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美少女戦士セーラームーン

美少女戦士セーラームーンの魅力

「美少女戦士セーラームーン完全版」全10巻配信中!

セーラームーン完全版 1巻

美少女戦士セーラームーン完全版(1)武内直子

生誕25周年を超えた今も輝き続ける「美少女戦士セーラームーン」。全世界が注目する少女漫画の金字塔がついにデジタル版として登場。連載当時の扉絵も再現した「完全版」バージョンで、永遠の名作をいつまでもあなたのもとに。

あらすじ

舞台は東京・十番街。この街に住む、おっちょこちょいで泣き虫だけど底抜けに明るい中学2年の女の子・月野うさぎはある日、人間の言葉を喋る不思議な黒猫のルナと出会います。それをきっかけに、うさぎは愛と正義のセーラー戦士・セーラームーンに変身! マーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナスといった仲間たちや、謎多き紳士・タキシード仮面らと協力しながら、街の平和をおびやかす妖魔を退治していきます。 妖魔との戦いを続ける中で、セーラー戦士たちはルナからある指令を受けます。それは「聖石“幻の銀水晶”と“月のプリンセス”守ること」。“幻の銀水晶”、”月のプリンセス”とは? また、“幻の銀水晶”を狙う謎の組織“ダーク・キングダム”の目的とは……。セーラー戦士たちは、激しい戦いの渦に飲み込まれていきます。

