
ラムゼイ(ゾルゲ)
ラムゼイ(ゾルゲ)
フランクフルター・ツァイツング独紙の特派記者として来日した。多数の別名を使い分けるが、本名はリヒャルト・ゾルゲ。ドイツ人だがソ連の一級スパイとして、東京で諜報活動を展開。本多芳男からヒットラーの秘密を記した文書を受け取る寸前に逮捕される。
本多芳男
本多芳男
憲兵隊の実力者・本多大佐が期待をかける息子だが、小学生の時に見たハルピンでの日本兵の暴虐ぶりに反軍思想を抱く。予科士官学校不合格後、ラムゼイの組織に加わり、父からヒットラーの秘密情報を盗む。
小城典子
小城典子
小学校教師で反戦詩人でもある。アドルフ・カミルを励ましている。教え子の一人である峠勲が死の直前にドイツから送った独裁者アドルフの出生の秘密を記した文書を受け取り事件に巻き込まれ、特高警察の拷問を受ける。
峠 勲(とうげ いさお)
峠 勲(とうげ いさお)
協合通信の記者・峠草平の弟。ベルリン大学の留学生で共産主義活動家。独裁者アドルフの出生の秘密を著した極秘文書を日本の小城典子に送る。その後、謎の文字「R,W」を残して刺殺されている。
リンダ・ウェーバー(本名はローザ・ランプでアセチレンの娘)
リンダ・ウェーバー(本名はローザ・ランプでアセチレンの娘)
峠勲と同じゼミに通い、勲を愛すようになる。彼女自身はBDM(ドイツ女子青年団)のナチス信奉者のため、彼との思想対立に悩み、コミュニストの勲を密告。彼の殺害の因を作る。
アセチレン・ランプ
アセチレン・ランプ
ゲシュタポの幹部スパイで、日独二国を股にかけて、独裁者アドルフの出生の秘密を著す文書と峠草平を追う。ベルリン陥落の日に、ドイツの最高権力者をユダヤ人として粛清する非情の男だ。
峠 草平
峠 草平
勲の兄で協合通信の記者。日本で独裁者アドルフの出生を著した秘密文書を入手したが、特高警察の刑事・赤羽警部の圧力で失職し貧困のどん底に陥る。後にノンフィクション『アドルフに告ぐ』を執筆する。
由季江・カウフマン(のちに峠 由季江)
由季江・カウフマン(のちに峠 由季江)
ドイツ総領事館の外交官カウフマン夫人で、アドルフの母。夫の死後、ドイツ料理店ズッペを開店する。草平と再婚したことから国籍をドイツから日本に戻している。空襲により頭蓋骨折、草平の娘を産んで死去する。
赤羽
赤羽
特別高等警察の鬼刑事。アドルフの出生の秘密が著された文書を狙って、峠草平を追い回す。執拗で卑劣な男として、手塚のスター・システムよりハム・エッグが出演している。
火の鳥

『火の鳥』人気スター(黎明編より)

手塚治虫が自らライフワークと認めた作品だ。「漫画少年」、「COM」、「マンガ少年」、「野性時代」と掲載誌を変えて、長きに渡り描き継がれている。時空を超えて生と死を見つめる火の鳥。彼女が見た黎明編の登場人物を紹介しよう。

