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鱗滝は炭治郎の言動や“匂い”から、炭治郎が思いやりのある優しい少年であることに気づいていた。そして、そんな炭治郎が鬼殺隊になることは“無理だ”と判断するが、炭治郎は試練と鍛錬を重ね、ぼろぼろになりながらも乗り越えていく。そしてついに、鬼殺隊の最終選別に臨むための試練まで乗り越えた炭治郎に鱗滝が―。
育手である鱗滝さん。鬼と戦えるよう、命を落とすことのないよう多くの子どもたちを育ててきたのだと思います。しかし最終選別はもちろん、それを乗り越えた先の鬼殺隊としての人生は厳しく、多くの子どもたちが命を落としていく。育手としては最終選別に臨めるくらいに育てたことは“成功”であるはずなのに……試練を乗り越え、修羅の道へと足を踏み入れようとする少年を前にして葛藤する姿に胸が張り裂けそうです。中盤・終盤まで読み進めてから読み返すとより重みの増す名シーンです。
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「理想の家族」を作るため、炭治郎を殺し禰豆子を奪おうとする十二鬼月の累。累の圧倒的な強さを悟り、身を滅ぼす覚悟を決め斬りかかる炭治郎だったが、亡き母の呼びかけにより昏睡状態だった禰豆子が目を覚まし……。
強い攻撃を受け昏睡していた禰豆子の意識の中に現れた亡き母。炭治郎の命を案じ、ぼろぼろになった禰豆子に「起きて」と涙ながらに呼びかける姿に胸が締め付けられます…。敵である鬼の累もまた、心の底に眠る両親との記憶があるからこそ歪んだ家族を形成してしまう。「家族」をテーマに、守るべき者の存在の有無についてとても考えさせられる回でした。
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物語前半のほっこりシーンつめ合わせ! 生まれてはじめて「ほわほわ」する気持ちを覚える伊之助、懐きまくるちびっ子たち、そして、どこか心を閉ざすような生き方をするカナヲに向けた炭治郎のまっすぐな優しさ─。炭治郎がナチュラルに放つ言葉の破壊力がすごすぎる。
みんな大好き炭治郎! 自分と関わるひとりひとりに正面から向き合い、みんなを温かく包み込んでいく炭治郎の圧倒的な長男力。『鬼滅の刃』では、鬼たちとの死闘に次ぐ死闘、多くの命が散っていく張り詰めたシーンが連続しますが、ほんの束の間、ほっこりするときはほっこりしまくるギャップが『鬼滅の刃』の魅力のひとつなんだと私は思います。こんな面倒見のよいお兄ちゃんが存在するだろうか…! 炭治郎の温かさに体の芯からほわほわです。
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炭治郎たちと炎柱・煉獄杏寿郎が乗り込んだ列車。そこでは彼らの命を下弦の壱・魘夢(えんむ)が狙っていた! 人間の心は脆くて弱いと言いきる魘夢。言葉巧みに無関係な人間を操り、鬼殺隊の「精神の核」を破壊しようするが……!?
「心」と聞くとギクッとします。歳をとるにつれて汚れてきた気がするからです。そんな弱い男と違って、炭治郎の無意識を具現した世界には、澄みきった空がどこまでも広がっています。強くて優しい心という形なきものを美しく描いたこの回、悲しい話よりも泣けました。俺もこんな長男になりたかった。
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悪の根源、鬼舞辻無惨を討つために敵のアジト“無限城”に突入した鬼殺隊メンバー。凶悪な上弦の鬼たちと戦っている中、我妻善逸の前にも一人の鬼が立ちはだかった……。
ちょっと頼りないけど、いざってときは魅せてくれる善逸。そんな善逸が最初から最後までキレキレだったのが、兄弟子・獪岳(かいがく)との戦い。獪岳は雷の呼吸をうまく扱えない善逸に対していつも厳しくあたっていましたが、一方の善逸はそんな彼のひたむきな努力を尊敬していましたし、鬼になったことに深い憎悪を抱いています。そんな尊敬と裏切り、2つの複雑な感情が入り混じった戦いの結末は涙なしでは見られません…。普段見られない善逸の表情も必見です。
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無限城で炭治郎&義勇と戦った上弦の参・猗窩座(あかざ)は、頸を斬られてもなお戦い続けていた。しかし、炭治郎たちを殺そうと前に出る猗窩座の腕を引く女性―彼女の言葉に、猗窩座は人間だったころの記憶を思い出す。
かつて人間だった鬼には、鬼になってしまった理由があります。それは『鬼滅の刃』の魅力の一つでもあると思います。その中でも個人的に特に心を打たれたのが、猗窩座の物語です。ネタバレになるので詳細は割愛しますが、大切な人を失ったという心の穴に無惨の血が流れ込んで、体だけでなくいつしか心まで鬼になってしまったのかな…と思うと、猗窩座だけでなくすべての鬼が憐れでかわいそうな生き物に思えてくるんです。
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※禰豆子の「禰」はネに爾が正式表記。
※煉獄の「煉」は火に東が正式表記。
※鬼舞辻の「辻」は1点しんにょうが正式表記。
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©吾峠呼世晴/集英社