キャラクター紹介

セーラー戦士
  • 月野うさぎ / セーラームーン画像
    月野うさぎ / セーラームーン

    泣き虫でおっちょこちょいな天真爛漫の少女。ルナとの出会いでセーラームーンに変身することに。

  • 水野亜美 / セーラーマーキュリー画像
    水野亜美 / セーラーマーキュリー

    IQ300の天才少女でセーラー戦士たちのブレーン。水星を守護に持ち、水を操る。

  • 火野レイ / セーラーマーズ画像
    火野レイ / セーラーマーズ

    火川神社の巫女を務めるクールな霊感少女。火星を守護に持ち、炎を操る。

  • 木野まこと / セーラージュピター画像
    木野まこと / セーラージュピター

    守護星は木星。メンバー1の怪力を持ち、パワフルな少女だが、植物を愛する心優しい一面も。

  • 愛野美奈子 / セーラーヴィーナス画像
    愛野美奈子 / セーラーヴィーナス

    金星を守護に持つ愛と美の戦士。うさぎたちに出会う前から「セーラーV」として活躍していた。

  • ©Naoko Takeuchi

  • 地場衛 / タキシード仮面画像
    地場衛 / タキシード仮面

    エリート校に通う学生だが、タキシード仮面に変身しセーラー戦士たちを助ける。うさぎの運命の恋人。

  • ちびうさ画像
    ちびうさ

    30世紀からタイムスリップしてきた、未来のうさぎと衛の娘。月野家に居候している。

  • ルナ画像
    ルナ

    うさぎのパートナー。額に三日月を持つ、言葉を喋る不思議なメスの黒猫。

  • アルテミス画像
    アルテミス

    ルナと同じく、額に三日月を持ち、言葉を喋るオスの白猫。美奈子のパートナー。

  • 天王はるか/セーラーウラヌス画像
    天王はるか/セーラーウラヌス

    天王星を守護星に持つ、 外部太陽系三戦士のひとり。中性的な容姿でショートヘアが特徴。

  • 海王みちる/セーラーネプチューン画像
    海王みちる/セーラーネプチューン

    海王星を守護に持つ、外部太陽系戦士のひとりで「はるか」と行動を共にする。ヴァイオリンの名手。

  • 冥王せつな/セーラープルート画像
    冥王せつな/セーラープルート

    時空の星・冥王星を守護に持つ、外部太陽系戦士。たった一人で「時空の扉」を守ってきた。

  • 土萠ほたる/セーラーサターン画像
    土萠ほたる/セーラーサターン

    身体が弱く、儚げな雰囲気の少女だが、その正体は、破壊と誕生の戦士。

  • ©Naoko Takeuchi

厳選!記憶に残る名シーン

  • 第1期 ダーク・キングダム編コマ画像
    第1期 ダーク・キングダム編

    セーラー戦士となったうさぎを救う謎の紳士・タキシード仮面。後の運命のパートナーとなるふたりの出会いのシーン。

    1巻 42・43ページ

  • 第2期 ブラック・ムーン編コマ画像
    第2期 ブラック・ムーン編

    戦いを終え平穏な日々に戻り、ラブラブのうさぎと衛の上からいきなり少女が落ちてきて…!? ちびうさ登場シーン。

    2巻 334・335ページ

  • 第3期 デス・バスターズ編コマ画像
    第3期 デス・バスターズ編

    うさぎたちの前に現れた新たなセーラー戦士。それは天王はるかと海王みちるが変身した姿だった。彼女はたちは敵か?味方か?

    5巻 182・183ページ

  • 第4期 デッド・ムーン編コマ画像
    第4期 デッド・ムーン編

    ちびうさが夢の中で出会ったペガサス。彼は地球深くの聖地の守護祭司・エリオスだった。交流を持ったふたりだが…

    7巻 138・139ページ

  • 第5期 セーラースターズ編コマ画像
    第5期 セーラースターズ編

    最後の戦いに挑むセーラームーンの前に、ギャラクシアに消されたはずの仲間たちが現れる。しかしその正体は…。数々の悲しみ、痛みを乗り越えて、セーラームーンの物語はクライマックス目前!

    10巻 98・99ページ

編集者:小佐野氏特別インタビュー

1991年に「なかよし」で連載開始し、アニメ化だけでなくドラマ化・ミュージカル化などさまざまなメディアミックスが展開され、今なお多くの人々に愛される大人気少女マンガ『美少女戦士セーラームーン』。その完全版がついに電子書籍で配信開始! 配信を記念してebookjapanでは、原作者・武内直子先生の担当編集であり現在もセーラームーンのプロジェクトに参画している小佐野文雄氏にインタビューを行い、本作の連載が立ち上がった経緯から武内先生の人柄に至るまで、たっぷりお話をうかがいました。

連載開始前にアニメ化が決まっていた異例の作品

Q.ついに『美少女戦士セーラームーン』の電子書籍配信が解禁されました。待っていたファンも多いかと思いますが、なぜこのタイミングでOKがでたのでしょうか。

小佐野文雄(以下、小佐野) 2013年に完全版が紙で発売され、その文庫版が昨年(2018年9月)発売されまして、これをベースにして電子化しようという流れになりました。

書影

Q.小佐野さんはどのようにして武内直子先生の担当編集となったのでしょうか。

小佐野 僕は3代目の担当です。最初の担当者は(武内先生が)読み切りなどを描いていた時までで、『ま・り・あ』(1989年連載開始)、『Theチェリー・プロジェクト』(1990年連載開始)や『コードネームはセーラーV』(1993年連載開始)の第1話までが2代目。『Theチェリー・プロジェクト』の第2部から僕が担当になり、『コードネームはセーラーV』『美少女戦士セーラームーン』と連載作品が続いていきました。経緯としては前任の担当者が異動になり、僕は『きんぎょ注意報!』(※1)という作品を担当していたんですが、それを他の人に引き継いでもらって武内先生の担当になりました。1991年6月の話です。当時、猫部ねこ先生、秋元奈美先生(※2)は武内先生とデビューが同期でして、3人ともすごい才能のある方たちで「次代のエース」と言われていました。実際、秋元先生が次々とヒットを飛ばして、猫部先生も『きんぎょ注意報!』で人気が出ていました。武内先生は大学生だったので連載をスタートするのが少し後だったように記憶しています。武内先生は高校3年生でマンガを描き始めたみたいなのですが、普通は12~13本を雑誌の「まんがスクール」に投稿してようやくデビューするところを、先生は4本でデビューしたのですごく早かったんですよ。

  • ※1 『きんぎょ注意報!』…猫部ねこの代表作。1989年から1993年にかけて「なかよし」で連載された。
  • ※2 秋元奈美…漫画家。武内直子や猫部ねことともに1990年代前半の「なかよし」の主力作家として活躍。代表作は1990年連載開始の『ミラクル☆ガールズ』。

