【推しマンガ】日本のSF史に輝くスぺオペの金字塔! 『クラッシャージョウ』のコミカライズ版!!
遥かな未来、恒星間移動を可能にした人類は銀河系全域に進出。8千におよぶ太陽系国家を築き上げ、それらの連合体である銀河連合を形成しました。開拓の尖兵となったのが、宇宙に漂う塵塊や遊星の破壊などを請け負う“何でも屋”。腕は立つが気性の荒い流れ者たちを、人々はこう呼びました。「クラッシャー(壊し屋)」と――。
スぺオペことスペースオペラは、宇宙を舞台に繰り広げられる冒険活劇。高千穂 遙先生の小説「クラッシャージョウ」シリーズは、日本版スペオペの先駆的作品として知られています。
2025(令和7)年初夏、同作のコミカライズ版である『クラッシャージョウREBIRTH』がWebマンガサイト「コミックDAYS」(講談社)で連載再開! 作品世界を一層楽しむために、「クラッシャージョウ」シリーズの魅力を紹介します!
日本のSF史に輝くスぺオペの誕生!
1977(昭和52)年、『クラッシャージョウ 連帯惑星ピザンの危機』が発表されました。この作品は、高千穂遙先生による作家デビュー作であり、日本版スペオペの夜明けを告げる小説でもありました。
同じ年、アメリカで映画『スター・ウォーズ』が公開されて大ブームとなり、その興奮は日本にも伝わってきていました。高千穂先生が大宇宙に展開したクラッシャーの冒険譚は、スぺオペの登場を待望していたSFファンを魅了したのです。
この作品に続く「クラッシャージョウ」のシリーズは、日本のSF界を変える革命児となりました。同作の挿絵などビジュアル面を担当したのは、『宇宙戦艦ヤマト』『勇者ライディーン』『機動戦士ガンダム』などの大ヒットアニメに参加し、名を馳せていた安彦良和先生です。
『クラッシャージョウREBIRTH』©針井祐・高千穂遙・安彦良和/講談社(1巻 P003より)
『クラッシャージョウREBIRTH』は、高千穂先生と安彦先生のタッグが生み出した傑作SFシリーズのコミカライズ版です。作画を手がけるのは針井佑先生。2015(平成27)年、「ヤングマガジンサード」(講談社)で読み切り作品『安彦良和書店ルポ』を発表し、商業誌初登場を果たした新鋭です。
『クラッシャージョウREBIRTH』のキャラクターは、安彦先生による原作イラストに基づいたもの。針井先生が、安彦調の伸びやかな筆致で描いたマンガは、原作ファンはもちろん新規ファンをも魅了しています。2017(平成29)年、「イブニング」(講談社)でスタートした本作は、掲載誌の休刊により一時中断されましたが、2025(令和7)年初夏に「コミックDAYS」で連載再開しました。
物語は、2111年に人類が発明したワープ機関の説明から幕を開けます。恒星間移動を可能にした人類は、次に惑星改造(テラフォーミング)技術を発達させます。このことにより、それまで人が居住できなかった惑星にも植民が可能になりました。銀河系に8千に及ぶ太陽系国家が誕生し、銀河連合が結成されたのです。
愛機ミネルバを駆るクラッシャージョウ
クラッシャーたちは、銀河の“何でも屋”として惑星の調査から改造まで、あらゆる仕事を請け負いました。「金さえあれば何でもやる ならず者」と揶揄する者も現れましたが、クラッシャーダンは鉄の掟を定めて、クラッシャーたちを宇宙のエリートとしてまとめ上げたのです。
2161年――。ある腕利きクラッシャーのチームに、極秘の依頼が舞い込みます。年若いチームリーダーのジョウを筆頭に、美少女航法士・アルフィン、ベテランのクラッシャーで操縦士のタロス、機関士のリッキーら、宇宙船ミネルバの搭乗員が集まりました。
「全く」「冗談じゃないぜ」。休暇前であるにも関わらず、太陽系国家の一つであるタラオの第五惑星エルロッドまで呼び出されたジョウは、不機嫌な顔を露わにします。一方、リッキーはまんざらでもない様子です。依頼人は、金満国家タラオの大臣を名乗る人物。リッキーは、思いのままの報酬が期待できると考えていたのです。
『クラッシャージョウREBIRTH』©針井祐・高千穂遙・安彦良和/講談社(1巻 P015より)
ところが一行を待っていた大臣のダブラスは、代理人にしか過ぎませんでした。タラオ大統領のフォン・ドミネートこそが、真の依頼人であることを知らされます。
大統領の依頼とは、大臣のダブラスと動物一匹を惑星ミランデルまで運ぶこと。その動物とは、“銀河系の至宝”の異名をもつ「ベラサンテラ獣」だったのです。
「タナール」は、大富豪が取り合いをするほど人気の老化抑制薬。飲み続けていれば、20年延命できると言われています。たった10ccで100憶クレジットもする高価な薬ですが、その原料はベラサンテラ獣の唾液なのです。
ジョウが引き受けたワケあり任務とは!?
