心揺さぶるマンガの名言 Vol.11 人の心を掴む、マンガのパワーワード!!
マンガは、至言・名言の宝庫です。マンガのキャラクターが放つセリフは、読む者に勇気と力をくれます。
この特集では、全ての人に届けたいマンガの名言を紹介しています。今回は、人の心に残る熱いセリフがテーマです。
近年、力強い響きを持つ「パワーワード」が注目されています。人にインパクトを与える言葉は、ビジネスやスポーツ、日常生活の様々な場面で役立つものです。マンガの名場面から、人の心を掴んで離さないパワーワードを紹介します。
君はヒーローになれる
多くの人間が、“個性”という力を持っています。ただし、その力が必ずしも正義のために役立つとは限りません。避けられぬ悪がある限り、我らがヒーローの登場が期待されます。
『僕のヒーローアカデミア』は、総人口の約8割が“個性”という超常能力を持つ世界を舞台にしています。“個性”を持たない主人公・緑谷出久(みどりや いずく)、通称・デクが、最高のヒーローを目指すヒーローマンガなのです。
「Plus Ultra(プルス ウルトラ)」。更に向こうへ――! デクは限界を突破し、ヒーローとして成長し続けます。そのパワーの原点には、ヒーローに憧れた少年時代がありました。“無個性”の少年・デクが果たした、オールマイトとの運命的な出会いを振り返ります。
『僕のヒーローアカデミア』は、堀越耕平先生によるマンガ作品。「週刊少年ジャンプ」(集英社)で、2014(平成26)年から2024(令和6)年まで、10年にわたり連載された超人気作品です。
2024(令和6)年4月発売の第40巻をもって、国内累計発行部数は約6000万部を、海外累計発行部数は約4000万部を突破(デジタル版を含む)! シリーズ世界累計発行部数が1億部の大台に乗る、驚異的な記録を達成しています。
テレビアニメや劇場版アニメが公開されたほか、スピンオフアニメも製作されるなどメディアミックス展開も大成功。「ヒロアカ」の愛称で親しまれる本作は、不滅の人気を誇る名作なのです。
『僕のヒーローアカデミア』©堀越耕平/集英社 1巻 P058_059より
中国で発光する赤児(あかご)が見つかって以来、世界各地で超常的な能力を持つ人間が発見されるようになりました。いつしか“超常”は“日常”に、“架空(ゆめ)”は“現実”に変わったのです。ただし光ある所には、影があるもの。世界総人口の約8割が何らかの超人となったことで、犯罪件数が爆発的に増加してしまいました。
そんな中、脚光を浴びるようになったのがヒーローです。デクもヒーローの活躍に憧れる少年の一人。しかし彼は、生まれつき“無個性”だったのです。しかし中学3年生になったデクは、幼馴染みである爆豪勝己(ばくごう かつき)が敵<ヴィラン>に襲われるところを目撃。彼を助けようとします。
そこに風のように現われて、デクと爆豪を助けてくれたのがNo.1ヒーローのオールマイト。“無個性”の少年による捨て身の行動を見て、心を動かされたと語ります。そしてデクに「君はヒーローになれる」と告げると、「ワン・フォー・オール」という特別な”個性”を譲ったのです。デクは彼の言葉を胸に刻んで、ヒーローとして成長していきます。
たかが100点差、形の上でだって勝ちます
「逆境とは!?」「思うようにならない境遇や、不運な境遇のことをいう」。『逆境ナイン』は、熱血マンガ家として名高い島本和彦先生による、スポ根とギャグ要素満載の野球マンガです。
全力学園野球部主将の不屈闘志(ふくつ とうし)は、校長から廃部を告げられました。校長に廃部を撤回させる条件として“甲子園優勝”を掲げた不屈は、部員たちと猛練習に励み、甲子園を目指して突き進みます。
不屈率いる野球部ナインは、次々と襲い掛かる“逆境”にもめげず、その名の通り不屈の闘志で乗り越えていきます。島本和彦先生が放つ、ポジティブでインパクト大の名セリフを紹介します!