Q.『美少女戦士セーラームーン』の連載が立ち上がった経緯を教えてください。

小佐野 デビュー当時は、薬科大学で授業も大変だったみたいで、本誌への登場が遅れていたんです。読み切りや前後編の『チョコレート・クリスマス』(1987年、1988年)という作品など描いていたのですが、普通読み切りって雑誌の巻末のほうに載っていて、他にも連載作品が13本くらいあるのでアンケートでも下位になることが多く、どちらかと言うと作家の顔見せという位置づけなのですが、アンケートでいきなり上位になったんです。それから少しして、勉強と両立しながら連載作品を始めるようになりました。単行本にもなった『ま・り・あ』という作品を経て、本格的に始まった連載作品が『Theチェリー・プロジェクト』というスケートマンガです。先生はフィギュアスケートが大好きなんです。その連載をやっている途中で「るんるん」という増刊を出すことになりまして、そこで描いていただく際に、「あまり恋愛マンガにしようというのを気にしなくていい」ということと、「『なかよし』では描けないような、なんでも好きな作品を自由に描いてください」という条件でお願いをしたら、武内先生から出てきたのが『コードネームはセーラーV』でした。武内先生は戦隊モノや変身モノも大好きだったんです。その時は前任の担当者だったのですが、僕は「るんるん」の班長をやっていたので、掲載作品にかぶりがないように交通整理をしており、武内先生に「セーラー服を着て戦う1話完結型のお話はどうでしょう」と提案して、『コードネームはセーラーV』という作品ができました。当時の東映動画(現在の東映アニメーション)でアニメ「きんぎょ注意報!」のプロデューサーをやっていた方が次回作の準備でいろいろ作品を探されていて、アニメ化の声をかけていただいたのですが、読み切りで1話しかなかったので「それなら連載としてやりましょう」ということになり『美少女戦士セーラームーン』の連載が始まりました。アニメは少なくとも半年分は原作が先行していないといけないのですが(アニメは月に4話進むのに対して「なかよし」は月刊誌なので月に1話しか進まない)、これはどう考えてもアニメに追いつかれる。アニメ化は1年後にとお願いしました。しかし、そこをなんとかすぐにと言われ、連載の第1話が掲載される前にはアニメの準備も同時に進み始めるということになりました。

Q.異例なことですよね。

小佐野 まぁ、ありえないですよね(一同笑)

コマ画像

Q.アニメ化が決まった状態で連載が進むということで、苦労もありそうですね。

小佐野 動き出した最初の1週間でキャラクターや物語設定のほとんどのことを決めなきゃいけなかったので、本当にドタバタでした。今考えてもよくできたなって思います(笑) 最初にセーラー戦士のコスチュームを考える時に、武内先生から5人バラバラの服が出てきまして…。全員セーラー服ではあるのですが、一人一人全く違う形になっていました。「これだとまとまりがなさすぎて何が何だか分からなくなってしまうからもうちょっと統一性を出してください」とお願いしたのですが、修正するまでの期間も数日しかなくて大変だったと思います。

Q.タイトルの由来を教えてください。

小佐野 もともと『コードネームはセーラーV』という作品があったので、そこから少し変えて、という感じです。最初は『美少女戦士セーラールナ』というタイトルでほぼいきそうになっていて、雑誌に掲載された予告にもそのタイトルで出たような気がします。でも最終的に一番分かりやすくて、語呂が良いってことで「セーラームーン」になったんじゃなかったかな。どちらかというと「月にかわっておしおきよ」のセリフを考えた時のほうが先生は大変だったと思います。「なめたらいかんぜよ」(文藝春秋刊『鬼龍院花子の生涯』に出てくる名ゼリフ)のような決めゼリフがあったほうがいいと思い先生に頼んだんです。「こういうのは良いのが出るまで100個くらい考えないと」って言ったら先生は真面目なので本当に100個くらい考えてきて。一番上に「月にかわっておしおきよ」が書いてあったので、結果1個だけで良かったんですけど(笑) そのことはけっこう恨まれましたね(笑) 本当に申し訳なかったなと思いました。

Q.ですがそのセリフは今や海外の人達もマネするくらい、有名なセリフになりましたよね。

小佐野 そうですね。素晴らしい決めゼリフができて良かったなと思いました。でもセーラーマーズの決めゼリフ「ハイヒールでおしおきよ」はテレビ局からNGが出て(苦笑)、アニメでは「火星にかわって折檻よ」に変わりました。

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タキシード仮面はパリピだった!?

