<あらすじ>ごく普通の高校生・新一は、ある晩部屋で、ヘビのような生物を発見する。叩き潰そうとしたその生物は、新一の右手に侵入してきた。その生物の正体は、他の動物の頭に寄生して神経を支配する寄生生物だった…! 寄生に失敗し、新一の右手に寄生したミギーと新一の奇妙な生活が始まる。やがて二人は、お互いの命を守るため、人間を食べる他の寄生生物と戦い始める…。全人類必読! 未来への警鐘の書が登場!!
<書店員のおすすめコメント>読者にこれほどまでに大きな衝撃を与え強烈な印象を残した作品は、なかなかないのではないでしょうか。後出の関連書籍の壮そうたる顔ぶれが、この作品の影響力の大きさを何よりも明確に物語っています。私も初めて手に取ったときは、ただただ気持ち悪い怪物が人々を襲いまくるパニックホラー作品だと思っていたのですが、読み進むうちにこれは何か違うぞ…! と鮮烈な印象を受けたのをよく覚えています。作中の怪物である「寄生生物」たちは高い知能を持っていて、さらには主人公のミギーをはじめ「寄生生物」ならではの思想を持ち始める者が現れます。彼らの立場で語られる言葉や価値観が、人間目線でのものの考え方を根底から揺さぶってくるように感じました。個人的にパニックホラーが大好きなのですが、普通は、コミュニケーション不能なわけわからないものが「敵」です。一方でこの『寄生獣』で描かれているのは「生物学的な天敵と意思疎通しつつ互いの生存のために戦う」という異常な事態です。連載当時は「エコブーム」で「地球を大事に」というフレーズがそこかしこで飛び交っていました。しかし、もしこんな恐ろしいものがほんとに存在したら、私たちは彼らを「愛すべき地球の仲間」と呼ぶことができるでしょうか? そんな問いかけもまた、本作が「哲学的作品」と呼ばれ同ジャンル作品とは一線を画する白眉たる所以だと思います。岩明作品には、この「生存競争」というテーマが通奏低音として流れている…そんな解釈でほかの作品も読んでみるとまたおもしろいかもしれません。また、岩明先生というと「抜群の構成力」と評されるのをよく見かけますが、本作もまた「全10巻に過不足なくすべて集約されている!」と誰もが読後に感嘆することと思います。正直かなり凄惨なシーンが随所に出てきますので、おいそれとおススメしにくい作品ではありますが、やっぱり漫画界の最高傑作のひとつと言わずにはいられない大傑作です。
<あらすじ>舞台は紀元前。奴隷の身分にありながら、豊かな教養と観察眼、判断力、そしてそれらを駆使して行動を起こす度胸を兼ね備えた、不思議な青年・エウメネスがいた。あの偉大なる哲学者・アリストテレスの逃亡を助けたりしながら、彼が目指していたのは、「故郷」と呼ぶカルディアの街……。のちにアレキサンダー大王の書記官となるエウメネスの、波乱に満ちた生涯を描いた歴史大作!
<書店員のおすすめコメント>哲学者アリストテレスやアレキサンダー大王など、多くの歴史上の偉人たちが活躍した時代を、エウメネスという無名の文官の目を通して描きます。エウメネスはじめ、登場人物たちの言動や立ち振る舞いは、きわめて現代風で、実に「今」っぽく味付けされたキャラクターになっているのですが、なぜかストーリーと妙にハマっていて異常なほどリアリティを感じます。もともとは裕福な環境で育ったエウメネスですが、ある事件を境に一転、奴隷の身に落とされてしまいます。幼いころに憧れていた神話の英雄オデュッセウスのように、エウメネスは持ち前の知恵と機転でピンチを切り抜けていきます。このヒーロー像は『寄生獣』のミギーと大いに重なるところがありますね! やがてマケドニア王フィリッポスと出会い、才能を見出されたエウメネスは、いよいよ大きな舞台へと上がっていきます。深層心理や戦略的な駆け引きを描くのが天才的にうまい作家さんが、歴史大河を描いたらいったいどんな大作になるのか。すでにめちゃくちゃ面白いのですが、今後がますます楽しみ、そしてちゃんと完結するのか心配です…!! 2年に一巻ぐらいの刊行ペースですので、11巻は年内(2018年)にでたらラッキーでしょうか。早く続きが読みたい!
