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敗戦の屈辱から約20年――1964年の東京五輪は、当時の日本人達にとって、単なるスポーツの祭典以上の意味を持っていた。もはや戦後ではない。惨めな負け犬ではない。高度経済成長の波に乗り、生まれ変わった「経済大国日本」の姿を世界に誇示するまたとない機会であったのだ。そんな東京五輪を遡ること4年前、ローマ五輪。かつての陸上王国だったはずの日本が、総ての陸上競技に入賞ゼロという絶望に打ちひしがれていた頃、陸上界には新たな巨星が誕生する。ヒーローの名は、ハダシの王者、アべべ・ビギラ。一介の無名兵士だったはずの彼は、最終日のマラソン競技に世界新記録で優勝すると、一夜にして、祖国、エチオピアの英雄となったのだった。――そして、また、ローマから遠く離れた地、日本でも、後に東京五輪で王者アべべと優勝争いをすることとなるニューヒーローの芽吹きが…… 後世に残る偉業を成し遂げながらも、不遇の人生を送った“栄光なき”天才たち。彼らの人生は、如何なるものだったのだろうか――森田信吾による異色の偉人伝!
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