『逆境ナイン』は、「月刊少年キャプテン」(徳間書店)において、1989(平成元)年から1991(平成3)年まで連載されたマンガ作品です。
いわゆるスポ根マンガのパロディでもある本作は、野球マンガの枠を超える破天荒なストーリーで、多くの読者に笑いをもたらしました。
『逆境ナイン』を始めとする島本作品は、インパクトのあるセリフも魅力の一つ。『炎の言霊 島本和彦名言集』(朝日新聞出版)が出版されるほど、多くの名セリフを誕生させています。今回は『逆境ナイン』から、読者の心に残る名言を紹介します。
『逆境ナイン』©島本和彦 / 小学館 4巻 P036_037より
全力学園高校野球部は、廃部を迫る校長の圧力に屈せず甲子園を目指します。ところが地区予選の試合当日にキャプテン・不屈闘志が女の子とデートしていたことが発覚! 激怒したナインは不屈を補欠に回しましたが、彼に代わって登板したハギワラが負傷したことで不屈はエースに復帰。チームを決勝に導きます。
決勝戦の相手となるのは、強豪・日の出商業。不屈は、1回表に強烈なピッチャー返しを食らい、気を失ってしまいました。最終回になって目覚めた不屈が目にしたのは、100点以上の大差をつけられた全力学園高校のみじめな姿。それでも不屈は「まだ勝ち目はある」と仲間を鼓舞して再びマウンドに上がります。
野球部顧問のサカキバラ・ゴウは、たとえ負けて野球部がなくなろうとも、“形の上での勝利”以外の爪痕を残すことが大切だと言いました。不屈はその言葉を否定し、「たかが100点差、」「形の上でだって勝ちます!!」と言い切るのです。超ビッグなセリフが、読者の心に響きます。
ふるえるぞハート! 燃えつきるほどヒート!!
『ジョジョの奇妙な冒険』は、荒木飛呂彦先生の超人気コミックシリーズ。第1部「ファントムブラッド」の主人公であるジョナサン・ジョースターと、彼の血を受け継ぐ者たちの活躍が描かれています。
本シリーズの魅力として、オリジナリティあふれる世界観や、個性的なキャラクターたち、壮絶なバトルシーンなどの要素が挙げられます。中でも多くのファンを魅了して止まないのが、力強いセリフの数々です。
登場人物が放つセリフが、読者の心に深く刻まれて名言として広まりました。今回紹介するのは、第1部「ファントムブラッド」の名言です。シリーズの歴史に燦然と輝く、パワーワードを紹介します。
『ジョジョの奇妙な冒険』は、1986(昭和61)年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載スタート。記念すべきシリーズ第1部のサブタイトルは「ファントムブラッド」と名づけられています。
以降第6部までは、ジョースターの血統の主人公による物語を展開。第7部以降は、それまでと形を変えながら新たな伝説を描いています。第1部のスタートから39年目を迎えた2025(令和7)年現在は、「ウルトラジャンプ」(集英社)で第9部「The JOJOLands(ザ・ジョジョランズ)」が連載されています。
いずれの作品でも、主人公は揺るぎない信念の持ち主として登場。作中に名セリフの数々を残して、読者に勇気を与えてくれています。
『ジョジョの奇妙な冒険』第1部「ファントムブラッド」©荒木飛呂彦/集英社 2巻 P178_179より
シリーズ第1部「ファントムブラッド」の舞台は19世紀後半。父親を失ったディオ・ブランドーは、英国貴族ジョースター卿に引き取られました。ディオは、ジョースター家の嫡男であるジョナサンと同じ14歳。家族同然に迎えられたディオですが、密かにジョースター家を乗っ取る計略を練っていました。
ディオはジョースター卿に毒を盛って殺そうとしますが、その企みがジョナサンに見抜かれてしまいます。追いつめられたディオは、メキシコの遺跡から発掘された石仮面の力で恐ろしい吸血鬼に変身。当時ロンドンを恐怖に落とし入れていた切り裂きジャックを、吸血屍生人(ゾンビ)に変えて配下にしてしまいます。
一方のジョナサンはツェペリという紳士に出会い、ディオに対抗する唯一の手段として波紋呼吸法を教わります。ジョナサンは、ワイングラスを用いた波紋探知機で、トンネルの奥にいた切り裂きジャックを追い詰めます。そして「ふるえるぞハート!」「燃えつきるほどヒート!!」と叫ぶと、敵に波紋の一撃をふるったのです。
突破するっきゃないっショ
ママチャリで急坂を登り、秋葉原通いで往復90kmを疾走 オタク高校生の小野田坂道(おのだ さかみち)が、驚異の底力を見せます!