Q.そもそも“女の子がセーラー服を着て戦う”というコンセプトは小佐野さんの発案とのことですが、どのようにアイデアを思いついたのでしょうか。

小佐野 僕は「科学忍者隊ガッチャマン」とか男が戦うアニメも好きだったのですが、「ななこSOS」とか「スケバン刑事」のような女の子が戦う作品も好きで。ああいった作品も少女マンガ(「スケバン刑事」は少女マンガですが)にあってもいいんじゃないかなと思っていたんです。あと『東京女子高制服図鑑』という本がちょっと流行っていたんです。女の子の制服ってバリエーションがすごくいっぱいあって、その頃は憧れの制服のある学校に進学する子も多かったんです。読者の子が将来この学生服を着たいなと憧れとなる姿を見せられたらいいなと思っていました。

Q.タキシード仮面のコスチュームはディスコの黒服がモデルだという記事を拝見したのですが、本当でしょうか。

小佐野 これは実話だと思いますね。僕はこれ、最初は反対したんですよ(笑) 時間が圧倒的になかったので設定については僕も意見を出させてもらいながら決めていたのですが、「このキャラはちょっとやばい」って思ったんですよね…。でもセーラー服がバラバラなのを統一したものに修正してもらわないといけないから、「こっちはこのままでいいですよ」と言ったような記憶があります。(コスチュームがタキシードなのは)何だか変テコじゃないかと思ったんですが、でも一方でちょっと尖っているというか、他の人が考えつかないアイデアだなとも思いました。そういうのってすごく人気が出ることがあるので、勝負してもいいかと。その頃、武内先生は麻布十番に住んでいらして、バブルの後半くらいで麻布十番にもディスコがたくさんあったので夜中にタキシードを着て歩いている人が本当にいて、しかもすごく多かったんですよね。パリピですよね、今でいう(一同笑)

Q.タキシード仮面はパリピだったんですね…!?

小佐野 パリピですね(笑) その頃って大江戸線も南北線もなかったので、麻布十番は陸の孤島で、六本木から流れてくる人たちの隠れ家ディスコとかがあって、今とは全然違う感じの喧騒感がありました。打ち合わせに行くのにも遠くて遠くて…。まず会社から六本木まで行くのがけっこう大変で、そこからさらにせっせと歩いて行かなければならず、まるで忘れ去られた街に行くような雰囲気がありました。まぁつまり、タキシード仮面は本当に麻布十番にいましたね!(笑)

コマ画像

Q.意外なお話でした(笑) うさぎちゃんや他のキャラクターにモデルはいるのでしょうか。

小佐野 うさぎちゃんは先生自身がモデルだと思います。家族構成も先生の家族と一致しています。キャラクターについては僕がリクエストを出した部分もありますが、基本的にお友達とかがモデルだったと思いますね。

Q.うさぎちゃんのお団子頭はトレードマークにもなっていますが、先生が考えられたのでしょうか。

小佐野 そうです。さすが先生です。他のキャラクターと違いが分かるようにというのと、『コードネームはセーラーV』の愛野美奈子ちゃんがいたので、この子との違いがはっきり分かるようにしてほしいとお願いはしました。当時、特にお団子が流行っていたわけではないですね。

Q.確かにセーラー戦士の5人はシルエットだけでも誰が誰なのか分かりますよね。

小佐野 そうなんです。それが大事だって話はしていました。

Q.ルナやアルテミスを猫にした理由を教えてほしいです。通常、少女が変身する作品のお付きのキャラクターは妖精やオリジナルの生物であることが多いような気がします。

小佐野 設定資料では妖精のようなキャラクターもありました。特殊な動物とかもいろいろ考えていただいたんですが、身近な猫がいいとなったのかな…。あまり記憶にないですね。記憶にあるのはタキシード仮面とルナは最初あまり人気がなかったことですね。普通はお付きのペットはとても人気が出るんですが、ルナは期待したほど人気が出なくて…。ところが21世紀になってからすごく人気が出てきました。今ではうさぎちゃんの次に人気で、お猫様!って感じです。

Q.連載開始前からアニメ化が決まっていたとはいえ、「なかよし」で連載が開始した当時、ここまで人気が出ると予想されておりましたか?

