<あらすじ>1966年初夏、横須賀から地方の高校へ転入した薫。幼い頃から転校の繰り返しで、薫にとって学校は苦しいだけの場所になっていた。ところが転入初日、とんでもない男と出会い、薫の高校生活が意外な方向へ変わり始め…!? 眩しくてほろ苦い、直球青春物語!!
<書店員のおすすめコメント>友情、初恋、将来への不安……眩しい青春の1ページが詰まった『坂道のアポロン』を読むと、懐かしさと清々しさで胸がいっぱいになります。年を経て失くしたなにかが、漫画の中でキラキラキラキラ輝きまくっていて、目が眩むような感覚を覚えるほどです。ほんとにほんとに素晴らしい作品で、2009「このマンガがすごい!」オンナ編第1位、第57回小学館漫画賞一般向け部門受賞、と各漫画賞もばっちりゲット済み。
作者の小玉ユキさんは『坂道のアポロン』で「理想の男の友情」を描いたといっています。転校生で周囲に心を閉ざしがちだった薫が、不良として恐れられるクラスメイト・千太郎と出会い、そしてジャズと出会い、変わっていきます。
はじめは千太郎に助けられるようなかたちだった薫が、もともと持っていた芯の強さが表に現れるようになり、本音でぶつかりあえる関係になっていきます。いつも豪気な千にも、やがてピンチは訪れるのですが、その時は薫が支えになったり…。余計なことは言わず、互いが互いの救いとなる二人の関係が本当にかっこいいですね! まさに「理想の男の友情」といえるものがここに描かれていると思いました。
このキャラクターたちがなんでこんなに魅力的なのか、あらためて考えてみたのですが、どのキャラも等身大でありながら、あと一歩の勇気を持って踏み込んでいく姿が描かれているところかなーと、そんな気がしました。例えば自分の記憶にある「あの時」を物語に重ね合わせ、もう一歩踏み込んでいたらそのあとどうなったんだろうとか、そんなことをふと想像してしまうんですね。『坂道のアポロン』を読んでいると、存在していたかもしれないもうひとつの未来を見させてくれているような、そんな気持ちになることが多いんです。きっと私だけではないはずだ…。女性誌での連載にも関わらず男性読者からも多くの支持を得ているのは、こういったところに理由があるんじゃないでしょうか。
青春群像劇というジャンルで、ここまで「読んでよかった!」と心の底から思える作品は、映画も小説も含めて私は他に知りません。この機会にまた読み返しましたが、今また素晴らしい余韻に浸っております。繰り返して読みたい漫画ってそうそう出会えないですよね! あの世までこの余韻もっていきたい!! 充分すぎるほど有名な名作ではありますが、まだ未読の方がいましたら、ぜひご一読をオススメいたします!
<あらすじ>東京から転入してきた蛍子(ほたるこ)は、町の伝統「おわら」を踊れるが人前では緊張して踊れなくなってしまう。そんな蛍子にひかれる地元の高校生、光(ひかる)。どうやら、光の叔父と蛍子は昔からの知り合いらしいが、2人は何も語らない。小さな町に吹き込む、謎と秘密の風。情緒と青春を瑞々しく描く、新しい小玉ワールドを堪能ください!
<書店員のおすすめコメント>『坂道のアポロン』は登場人物たちの姿を数年間にわたって描くプチ大河でしたが、本作では初夏から晩夏にかけてのわずか数か月間という時間を濃密に描いていきます。
舞台となるのは北陸・富山。伝統芸能「おわら」を守り継ぐ町です。子どもたちは幼いころから「おわら」を愛する大人たちを見て育ち、敬意の念が自然と根付いているという世界観がとても素敵でした。
物語の冒頭、そんな町に転入してきたのがミステリアスなヒロイン・蛍子で、主人公の光が敬愛する叔父さんと、なにやらワケありなご様子!? 読者としても「何が一体どうなってんがや」!?と一気にもっていかれますね! 第1話から小玉先生の筆が冴えまくっています。
今回もキャラたちが等身大で作られていて、男性読者も感情移入しやすいと思います。その辺にいるおじさんやおばさん、お年寄りが秘めた「かっこよさ」も見事に描かれてるんですね。主役の若者たちだけなく、大人のキャラクターにも光を当て、単純な対立構造にしない青春物語になっているのが本作の素晴らしいところ!
見どころは、このキャラたちが、成長し変わっていくシーンです。それぞれ主要人物たち(大人たちも含めて)がなにかしらの問題を乗り越えていく様が展開していくのですが、特に、第7巻以降のヒロイン・蛍子の変容とともに押し寄せる感動を体感してほしいと思います。そして、すべてのあやが集約し弾ける最終巻“風の盆”、圧巻です!