『弱虫ペダル』は、アニメ好きの高校生・坂道が自転車競技部に入部し、仲間と共にインターハイを目指す物語です。坂道は、一癖も二癖もある仲間と友情を育みながら、自身の限界に挑戦していきます。
自転車競技の隠れた才能を携えていた坂道。その潜在能力を開花させるため、エース・クライマーの巻島裕介(まきしま ゆうすけ)が彼に贈った言葉を紹介します。
『弱虫ペダル』は、渡辺航先生による人気マンガ作品。「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で2008(平成20)年に連載スタートしました。2025(令和7)年7月時点で単行本96巻を数える長寿作品で、これまでテレビアニメ化やドラマ化、実写映画化されるなど、様々なメディアミックス展開が行われています。
千葉県立総北高等学校の新入生・小野田坂道は、アニメやゲーム、マンガを愛するオタク少年。スポーツとは無縁の日々を送っていましたが、ある日同級生の今泉俊輔から自転車レースを挑まれてしまいます。
中学生の頃から自転車競技で活躍する今泉にとって、学校裏の斜度20%以上の激坂をママチャリで登坂し、放課後に秋葉原まで往復90kmの距離を走る坂道は信じがたい存在だったのです。今泉との競争で自転車競技の魅力に気づいた坂道は、自転車競技部に入って才能を発揮していきます。
『弱虫ペダル』©渡辺航(秋田書店) 5巻 P180より
総北高校自転車競技部は、入部したばかりの1年生同士を競わせました。山岳の覇権争いは、自転車競技初心者の小野田坂道と、経験者・今泉俊輔による一騎打ち。坂道はこのレースで全力を出し切りましたが、休む間もなく合宿に向けた個人練習が始まります。この練習は、上級生と1年生でペアを組み、マンツーマンで走るというルールでした。
坂道が一緒に走るのは、3年生の巻島裕介。「頂上の蜘蛛男(ピークスパイダー)」と呼ばれるクライマーです。彼の異様なダンシング(立ち漕ぎ)を見た坂道は、ただ強いだけではなく、自己流を貫く彼の強い信念に心を動かされます。
ついに合宿が始まりますが、その内容は4日間で1000km走破という過酷なもの。さらに坂道が得意とするクライムを封じるため、彼の自転車にはホイールを重くする仕掛けが施されていました。巻島は、心が折れそうになった坂道に言葉を掛けます。「得意なモンが一つだけあって そいつにフタされたら」「突破」「するっきゃないっショ」。坂道はがむしゃらにペダルを回して限界を突破します。
この燃える世界は、気持ちがいいんだ
競技で使われるのは肉体のみ。カバディは、どこまでも熱いスポーツです。そうとは知らぬ宵越竜哉(よいごし たつや)のもとに、カバディ部が勧誘に来ました。
宵越は「カバディ」と連呼しながら走るこの競技が、インターネット上で笑いの“ネタ”にされていることを知っていました。しかし実際に練習を見に行くと、そこではまるで格闘技のような激しい競技が行われていて……
カバディは仲間との連携アリ、頭脳戦アリのスリリングなチームスポーツだったのです。「熱いスポーツマンガが読みたい」という人にオススメの『灼熱カバディ』を紹介します。
『灼熱カバディ』は、武蔵野創先生によるスポーツマンガの人気作。iOS・Android用マンガアプリ「マンガワン」と、WEBコミック配信サイト「裏サンデー」(以上、小学館)で連載されました。
2015(平成27)年にスタートした本作は9年にわたって連載され、2024(令和6)年に完結を迎えました。
2017(平成29)年には、このマンガがすごい! 2017 オトコ編(宝島社)で第19位を獲得。題材のユニークさもあって、大きな注目を集めました。日本では、まだ競技人口が少ないカバディの知名度向上に貢献した意味でも、高く評価されている作品です。
『灼熱カバディ』©武蔵野創 / 小学館 1巻 P184より
宵越竜哉は、中学生時代に「不倒の宵越」と呼ばれるサッカー選手でした。スポーツ雑誌で名選手として取り上げられたこともありましたが、嫉妬や陰口まみれの世界に疲れ、高校入学を機にスポーツと距離を置いていたのです。
能京(のうきん)高校に進学した宵越は、カバディ部1年生の畦道相馬(あぜみち そうま)に勧誘され、仕方なく練習を見学することになりました。しかし練習場を訪れた宵越は、カバディ部員たちのガタイの良さを見てビックリします。さらに驚くべきことに、カバディ部の入部を賭けて畦道と競うことになってしまったのです。
カバディは簡単に言うと“鬼ごっこ”のようなもの。攻守に分かれて、コート内でタッチを狙い合うスポーツです。宵越はその奥深い魅力に気づいて、少しずつハマっていきます。 2年生チームとの戦いで得点差をつけられた宵越。サッカーを辞めて以来、忘れていた闘志を再び燃やすことになります。「忘れてたな…」「この燃える世界は、気持ちがいいんだ」。宵越は2年生に立ち向かいます。
存在感を放つ、マンガのパワーワード!
マンガのパワーワードとも言うべき、名セリフを紹介してきました。『逆境ナイン』で紹介したのは情熱的な名セリフ。島本作品らしい破天荒なものに見えますが、読者の胸を打つ感動の名言でもあります。
『僕のヒーローアカデミア』『ジョジョの奇妙な冒険』で紹介したセリフは、主人公に勇気をもたらす言葉です。名作にはヒーローをヒーローたらしめる、熱い名言があふれているのです。
『弱虫ペダル』『灼熱カバディ』では、スポーツ競技に情熱を注ぐ主人公の姿が描かれています。スポーツをしていると壁にぶつかる場面もありますが、言葉にはそれを乗り越えるパワーがあるのです。マンガのセリフの中には、存在感抜群のパワーワードがたくさんあります。お気に入りの言葉を探して、様々な場面で使ってくださいね!
取材・文・写真=メモリーバンク 柿原麻美 *文中一部敬称略