火の鳥
火の鳥
西欧では不死鳥=フェニックス、東洋では火焔鳥、鳳凰とも呼ばれている。人類のみならず地球の歴史を見守り続ける不死の鳥で、その血を飲んだ者もまた永遠の生命を得るといわれ、多くの人間達がそれを求めて争う。
ウラジ
ウラジ
クマソの勇士でナギの兄。死病で苦しむ妻ヒナクを救おうと、その血を飲めば永遠の生命が得られるという火の鳥を捕えに火の山に登る。彼の矢は見事に火の鳥を射抜くが斃れない。ならばと素手で捕えて焼け死んでしまう。
イザ・ナギ
イザ・ナギ
クマソの少年で、ウラジとヒナク夫妻の弟。ヤマタイ国の女王ヒミコの軍によってクマソの村が全滅させられた時、隊長の猿田彦に助けられ、恩讐を越えて武芸を鍛えられる。後に、侵略者高天原(たかまがはら)族との戦さの先頭に立つ。
猿田彦
猿田彦
ヤマタイ国の女王ヒミコの命令でクマソを侵略した防人(さきもり)の隊長。赤ん坊に至るまでクマソの村人を虐殺したが、なぜかナギを助け連れ帰って武芸の腕を鍛える。高天原族との戦いで命を落とす。
グズリ
グズリ
異国の医師でクマソの国に漂着した。異邦人は殺されるというクマソの掟にもかかわらず、ヒナクの死病を治したことから許された。後に未亡人となったヒナクの夫となり、クマソの一族に迎えられている。
ヒナク
ヒナク
クマソの国きっての弓の使い手ウラジの妻。瀕死の床に伏していたが、グズリの治療によって命を救われる。その感謝からかグズリの妻となっている。ヒミコ軍の虐殺から逃れ、グズリとともに地中に閉じ込められたが、子を産み新生クマソの母となる。
タケル
タケル
火の山の怒りを受けて地中に閉じ込められたグズリとヒナク夫妻の息子。兄弟姉妹の近親婚を避け、外界から女を連れてこようと必死で崖を登り、広大な世界に一歩を印している。
ヒミコ
ヒミコ
巫女として呪術でヤマタイ国を治める女王。己の美貌を呪術的権威のよりどころとしていたこともあり、老いによる容姿の衰えを恐怖して、火の鳥の血を得るため猿田彦にクマソ侵略を命じている。
ニニギ
ニニギ
大陸から日本列島に渡来した騎馬民族の高天原族の長で、非情な侵略者の顔をのぞかせる。それまで馬のいなかった日本。騎馬軍団を率いて、たちまちのうちにマツロ、ヨマ諸国を滅亡させ、ヤマタイ国を侵略する。
ナガトコ
ナガトコ
ヒミコの亀甲占いによって両親が死刑にされたヤマタイ国の少年。同じようにヒミコに怨みを持つナギに誘われ、ヒミコを狙い復讐しようと、その隙をうかがっている。
スサノオ
スサノオ
ヒミコの弟で、姉の呪術による政治を強く批判し、その暴走をいさめる。しかし、ヒミコは聞く耳を持たず、スサノオを国外に追放している。
ウズメ
ウズメ
ニニギの騎馬軍団の陣中で、ともに捕虜の身である猿田彦と結婚する。世の中で最も醜い夫婦と嘲笑されても気にすることもない。天の岩戸神話で、裸で舞った天鈿女命(アメノウズメノミコト)に由来するネーミングだ。
『三つ目がとおる

『三つ目がとおる』人気スター

主人公の名が写楽保介、サブで語り手の名は和登千代子、通称和登サンとくれば、シャーロック・ホームズ、ワトソン博士のコンビが思い浮かぶ。かつての手塚の探偵漫画『スリル博士』が想像される設定だったが、読み切りから連載に移るとオカルティックなムードが支配的となっていく。

