本作の主人公・竈門炭治郎は、貧しくも幸せに暮らしている普通の男の子でしたが、鬼に家族を殺されたことで運命が一変、禰豆子を人間に戻す方法を探すため、鬼を狩る鬼殺隊に入り戦いに身を投じるようになりました。炭売りの少年でしかなかった炭治郎が、どのように鬼狩りの力を付けていったのか、その成長過程をここに記録します。
※コミックス20巻までの内容を扱っています。本編のネタバレも含まれますので、ご注意ください。
まず、炭治郎とはどういう少年だったのか、鬼殺隊に入る前の彼を確認しておこう。
炭焼き小屋を営む父・炭十郎と母・葵枝(きえ)の間に生まれる。6人兄弟の長男で弟妹からは慕われており、父が病死して以降さらに甘えられるようになった。
住んでいる山の麓の村人たちからも好かれており、礼儀正しく、頼み事も快く引き受ける好青年だが、頑固すぎるところが玉に瑕。
かなりの石頭で、炭治郎に頭突きをされた者は失神してしまうほど。
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妹・禰豆子(ねずこ)が鬼になってしまい、混乱しているところに鬼殺隊の冨岡義勇が現れ、禰豆子を殺そうとする。炭治郎は義勇に土下座し、妹の命を乞うことしかできず義勇に叱咤される。なおも妹を殺そうとする義勇に炭治郎は立ち向かっていくも、感情に任せた単純な攻撃で義勇に簡単に倒されてしまった……かのように見えたが、死角をうまく利用し義勇の不意を突くことに成功。
鬼狩りどころか戦いの経験すらない炭治郎だが、この一戦ですでに戦闘センスが光っていた。 -
義勇に言われ、狭霧山の麓に住んでいるという鱗滝左近次(うろこだきさこんじ)の元へ向かった炭治郎。鱗滝の元で鬼殺隊に入るための試験、“最終選別”を受けるため修業を始めることに。多数の罠が仕掛けられた山を下る、素振りをする、受け身の訓練、呼吸法と剣の型を習うなど、毎日厳しい修業を1年続けた。“最終選別”に行くための最後の試練として、鱗滝は大岩を斬ることを課す。
半年後、日々鍛錬を続けても一向に大岩を斬ることができず、くじけそうになった炭治郎の前に錆兎(さびと)と真菰(まこも)という少年少女が現れ、“全集中の呼吸”を体に叩き込む。それからさらに半年かけてようやく錆兎に勝った瞬間、炭治郎は目の前の大岩を斬っていたのだった―。 -
山の麓から中腹にかけて鬼が嫌う藤の花が一年中狂い咲いている藤襲山(ふじかさねやま)には、鬼殺隊が生け捕りにした鬼が閉じ込められている。その中で7日間生き抜くことが最終選別の合格条件だ。炭治郎はここで初めて自らの力で鬼を討伐し、鍛錬が身に付いていることを実感する。
鱗滝から学んだ水の呼吸の型を繰り出し、ついには鱗滝の弟子たちを13人も喰ったという鬼をも討伐。仇を取ることが出来た。
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鬼殺隊・水柱。炭治郎と禰豆子に可能性を感じ、鬼殺隊に入るよう自らの育手でもある鱗滝左近次を紹介する。鱗滝にも炭治郎を育ててほしいと手紙を送る。
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水の呼吸の剣士を育成する“育手”。元・柱でもある。はじめは優しすぎる炭治郎のことを鬼殺に向いていないと考えていたが、過酷な山下りの課題をこなした炭治郎を認め、修業を付ける。
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突然炭治郎の前に現れた謎の少年少女。錆兎が直接手合わせをし、真菰が炭治郎の悪いところを指摘などして炭治郎を鍛えた。実は2人も鱗滝のかつての弟子であるのだが───。
もともとは色の薄かった額の痣が、最終選別後に濃くなっている。(2巻)
幼い時にできた火傷の痕が、最終選別の時の負傷で濃くなっただけのように思われていたが……。
炭売りの少年でしかなかった炭治郎は家族を殺され、妹を鬼にされ、初めて刀を握る。
狭霧山にきてから2年で最終選別を突破し、ひたむきな努力と成長を序盤から見せた。
晴れて鬼殺隊の仲間入りを果たした炭治郎は、鬼狩りをしながら妹を人間に戻す方法を探るのだった。
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鬼殺隊の任務では“血鬼術”という特殊な術を使う鬼とも戦うことが多い。その能力は鬼によって様々だが、炭治郎は能力を冷静に把握しその時に適した型を繰り出すことで異能の鬼たちとも渡り合う。
習ったことを実践するだけでなく、技の応用をその場で思いついたり、より負担のかからない呼吸の仕方を会得したりと、戦いの場でさらに成長し強くなっていく。 -
鬼舞辻(きぶつじ)直属の配下“十二鬼月(じゅうにきづき)”は、強さが他の鬼とは格段に違っている。十二鬼月の「下弦の伍」である累(るい)との戦いで、窮地に追い込まれた炭治郎は走馬灯を見る。父の記憶が駆け巡り、とっさに父から教わった「ヒノカミ神楽」を繰り出して窮地を脱出!