小佐野 最初からアニメ化することは謳っていなかったものの、かなりの賭けでした。他の人気作品を押しのけてスタートさせているし、アニメの準備をしていても作品の人気が出ないことにはだめなので。当時はあさぎり夕先生(※3)の作品が人気で恋愛要素が多い作品が中心の雑誌だったので、『美少女戦士セーラームーン』は方向性が違っていたので人気を取れるか不安ではありました。ところが雑誌の発売日の翌日にはアンケートの速報が出るんですが、そこでダントツの人気だったんです。1話からトップが取れることなんてないんです。あさぎり先生が10年間くらいずっとトップで、ほとんど誰もそれを破れなかったので本当にびっくりしました。女性の作家さんは繊細なのであまりアンケートの順位を教えないのですが、その時はさすがに連絡しました。「すごいトップですよ!」って。

  • ※3 あさぎり夕…漫画家。1976年デビュー。代表作品は1986年連載開始の『なな色マジック』。

Q.先生の反応はいかがでしたか?

小佐野 すごく喜んでいました。でも「実感がない」ともおっしゃっていました。第2期のちびうさのシリーズくらいまでずっと実感がなかったみたいです。僕がだましているんじゃないかって(一同笑) なにしろ陸の孤島で暮らしていますからね(笑) 当時はインターネットもなく情報が入ってこないので無理もないです。携帯電話もないし…。今考えると打ち合わせはどうやって会っていたんですかね?(笑) 謎ですよね。家の電話だったのかな。

Q.では先生はいつ人気を実感されたのでしょうか。

小佐野 近くのおもちゃ屋さんに行って大量のおもちゃを発見したりとか、本屋さんで自分の本が前のほうに山積みになっているのを見たりとかして、徐々に実感したっておっしゃっていました。セーラームーンのおもちゃは最初あまり売れなかったのですが、ムーン・スティックが出て爆発的に売れるようになりました。ムーン・スティックは店頭からすぐに消えて、奥から台車に積まれた在庫が出てきたらそこからお客さんが持って行っちゃって棚までたどり着かないうちになくなってしまうくらいの勢いだったそうです。

Q.連載当時、最も人気があったキャラクターは誰ですか?

小佐野 最初はうさぎちゃんで、人気投票をやったら2年目、3年目はちびうさが1位でした。当時の「なかよし」の読者は小学校5~6年生が一番多かったのですが、『美少女戦士セーラームーン』が始まってからは小学校1年生から全部の学年で読者が多いという形に変わりました。だいたいの少女マンガのヒロインはちょっとお姉さんを描いているので低学年の読者にはあくまで憧れの存在で、まぁ、うさぎちゃんはおバカなのであんまり憧れではないかもしれませんが(笑)、ちびうさのほうがより自分と近い存在なので、低学年の読者から人気がありました。アニメでは亜美ちゃんがぶっちぎりの人気でしたね。亜美ちゃんは特に男性ファンにも強かったですね。ほたるちゃんも男性がファンが多かったです。あとウラヌスとネプチューンは、大人の女性ファンに強かったですね。原作のファンとアニメのファンで人気キャラクターにはずれがありました。