写楽保介(しゃらく ほうすけ)
写楽保介(しゃらく ほうすけ)
第三の目を持ち、恐るべき知能と超能力で、悪魔のような企みを謀る少年。3万~4500年前頃に栄えた現生人類とは異種の“三つ目族”の生き残りだが、三つ目が隠された時は幼稚園児並みの天真爛漫さを見せる中学生だ。
和登千代子(わと ちよこ)
和登千代子(わと ちよこ)
浄楽寺の一人娘で、父により空手、合気道、薙刀、長唄、読経の修行を命じられたスーパー・ガールだ。シャーロック・ホームズには相棒ワトソンがいるが、写楽保介には和登サンがおり、写楽を守っている。
犬持(けんもち)博士
犬持(けんもち)博士
嵐の夜に剣持医院を訪れた三つ目の婦人に保介を託された医師。“三つ目”になった時の保介の能力を恐れ封印するのに躍起となる。“三つ目”は眼球ではなく脳髄の一部で、特別な感覚器だと考えている。
ケツアル
ケツアル
メキシコ・インディオの一部に伝わるナワトル語で“蛇”を意味する名を持つ殺し屋。メキシコのティオティワカン大遺跡にある“日のピラミッド”で、写楽の超能力に狙撃銃で対決し、三つ目を撃ち抜く!?
ゴブリン男爵
ゴブリン男爵
三つ目の痕跡を持ち、写楽を琵琶湖底に隠された祖先の秘宝探しに利用しようとした。「三つ目族の血を引く唯一の貴族の家柄で 写楽の母はきょうだい 赤ん坊だった写楽を連れて私から離れた」と語る。
三つ目犬ホクサイ
三つ目犬ホクサイ
バンソウコウをとった写楽によって三つ目に改造された子犬。しかし、命令に従わず、そのオーラは写楽を負かすほど強力だ。手にあまる三つ目犬の怒りを鎮めたのは母犬。それを見た写楽は母を思う。
須武田博士
須武田博士
三つ目時の写楽の“力”を研究に利用して、超古代の謎を解明しようとする考古学者だ。犬持博士の友人で、バンソウコウを三つ目に貼って写楽の“力”を封印しようとする犬持博士と何度も対立する。
須武田行佐(すぶた ぎょうざ)
須武田行佐(すぶた ぎょうざ)
動物学者で、写楽を超古代文明の謎解きに利用しようとしている須武田博士の甥にあたる。モアを調査するが、写楽につきまとう“謎の双子”とも接触するなど、その行動には不可解さがつきまとっている。
上底(あげぞこ)
上底(あげぞこ)
写楽、和登サンが通う大穴中学の特別教師として赴任する。写楽の教室で理不尽な暴力教育を行い、抗議する和登サンに平手打ちを加える。背後には強力な全ピキ連(全女性ピンカラキリマデ連盟)がおり、彼女をバックアップしている。
ブラック・ホーン博士
ブラック・ホーン博士
大穴中学の特別教師の上底の夫で、ナバホ・インディアン(北米先住民族)の考古学者だ。祖先の文明が壮大な遺跡を残したことを誇り、ナバホの聖地グリーブの秘密解明に、写楽の“力”を利用しようとする。
千代子の父
千代子の父
浄楽寺の住職で、千代子を寺の跡継ぎにしようと猛修行を課している。また、千代子の写楽への接近を案じて、強引なまでに彼から遠ざけようとする。修行の厳しさも、その一環かもしれない。
雲名(うんめい)警部
雲名(うんめい)警部
警視庁の警部で、自ら“捜査学の学聖”と称している。楽聖と呼ばれたベートーベン似の容貌を持つことから、交響曲第五番=運命(ウンメイ)を連想して命名された。写楽と遠洋を航海したこともある(「イースター島編」)
陽だまりの樹

『陽だまりの樹』人気スター

「その年 手塚良仙は 九州の地で赤痢に罹(かか)り 大阪の病院へ送られて死んだ 行年五十一歳であった 私 手塚治虫は 彼の三代目の子孫にあたる」
『陽だまりの樹』のラストに記したナレーションで、手塚治虫は、主人公の一人・手塚良仙が曽祖父であることを明かしている。幕末に活躍した歴史上の人物が数多く登場するドラマで、手塚のスター・システムの名優達は残念ながら登場していない。

手塚良庵(てづか りょうあん)
手塚良庵(てづか りょうあん)
江戸は三百坂の蘭方医・手塚良仙の長男。ひょうきん者で遊び人としての性格は父親譲りだが、人一倍の侠気(おとこぎ)もある。父の死後その名を襲名し、三代目手塚良仙を名乗る。善福寺住職の娘おせきをめぐり、万二郎と恋の鞘当てに火花を散らした。
伊武谷万二郎(いぶや まんじろう)
伊武谷万二郎(いぶや まんじろう)
府中藩士で江戸詰めの十五俵二人扶持(ぶち)の軽輩だが、一徹者で古風な熱血武士だ。後に幕命でアメリカ使節ハリスの警護役、さらに陸軍歩兵組を組織して隊長となった。左遷の憂き目にあっても幕府を支える硬骨漢だ。
おせき
おせき
江戸は元麻布の善福寺住職・旦海貞徴(たんかいていちょう)の娘で、万二郎と良庵のマドンナ。寺がハリスの公邸となったため、ヒュースケンに強姦されて尼寺に入る。国難にあって死ぬ人達のため、仏の慈悲を祈っている。
伊武谷千三郎
伊武谷千三郎
万二郎の父で、彼の頑固一徹はこの父譲りだ。真忠組の首領・楠音次郎に襲われた良仙(父)を救おうとして命を落とす。優秀ではあるが要領が悪いところがあって、終生軽輩の身に甘んじた。
手塚良仙(りょうせん)
手塚良仙(りょうせん)
良庵の父。江戸での種痘所開設に尽力するなど、蘭方医としての情熱を持つ。それだけに漢方医との軋轢(あつれき)も激しく、暗殺者に命を狙われる。卒中で倒れ、痴呆状態となって死去。色好みで、妻お中を泣かせた。
おつね
おつね
良庵の妻で、遊蕩(ゆうとう)好きの夫にやきもちを焼いている。遠縁の娘で親の段取りで見合いしたが、それ以前に互いの素性も知らぬままに深い仲になっていた。良庵との間に太郎とその弟の二人の子に恵まれている。
綾
万二郎の父を斬った楠音次郎の妹。兄の意を受け、幕軍を密偵した際に万二郎と知り合う。その後捕らえられて拷問を受け、それがもとで兄の仇・万二郎を襲った際に意識を失う。万二郎邸で介抱されるうちに二人は心を通じ合い祝言を上げる。
緒方洪庵(おがた こうあん)
緒方洪庵(おがた こうあん)
大坂で適塾を主催し、広く蘭学・洋学を教える。門下からは、福沢諭吉のほか、橋本左内、大村益次郎らを輩出している。良庵もその一人。後に良仙(父)らに請われて、江戸で西洋医学所頭取、奥医師を兼務する。
多紀誠斎(たき せいさい)
多紀誠斎(たき せいさい)
江戸城奥医師で、考証学派中の政治的ボス。蘭方医を憎み、良仙(父)らの種痘所設立の妨害を計る。良庵に怒鳴られ、万二郎には殴られている。蘭方の医術を憎みながら。コロリに罹患して死去する。
伊東玄朴(げんぼく)
伊東玄朴(げんぼく)
金に細かい江戸の蘭方医だが、良仙(父)らの種痘所開設には消極的だった。打算的にも見えた玄朴だったが、江戸城中では漢方医への積年の思いを爆発させ、命懸けで種痘所開設を訴える。好物は菓子のマコロン。
平助
平助
サムライになりたがる猟師で、獣相手に戦った殺気が凄まじい剣の閃(ひらめ)きとなる。万二郎に惚れ込んで“押しかけ家来”となり、以後長く彼のため尽力する。一撃の後の技がないため、丑久保陶兵衛との戦いで右手を失う。
ブッダ