家に代々伝わる神楽でなぜ技を出せたのか……詳細は不明だが、その後伊之助と連携を見せた戦いでもヒノカミ神楽を出して鬼を倒しており、炭治郎は新たな武器を手に入れたのだった。 -
十二鬼月との戦いで負傷した炭治郎は蟲柱・胡蝶しのぶの屋敷で療養し、機能回復訓練に入る。そのなかでどうやってもカナヲに勝てず悩んでいた炭治郎は、全集中の呼吸を四六時中やるという「全集中・常中」について知る。これができるのとできないのとでは天地程差があり、柱は全員できるのだという。
はじめは全集中の呼吸を長く続けられなかった炭治郎だったが、持ち前の努力家な面と屋敷の女の子たちのサポートもあり、ついに全集中の常中をマスター! 訓練でカナヲにも勝利することができた。 -
任務で初めて浅草を訪れた炭治郎は、都会の発展ぶりに驚いて人ごみから離れようとする。また、汽車を初めて見た時は「土地の守り神かもしれない」とも言っていた……。
山育ちの炭治郎は任務であらゆる土地を訪れることで、戦い以外の経験も積んでいく。これも成長の一つと言えるかもしれない……?
鬼殺隊の剣士たちは全員、水の呼吸や炎の呼吸など何らかの呼吸の使い手である。戦いにおいてこの呼吸は非常に重要なもので、呼吸を極めれば様々なことができるようになり、柱へも近づけるという。実際、炭治郎も少しずつ呼吸を極めていき、刺された腹の出血を呼吸で止めることができた。(8巻)
様々な鬼との戦いを通じ、戦いの中で強くなっていった炭治郎。
その時自分にできる最善を考え、自身に不足しているものを把握し着実に成長していく。
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無限列車の鬼を倒した直後、炭治郎や炎柱・煉獄(れんごく)の前に突然「上弦の参」の猗窩座(あかざ)が現れ襲い掛かってくる。煉獄と猗窩座の戦いは次元の違うすさまじさで、怪我を負っていたとはいえ全集中・常中を身に付けたはずの炭治郎が加勢に入る手を出せないほどだった。
最後まで周りの人達を守り抜いた煉獄の強さや誇り高い心を目の当たりにしたことで、自身の力不足を実感。煉獄が最期に遺してくれた「今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ 俺は信じる」という言葉に応えられるよう、さらに強くなろうと誓うのだった―。 -
階級が下から四つ目の「庚」に昇格していた炭治郎は、鬼がいるという遊郭に音柱・宇髄天元(うずいてんげん)と共に向かい、女装をして初めての潜入調査を行った。そこに待ち受けていたのは十二鬼月「上弦の陸」。
自分には水の呼吸よりもヒノカミ神楽のほうが体に合っていると認識した炭治郎は、これまでヒノカミ神楽の連発ができなかったが、「今は違う」と自分を鼓舞している。これまでの鍛錬が剣士としての自信に繋がっているようだ。水の呼吸とヒノカミ神楽を合わせて使うことをとっさに思いつき宇髄の嫁の危機を救っていた。
さらにここでの戦いで、無差別に人を殺す堕姫に炭治郎は目から血がでるほどの怒りを覚え、その怒りによって能力が急上昇する。堕姫は鬼舞辻の細胞の記憶から、炭治郎の姿がかつて鬼舞辻を追い詰めた剣士の姿と重なって見えた……。怒涛の攻撃を繰り出す炭治郎は、堕姫を倒すまであと一歩のところまで追いつめるも、命の限界を超えそうになってしまう。
さらに強くなるポテンシャルが垣間見えた炭治郎であったが、まだ体が能力に追い付いていないようだ。とはいえ、この戦いで確実に強くなっているようにも感じる。 -
刀鍛冶の里を訪れた炭治郎は、戦闘用絡繰人形「縁壱零式(よりいちぜろしき)」で修業をしたことで、「隙の糸」とは違う、匂いで相手が次狙ってくる場所がわかる動作予知能力を身に付ける。里に現れた「上弦の肆(し)」との戦いでも、敵も驚くほどの機転や勘の良さを発揮し、さらなる成長を見せた。
ここで、これまで漆黒だった炭治郎の日輪刀は禰豆子の異能「爆血」により赤く染まり、「爆血刀」へと進化。鬼には炭治郎のその姿が、再び例のいにしえの剣士の姿と重なって見えるのだった。その剣士の刀も、普段は黒曜石のような漆黒で戦う時だけ赤くなっていたという。戦いの最後、炭治郎は鬼の体が透けて見え、相手の急所を正確に仕留めることができた。 -