イラスト

Q.もし今の時代に連載していたとしたら、誰が人気になっていたと思いますか。

小佐野 どうでしょう、難しいですね(笑) 最近は、クイン・ベリルやブラック・レディの人気が出てきました。あの人たちにはあの人たちなりに事情があるんだということが分かるようになってきたとおっしゃる方が数多くいらっしゃいます。でも「やっぱり私はセーラームーンが好き」と言ってくださる方が一番多い気がします。やっぱり主役はずっと強いんだなと思います。うさぎちゃんというキャラクターを、ずっと自分の分身として愛してもらっているというのはすごくうれしいことですね。武内先生は自分の分身としてうさぎちゃんを描いていて、自分の良い面も悪い面も全部吐き出しているので、アニメやマンガのキャラクターにしては人間味があるというか、リアリティがある。あけすけに自分の性格や恋愛観を描いていらっしゃるので、それが良かったんじゃないかなと思うんです。「武内先生の26歳から31歳までを描いている」と、ファンの方にお話しすることがあるんですが、今同じ年代になった人が読むとすごく分かることがあると思うんです。「これってこういうことを言っていたんだ!」とか「武内先生はこの時こんなことを考えていたんだな」とか。あと最終回はどういうことだったのかということも含めて、今読んでいただくとすごく伝わるんじゃないかなと。意外に最後まで読んでいない人も多いので、今回電子書籍で読んでいただけたらなと思います。

イラスト

Q.私もこの機会に読み返してみたのですが、読みながら泣いていました…。大人になってから読むとグッとくるものがあるというのは、今のお話を聞いてすごく納得しました。

小佐野 子供の読者に読んでもらうにはけっこう難しいですよね(笑) 僕も途中で分からなくなることがありました(笑)

Q.うさぎちゃんは武内先生ご自身がモデルだったということなので、先生が一番思い入れのあるキャラクターはうさぎちゃんなのでしょうか。

小佐野 そうですね。アニメでは亜美ちゃんとか他のキャラクターが人気でも、迷わなかったですね。「なかよし」の読者に自分の等身大のキャラクターを見せるということを全くぶれずに描かれていました。今、ファンクラブで21世紀版の人気投票をやっているのですが、上位3人はうさぎちゃんとセーラームーンとプリンセス・セレニティになっています。

Q.ちなみに小佐野さんが一番思い入れのあるキャラクターは誰ですか。

小佐野 (即答で)僕は水野亜美ちゃん。でもよくファンの人に、「亜美ちゃんとほたるちゃんの本当はどっちが好きなの?」と聞かれて困っています。

今なお愛されるセーラームーンの魅力とは

Q.小佐野さんは武内先生とは長いお付き合いかと思いますが、ずばり先生はどんな人でしょうか。

小佐野 とにかく頭が良いんです。でも、どっちかというと一夜漬けタイプですね。彼女は1週間ぐらいの勉強で国家試験に受かるような人です。本当はすごく陰で勉強しているけど表向きは全然勉強してないと言う人って、いるじゃないですか。最初は先生もそのタイプかなと思ったんですが、ほ~んとうに勉強してないんですよ、彼女(一同笑) なので集中力がすごく高いのと、あっという間にこなしちゃう力があるというか。あとマンガ作りでは、最近の流行りのものを取り入れるのがすごくうまくて、自分の中で素早く咀嚼して形にできるので、その時々の今っぽい雰囲気の作品を作れるんです。そういうところがすごいなって思います。

Q.武内先生が一番こだわりをもって描いていた部分は何だったのでしょうか。

小佐野 こだわりとはちょっと違うかもしれないのですが、すごくガッツがあるんです。毎月大量のページ数にもかかわらず原稿を落とさなかったのはすごいと思います。原稿に加えてカラーページや付録も描いていて、すごい量をこなしていました。僕が「今月はとうとう原稿落としたな…」と思ったところから間に合わせたこともありました。だいたい毎月10日ごろにネーム*⁴ができていないともう間に合わないのですが、17日が原稿の締め切りなのに16日ぐらいまでネームが上がっていなくて、「もう絶対無理」っていうところから間に合わせたんです。その時は僕も先生の家に缶詰になってずっと待っていて、ネームが上がってきてチェックしたらすぐ作業に入るという感じでした。よく間に合っていたなと思います。それでも実は一番遅かったというわけではないですね(笑) 誰とは言いませんがもっと遅い先生もいらしたので。ああ、恐ろしい。