<あらすじ>ベトナムの少女・マンは、夏休み中サイゴン川を渡って、市街地の食堂で働いている。ある日、友だちの彼氏が連れてきた大学生・ティエップと知り合い、彼にひかれ始めるが…!? 初期の貴重な作品をつめ込んだ短編集第1弾!! 収録作品:マンゴーの涙/白い花の刺繍/ROVER/玉子王子/憂鬱ヤマラージ/Kakigori
<書店員のおすすめコメント>初期作品群で編まれた「小玉ユキ短編集」。オトナ向けのラブストーリーを中心に、ほろ苦い恋の物語がたっぷりと収録されています。
オススメは「短編集II」に収録されている『さくらんぼうの宴』というお話。若い夫婦の家に、ある日突然、寝たきりの老人が現れ、奇妙な同居生活が始まります。子どもができないことに悩んでいた二人は、面倒を見る老人に子どもの姿を重ねたり、さらには……。不思議な雰囲気と静かな衝撃が押し寄せてくる、小玉ユキ先生の作品の中で異彩を放つ小品です。
デビュー作の『柘榴』も収録されていますので、ファンの方は必読の一冊です!
<あらすじ>とある海辺の町、寺の坊主・秀胤(しゅういん)は、住職の孫・光胤(こういん)の言動が何かと気に食わない。明るく奔放で人気があり、住職の血を引く光胤には、かわいい恋人までいる。いい加減なあいつばかりが、なぜ?悶々とする秀胤だったが…!? 収録作品:光の海/波の上の月/川面のファミリア/さよならスパンコール/水の国の住人
<書店員のおすすめコメント>人魚が普通に存在し、人間と普通に関わりあう世界。物語には、それぞれに負い目を持った人々が登場します。
友人に嫉妬心を募らせる青年。許されない恋心を抱いた女性。父子家庭の親子。人魚に恋する少年に恋する女の子。過去の傷を引きづり続ける老人…。
人魚は、それぞれが心に秘めていた黒いものを暴き出すような役目をしています。毎回描かれるのは、今の自分をそれぞれに乗り越えていく様子。人が変わる、きらりと輝きが放たれる一瞬を、人魚たちが幻想的に彩ります。
<あらすじ>さえない大学生・陽一は、ある日、橋に引っかかった白鳥を助ける。その夜、見知らぬ女の子が唐突に陽一の部屋を訪れ、女の子と縁のない陽一は仰天! 彼女は、「自分は陽一に助けられた白鳥」などというのだが、そんなことって…!? 透明感と潔さに、心ふるえる青春物語!!かきおろし番外編「かえりみち」収録。
<書店員のおすすめコメント>こちらは数ある小玉作品の中で、いちばん明るい作品ではないかと思います。主人公の大学生はちょっとぽわわんとした性格、ヒロインは元(?)白鳥で、コミカルなテイストで物語は進んでいきます。
陽一に一生懸命尽くそうと張り切る美羽(白鳥)ですが人間社会のことが今一つ分かり切ってないため、ちょこちょこと天然っぷりを発揮してしまう様がかわいいですね。
お似合いな二人を見てほっこりしましょう^^
<あらすじ>短編の名手が贈る珠玉のよみきり集!! 満月と音楽が遠距離恋愛中のカップルを優しく繋ぐショート作品「ムーンライト・セレナーデ」が雑誌掲載時と同じ2c刷りで収録されるなど、ファンタジー作品から等身大ラブストーリー、そしてあの名作へのオマージュ作品など、バラエティに富んだ収録作の数々が大人の心をくすぐります。
<書店員のおすすめコメント>こちらの短編集は2010年代の作品が中心。ほんわかとした温もりのある作品が多めになっています。
読み応えあるものばかりなのですが、特筆させていただく収録作品は『キテレツな彼のこと』。こちらはあの藤子・F・不二雄先生のトリビュート企画に提供された読み切りで、『キテレツ大百科』のキテレツくんやみよちゃんが高校生になった姿が描かれているんです! ちょっぴり大人になった二人がどう描かれているか、是非ご覧ください。コロ助も登場するナリよ~! これは楽しい!!
<あらすじ>森に棲むといわれる“ちいさこ”たち。絵本好きな少女、恋愛小説家と編集者、引きこもりの男子中学生…… 生きる時代も性別も立場も違う人間たちが“ちいさこ”に出会い――? “ちいさこ”と人間の不思議な体験が詰まったファンタジックオムニバス
<書店員のおすすめコメント>引っ越してきた家の庭で、少女は“ちいさこ”と呼ばれる小人のテンと出会いました。二人はすぐに仲良くなるのですが、庭はウッドデッキに作り替えられることになっていました。庭はテンの棲み処。反対する少女ですが、テンが見えない親はとりあってくれません。そこで少女が決心したことは──。
見える者と見えない者、その境界からドラマを生み出していく小玉先生の見事な手腕! どれも本当にいい話で、落涙必至のファンタジーとなっております。
ところで“ちいさこ”が見える人間の条件って何なのでしょう。たまに大人でも「見える」人がいるようで…? 答えは終盤で明らかなりますので、どうぞお楽しみに。