『ブッダ』人気スター

「世界の王」となることを予言された王子シッダルタだが、人々の苦しみを救うため王位を捨て修行の旅に出る。仏典を読み込んだうえで描かれた手塚流釈尊伝には、原典にはないオリジナルキャラクターも登場。盗賊から王族、宇宙神まで、様々なキャラクターが、悟りを開くまでのシッダルタの道のりを彩っている。

シッダルタ(後にブッダ)
シッダルタ(後にブッダ)
スッドーダナ王とマーヤ王妃の第一子。産みの母マーヤは「目的を遂げる」という意味のシッダルタと命名した。聖者アシタによって「世界の王」になるとし、さらに「何万年かに一度の偉大な人間」になると予言した。
アシタ
アシタ
スッドーダナ王が最高の礼を持って迎えた聖者で、インドラ神とバラモン神の祝福をたずさえて、王城に生まれた偉大な子を訪ねた。ヒマラヤの麓に住み、神通力をよくし、ナラダッタの師でもある。
ナラダッタ
ナラダッタ
アシタの弟子の青年僧。師の命で「世界の王」たるべき人を探す旅に出ている。だが人命のために多くの動物を死なせた罪を犯し、師の怒りと裁きで生きながら畜生道に落ちている。
スッドーダナ王
スッドーダナ王
シャカ族の長でカピラバストウの国王で、王妃マーヤとの間にシッダルタ(ブッダ)をもうける。小国故に大国コーサラの侵略に脅え、ついにはパセーナディ王に国を占領されてしまう。若き王子に期待していた。
王妃マーヤ
王妃マーヤ
シッダルタの生母で、「坊やはきっとすばらしい人になりますわ 世界じゅうでいちばん偉大な魂をもった人に…」と言い残して亡くなる。シッダルタの育つ姿も見ずに死んだマーヤを、スッドーダナ王は悲しみの涙で送る。
王妃パジャーパティ
王妃パジャーパティ
スッドーダナ王の後妻で、シッダルタは母と呼んで育つ。彼女もまた、実子と変わらぬ愛でシッダルタを育む。パセーナディ王に国を占領されてからは、夫の一族とともにコーサラ国に捕らわれの身となる。
ヤショダラ
ヤショダラ
遠縁の美少女で、シッダルタと見合いをして結婚、妃(きさき)となる。雷雨の夜にラーフラを産むが、シッダルタの出家を止めることはかなわなかった。その後、シャカ一族とともにコーサラ国の虜囚となり辛酸をなめる。
ラーフラ
ラーフラ
王子シッダルタとその妃ヤショダラの間に生まれた息子。父が出家を決意した時期に誕生したため、障碍(しょうげ、悟りを妨げるもの)を意味するラーフラと名づけられた。ブッダとなったシッダルタの説法中に父子の再会を果たす。
タッタ
タッタ
心を乗り移らせて動物を自在に操ることができる超能力を持つ少年。カピラバストゥの奴隷よりも下の階級のバリアの子として生まれる。コーサラ兵に肉親を殺され、コーサラ国を憎み続ける。長じて盗賊の頭となって暴れ回る。
ミゲーラ
ミゲーラ
スードラ(奴隷階級)の娘で、シッダルタ王子を狙う盗賊達の若き女首領だった。しかし、シッダルタに会うや一目惚れ。彼もまた彼女を恋するようになる。追放の後はタッタの妻となり、盗賊団と行動をともにする。
ダイバダッタ
ダイバダッタ
バンダカの息子だが、彼の出生前に実父は亡くなっている。幼い頃に4人の友を殺して死刑を宣告されるが、狼に助けられてその家族となる。母と兄の狼を殺されてからはナラダッタの元で暮らし人里に戻るが、野心満々の性格は変わらず、ブッダを憎む。
ブラフマン
ブラフマン
宇宙の根本神で梵天(ぼんてん)と呼ばれる存在。シッダルタを悟りに導き、ブッダとなる道を示す。老バラモン僧に扮して現れ、以後、四門出遊(しもんしゅつゆう)(東西南北の門外で人々の苦しみを目にし出家を決意)、悟りの時、入滅と、ブッダの生涯の節目に登場している。
アッサジ
アッサジ
出家を決意し修行の旅に出たシッダルタが、立ち寄った家で押し付けられたのがアッサジだ。熱病で死にかけた時に予知能力を得る。シッダルタの修行を支えた愛らしいお供を『三つ目がとおる』の写楽保介が好演。最期は、自らの予知通り獣にその身を与えて壮絶な死を遂げる。

