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初めての方へ
続刊
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カゴ
稲田和浩
さあさあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!暑い日、怪談を聴いて背中がゾクッとして涼しくなる?そんなわけはない。開けた戸や窓の先には闇が広がった。夏は、人の住む明るい部屋と、幽霊や妖怪の棲む闇とが交じり合う。もちろん冬の幽霊や妖怪もいる。家には囲炉裏があって暖かだが、外は寒く北風が吹き雪も降っている。秋の夜長の幽霊もいれば、梅雨の幽霊もしっくりくる。桜の下に幽霊は佇む。狂ったように咲く桜の木の根本には死体が埋められているという話もある。季節なんてどうでもいい。いつの季節にも幽霊の出るロケーションはある。怪談は「怪しい」「談」と書く。「談」すなわち「話」だ。誰かが作り、文章にし、語って聞かせたりした。すべてが創作ではない。昔から語り継がれたモノや、そのときに起こった話もある。話には説得力を持たせるための脚色が必要だ。夏は他の季節よりいくらか演出効果があるのかもしれない。そんな夏の夜、夕涼みの客の心を掴んだのは、爆笑落語でもなく、しみじみした人情噺でもなく、どこか妖しく気味の悪い「怪談」だった。
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