  • ※4 ネーム…コマ割りやセリフが描き込まれた、マンガを作るための設計図のようなもの。

Q.先生が一番苦労されていたことがあれば教えていただきたいです。

小佐野 やっぱり人気へのプレッシャーっていうのはすごくあったんじゃないかと思います。常に期待以上のものをやらなきゃいけないと。社会現象になっていたので、さすがにネットがない時代でも、テレビなどで人気があるということが伝わるくらいでしたから。一番多い時にはファンレターが1日1000通くらい来ていたので、講談社の郵便部が悲鳴をあげるくらいでした。小さい女の子たちが熱意をもった手紙を書いてくれていました。武内先生も暇があればお返事を書いていたんですが、途中でいくらやっても増えていくだけになって…。10通返事を書いている間に1000通増えていくのでどうにも追いつかなくなってしまって。ラッキーだった方にはお返事が行っていますね。あと、「これはやばいことになったな」と思ったのが渋谷のタワーレコードでサイン会をした時です。その頃はどういうことになるのか誰もよく分からなかったので、当日並んだ順番で先着100名ってことにしたら、8000人くらい並んでしまったんです。それがどのくらいかっていうと、タワーレコードから渋谷駅までの距離(約350メートル)を2回折り返すくらいになるんですよ。先生もなんとか全員にと言ってくれたのですが、1時間で100人しか書けない。仕方ないから急きょ抽選のくじを用意して、なんとか300人ほどに書いていただきました。少しでも多くの人に届けようとしてくださいましたね。その後は、その時の反省を生かして、サイン会の方式もきちんと改善しました。

Q.その人気が今もなお続いているわけですが、ここまで長く愛される『美少女戦士セーラームーン』の魅力とは、何だと思いますか。

小佐野 子供の頃に好きだったものを、皆さんが覚えていてくださるのが一番大きいと思うんです。先生のすごいところはデザインセンスですかね。コンパクトのデザインとか普遍性があるんです。連載していた頃は気づかなかったんですが、時間がない中、そういうところはご自分で丁寧に考えていたんですね。それが今でも愛されるものとしてちゃんと残っているのかなと。細かい設定とかは最近のほうがグッズ制作時に質問されることが多いので、設定資料を確認したりするんですが、最近発見したこともけっこうあります。「ムーン・カリス」の裏側の石の色も僕は全然覚えていなかったのですが「あ、ここにウラヌスとネプチューンの色がちゃんと入れてあったんだ」って気づいたんです。最初は見えないんですが、2人がセーラームーンたちと合流してから裏を見ると、ちゃんとその石が入っているんです。「よく考えてあるな、すごいな」って思いました。

コマ画像

Q.連載開始からこれまで、セーラームーンの様々なことに関わっていらっしゃるかと思いますが、一番印象に残っている出来事やうれしかったことは何でしょうか。

小佐野 うれしいことだらけでしたね。僕は不真面目でしたので、月曜日には必ず会社に行きたくなくなるし、「今日で辞めよう」っていつも思っているような人間だったんです(笑) サイン会の時に先生の横に付いて手伝いをしていたら、小さな女の子が僕にも握手を求めてきたんです。その子からしたら何も考えずに隣におじちゃんもいるから握手しようと思ったくらいだと思うんですが。そしたらその手がすごくあったかくて、熱いってくらいだったんです。その時に「こういうピュアな人達のために仕事をしているんだから、もっと真面目にやらなきゃ」って思ったんです。自分の中で物事への取り組み方が180度変わった出来事でした。読者の方に人の道を教えられましたね。あの子は今どうしているのかな。

Q.セーラームーンのファンクラブに入っていたら、すてきですね。今回の電子書籍化で、これまでのファンはもちろん、まだ『美少女戦士セーラームーン』を読んだことがない人にも読んでもらえるきっかけになると思います。最後に、読者にメッセージをお願いします。

小佐野 自分なりに電子書籍について勉強してみたんですが、少し年齢が高い、もともとマンガの好きな人が多い層と、電子書籍からマンガを知る新しい層がいますよね。特に新しい人達に、25年前のマンガがどういうふうに映るのかという不安がすごくあるので…感想とかたくさん教えてもらえるとありがたいです。一方では、もともとマンガが好きな人でも最後まで『美少女戦士セーラームーン』を読んだことがない人もいると思いますし、年齢を重ねて大人になってから読むと全然違う感覚があると思うのでぜひもう一度手に取っていただきたいです。テレビで少し見たことがある程度という方が持っている印象と、実際の原作の印象は相当違うと思います。ぜひ楽しんでいただければと思います。

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©Naoko Takeuchi