文・綿引勝美

1946年、東京都出身。大学時代に漫画研究会で委員長・対外交渉員として活動。1968年12月「全国学生漫画連盟」(学漫)主催のプロ漫画家との交流会において、〈少年漫画の部〉の幹事を務め、手塚治虫先生と出会う。翌年、秋田書店に入社。入社後初めての仕事として、贈呈本を富士見台駅前の「手塚プロダクション」に運ぶ際に、手塚治虫先生と遭遇。「これからご苦労されますよ」との言葉を頂く。「まんが王」「少年チャンピオン」「プレイコミック」の各編集部に在籍した後独立し、編集プロダクション・メモリーバンクを興す。半世紀に及ぶマンガ編集の経験を生かし、マンガの研究・執筆活動を続けている。
手塚治虫先生との仕事に、
◎小学館のコロタン文庫(66)『手塚治虫全(オール)百科 少年少女まんが編』(小学館)
◎小学館ビッグコロタン『鉄腕アトム ロボットサイエンス』(小学館)
◎シリーズ・昭和の名作マンガ『ボクのまんが記』(朝日新聞出版)
などがある。

今冬『手塚治虫 映画手法のマンガ的表現を学ぶ』(玄光社)、『手塚治虫シェイクスピア漫画館』(実業之日本社)を刊行予定。

文・綿引勝美

1946年、東京都出身。大学時代に漫画研究会で委員長・対外交渉員として活動。1968年12月「全国学生漫画連盟」(学漫)主催のプロ漫画家との交流会において、〈少年漫画の部〉の幹事を務め、手塚治虫先生と出会う。翌年、秋田書店に入社。入社後初めての仕事として、贈呈本を富士見台駅前の「手塚プロダクション」に運ぶ際に、手塚治虫先生と遭遇。「これからご苦労されますよ」との言葉を頂く。「まんが王」「少年チャンピオン」「プレイコミック」の各編集部に在籍した後独立し、編集プロダクション・メモリーバンクを興す。半世紀に及ぶマンガ編集の経験を生かし、マンガの研究・執筆活動を続けている。
手塚治虫先生との仕事に、
◎小学館のコロタン文庫(66)『手塚治虫全(オール)百科 少年少女まんが編』(小学館)
◎小学館ビッグコロタン『鉄腕アトム ロボットサイエンス』(小学館)
◎シリーズ・昭和の名作マンガ『ボクのまんが記』(朝日新聞出版)
などがある。

今冬『手塚治虫 映画手法のマンガ的表現を学ぶ』(玄光社)、『手塚治虫シェイクスピア漫画館』(実業之日本社)を刊行予定。

©Tezuka Productions

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