<あらすじ>紀元前二百余年、天才数学者が超大国・ローマ軍を震撼させた巨大軍事プロジェクトとは!? 古代シチリアを舞台に、一大歴史ロマンが幕あける──!
<書店員のおすすめコメント>紀元前200年頃のローマによるシラクサ包囲戦という、古代シチリアの歴史の一幕を全一巻というボリュームで綴った作品です。史実をベースに伝説的な逸話も脚色して加えられたのだと思いますが、登場する「アルキメデスの機械」だけテンションが異なっています。植民都市シラクサに攻め込んでくるローマ軍を圧倒する防御兵器の数々。巨大な落石器、戦艦を吊り上げる巨大クレーン、巨大な刃を回転させる切断マシーン、そして「エウリュアロスの車輪」と呼ばれる投石器。これは蒸気機関を利用した投石器らしいのですが、描かれている破壊力はすさまじく、人間がまるで豆腐のように砲弾に削られていきます。岩明先生らしい恐ろしい戦闘描写が満載の一冊です。
<あらすじ>ちょっとした超能力が使えるのが取り柄の南丸こと、ナン丸はある日、知り合いでもない民俗学の教授・丸神から呼び出しを受けた。だが丸神は調査のため「丸神の里」へ行ったきりで戻っておらず、残された研究生からは「教授とナン丸は、同じルーツを持つらしい」と告げられ、心当たりを尋ねられた。だが何も知らない――。いっぽう「丸神の里」東北の丸川町では、殺害方法のわからない猟奇事件が起きた。失踪した丸神教授の研究内容と足取りを追って、丸神ゼミとナン丸は「丸神の里へ」おもむくが…。
<書店員のおすすめコメント>謎解きをはらんだ民俗学的ロマンに、超能力、グロめのクリーチャーと、岩明先生らしさがたっぷり詰まった作品です。大学生の南丸は、あらゆるものに小さな「穴をあける」という、すごいのかすごくないのかよく分からない超能力を持っていた。しかし、この能力は東北のとある町で起こった猟奇事件と大きな関係が!? 因果にいざなわれ訪れた東北の町で、南丸の運命は大きく変わり始め…。壮大な秘密がいくつも配置されていますが、明らかになるまでの過程が綿密に構成されています。最終巻のカタルシスはすさまじい…! 「あの先」の様子は最後まで描かれませんでしたが、一体どうなっているのでしょう。興味はつきません。実は『寄生獣』と同様、読む前と後でタイトルの持つ意味合いが変わってくる作品です。謎解きをどうぞお楽しみください!
<あらすじ>大学で見かけた女の眼差しにただならぬものを感じた満(みつる)は、その正体を知ろうと彼女に近づく。(「骨の音」より)6年前に“自殺の名所”といわれる断崖で出会った変わり者の少女。彼女に命を助けられたサラリーマンの田村(たむら)。ふたりは都会のビルの屋上で再会する。(「ゴミの海」より)寄生獣への源流!!表題作「骨の音」、ちばてつや賞入選のデビュー作「ゴミの海」など、6作品を収めた岩明均初期短編集!
<書店員のおすすめコメント>全体にうっすら漂う狂気──デビュー作『ゴミの海』ほか全6作品を収録した岩明先生の初期短編集です。当初から「血」や「死」を匂わせるシーンが随所にあって、現在に連なるものを感じさせられます。登場人物たちが淡々としつつどこか壊れた一面を抱えていて、次の瞬間に何が起こるか予想がつかないハラハラ感に終始つきまとわれる印象です。異彩を放つのが「和田山」。ギャグとホラーを同居させた作品で、実験的な試みだったのだろうかと、読者としての想像が膨らみます。さらに巻末には、ご自身のアシスタント時代を描いた書き下ろしが収録されています。これは貴重!