鬼舞辻との最終決戦が近づいていると感じた鬼殺隊は、合同強化訓練「柱稽古」を行うことに。柱より下の階級の者が柱を順番に巡り稽古をつけてもらえるというもので、柱にしても隊士の相手をすることでさらなる体力向上が見込めるというもの。
数々の強敵と戦ってきた炭治郎は他の隊員と比べて順調に進んでいると思われたが、岩柱・悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)の筋肉強化訓練で苦戦。しかし玄弥から反復動作を教えてもらいすべての課題をクリアし、悲鳴嶼から認められる。
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自分に自信がなく弱気になっていたが炭治郎に励まされる。優れた分析力で炭治郎の弱点を的確に指摘するが、毒舌で指導については初心者のため無茶な訓練を炭治郎に強いる。
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小鉄の先祖が三百年以上前の戦国時代に作った戦闘用絡繰人形。実在の剣士を原型とし、その剣士の動きを再現するために腕が六本ある。108つの動きができる。
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はじめの頃、義勇以外の多くの柱たちは鬼を連れた炭治郎のことを認めていなかったが、共に戦い、学ぶことをどんどん吸収する炭治郎を見たことで認めるようになる。
額の痣は、鬼との戦闘中に炭治郎が爆発的な力を発揮する際や、怒りで頭に血が上っている状態の時に色が濃くなり範囲も広がっているようだが、普段は薄い色のままだった。
しかしその後、柱稽古を重ねることでさらに濃くなっていったようで、玄弥からもそのことを指摘される。(16巻)柱稽古の最後、反復動作で大岩を一町(約109メートル)動かした際に、完全に濃い色へと変化していた。
鬼殺隊が百年以上も倒すことができなかった上弦の鬼との戦いを経験することで、
炭治郎は急速に成長していった。
これまで学んだこと、経験したことを戦いに活かすことができるのも炭治郎の強みだ。
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鬼舞辻との最終決戦が始まり、炭治郎ら鬼殺隊は無限城へ突入。そこでかつて煉獄を殺めた猗窩座と再会する。
上弦の参である猗窩座と互角に渡り合う炭治郎を見た義勇は、炭治郎の実力は「柱に届くと言っても過言ではない」とその成長ぶりに驚く。初めて会った日、うずくまり泣きながら妹の命乞いをするしかできなかった少年はもういない。
ここで炭治郎はさらなる成長を見せる。上弦の肆との戦いで最後に少しだけ見えた“透き通る世界”に入ることに成功! 透き通る世界では体が透き通って見え、周りの動きがゆっくりに見えるため今までにないほど速く的確に動くことができる。ついに炭治郎は、猗窩座の頚を斬る―!!
いよいよ無惨との最終決戦が幕を開ける。
これまでの修業や戦いで培った経験、すべてを懸ける炭治郎は戦いの中でなおも進化を続けている。
※煉獄の「煉」は火に東が正式表記。
※鬼舞辻の「辻」は1点しんにょうが正式表記。
炭治郎の成長にスポットを当てた「徹底分析!竈門炭治郎の成長記録」、いかがでしたでしょうか。ここまで読んでいただけたらご存知かと思いますが、炭治郎の強さは一朝一夕でできたものではありません。戦いの中でこそ急成長をとげることもありますが、鍛錬が足らず体ができあがっていないと成長に体がついていかないこともあります。それでも決して諦めない炭治郎を見ていると、まるで母親のような気持ちになって「炭治郎すごい! えらい!」と何度も感動してしまいました。
この記事を書きながら、炭治郎の本当にすごいところは、人から得たものを一つも無駄にせず、すべて吸収するところではないかと思いました。自分に力を貸してくれる人達がいることを自覚し、それに精一杯応えようとする姿。そこには偉くなりたい、認められたいという気持ちはありません。きっと炭治郎なら無惨を倒してくれる、そう信じられる主人公だと思います。
「ジャンプ」本誌での連載は終了していますが、この成長記録はコミックス20巻までの内容をもとに作っています。これからさらなる成長をとげるであろう炭治郎を、今後も見守り続けたいと思います。
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