希少なベラサンテラ獣の生息地であるタラオは、経済の大部分をこの動物に依存してきました。ところが、そのベラサンテラ獣が絶滅の危機に陥ったと言うのです。
ベラサンテラ獣の存続のためには、みなみのうお座宙域にある惑星ミランデルに住む生物・ガムルと交配させるしかありません。しかしガムルは、ワープに弱い生き物。フォン・ドミネート大統領は、ベラサンテラ獣をミランデルに移送することを決断しました。
もし、ベラサンテラ獣が絶滅の恐れにあると世間に知れたら、タラオ経済はパニックに陥ることでしょう。さらに宇宙海賊が高価なベラサンテラ獣を狙う可能性もあります。ベラサンテラ獣の護送は公にできない仕事のため、クラッシャージョウのチームに白羽の矢が立ったのです。
『クラッシャージョウREBIRTH』©針井祐・高千穂遙・安彦良和/講談社(1巻 P042_04より)
ベラサンテラ獣の身体への影響を考慮して、ワープは50時間の間を置いて十光年ずつ行うことになりました。クラッシャージョウと仲間たちは、この仕事のため3か月の長旅を強いられると言うのです。
ただし仕事の成功報酬は、1兆クレジットという破格の金額。ジョウは依頼を引き受けますが、海賊の襲来が予想される危険な旅になりそうです。一行は3か月もの期間、プレッシャーに耐えられるのでしょうか。ジョウは、アルフィンにある任務を与えます。
それは、彼女をタラオの国家使節に仕立てる陽動作戦。豪華客船・アレナクイーンに、アルフィンと大量の宝石を乗せて海賊の目を引きつけようというのです。ところが妙案と思われたこの策は見破られ、ジョウたちが乗るミネルバ号は想定外の敵から襲われてしまいます。味方であるはずのタラオの戦闘機による攻撃は、大統領に異議を唱える反対派の存在を意味していました。
大宇宙を駆け回るクラッシャーの冒険譚
ここまで、『クラッシャージョウREBIRTH』第1巻「撃滅! 宇宙海賊の罠・前編」の冒頭あらすじをご紹介しました。
このエピソードの原作は、1978(昭和53)年に発表された小説「クラッシャージョウ」シリーズ第2弾『撃滅! 宇宙海賊の罠』です。オリジナル作品の発表から今年(2025〈令和7〉年)で47年経ちますが、大宇宙を所せましと駆け回るクラッシャーたちは、今も私たち読者を夢中にさせてくれます。
これからジョウたちは、どんな活躍ぶりを見せてくれるのでしょうか。高千穂先生による痛快無比の冒険活劇と、安彦先生のキャラクター原案を、見事に再現したコミカライズ版。原作のファンも、ビギナーも楽しめる名作です!
取材・文・写真=メモリーバンク 柿原麻美 *文中一部敬称略






