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佐藤かよさん
自ら「かよぽりす」というハンドルネームで、ゲームプレイヤーとしてゲームセンターやニコニコ動画で活躍している佐藤かよさん。さながら『ハイスコアガール』のヒロイン・大野晶を地でいくような印象です。そこで今回、実際に佐藤かよさんに『ハイスコアガール』を読んでいただき、その印象や感想を伺いました。
ハルオの心情に共感
随所に描かれるプレイヤーの心理描写
――最初に『ハイスコアガール』を読んでみての率直な印象を教えてください。
佐藤かよ(以下、佐藤) ゲーマーにとってのリアルな心情、心境が随所に描かれていて面白かったです。取り上げられているゲームが私達の世代よりも上の世代で話題になっていたゲームが多かったので、知らないゲームもたくさん描かれているな、という印象を受けました。
──共感できる部分が多かった?
佐藤 ハルオくんが四六時中ゲームのことを考えているとか、学校が終わったらすぐにゲームセンターに行くとか。私もいまでも仕事が終わったらすぐにゲームをするので。もちろん(格闘ゲームなどで)負けたら、すっごく悔しいです(笑)。
──『ハイスコアガール』に登場するキャラクターでいちばん近いキャラクターはいますか?
佐藤 登場人物のなかなら断然(矢口)ハルオくんですね。日高(小春)さんのように友達がゲームしているのを後ろから見ているというより、私は自分でプレイしたいので、ハルオくんに近いです。もちろん勉強みたいな感じで他の人のプレイを見ることはあります。  ハルオくんの心情で一番分かるな、と思うのは、勝つためにゲームをやっているところ。負けることも多いですけど、負けたときに思うのは「次は絶対勝つ」みたいな。ゲームをプレイしていると、負けず嫌いなところがすごく出ます。あと「算数も国語も図工も体育も何もかもが駄目な俺が──唯一誇れるもの…それがゲームであった」という心境や、ゲームだったらだれにも負けないという心情に共感しました。性別や年齢の垣根を超えて、対等に勝ち負けを競い合えるのはゲームだからこそできると思うので。私よりも見た目が強そうな身体が大きな人でもゲームなら勝てますし、そういうところがゲームの良いところだと思います。
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© Rensuke Oshikiri/SQUARE ENIX
勉強、スポーツがダメなハルオが唯一、他人に誇れるのがゲーム。本作には、プレイ中のハルオの内面が随所に盛り込まれ、ゲーマーにとって共感できる内容となっている。著者によるとハルオは自身の分身ではなく、理想像として描いているという。ある種、ゲーマーの理想像が描かれているのかもしれない。
ゲームセンターでスカウトされて入った
ビデオゲームの世界
――佐藤さんがゲームにハマったきっかけについて教えてください。
佐藤 兄についてゲームセンターに行ったり、スーパーファミコンが家にあったりしたので、ゲームには小さい頃から親しんでいました。パズルゲームやアクションゲームが得意でした。横スクロールアクションの『セーラームーン』は兄と一緒によくプレイしていました。私の世代はゲーム世代といってもいいくらいで、学校が終わると友達の家でゲームをするのが一番メジャーな遊び方でした。クリスマスや誕生日のプレゼントもゲームソフトみたいな。PlayStationが登場したのが小学生くらいだったと思うので。
──家庭用ゲームとゲームセンターのビデオゲームではだいぶ異なると思うのですが、ゲームセンターのゲームにハマったのは?
佐藤 友達とゲームセンターで待ち合わせしていたとき、なかなか友達が来なくて、一人でゲームをプレイしていたんです。そのとき、すごくゲームが上手い方に声をかけられたのがきっかけです。女性と男性だったのですが、プレイヤーとしても有名な方で「ゲーセンで格闘ゲームをプレイする女の子ってなかなかいないから、よかったら一緒にやってよ」と誘われて。ゲームはある程度知っていたのですが、そこまでやり込んでいるわけではなかったので「どんな感じなのかな」という興味本位で始めました。
実際、(格闘ゲームの対戦で)勝つと楽しいですし、難しいコンボを練習して自分でできるようになって、それを実戦で出せるようになると気持ち良いですし、何より爽快感があって。性格的に負けず嫌いなので、どんどんハマっていきました。
──実際に、対戦するときの感覚ってどんな感じでしょうか?
佐藤 言ってみたら“じゃんけん”を高速で行っているようなものです。基本的に相手の二手先を読んで戦っているのですが、そういう相手の手を読むタイプか、そうではないのかに大きく分けて。プレイヤーの性格やクセによっても大分違ってくるのですが、心理戦の部分が大きいです。
(格闘ゲームが)強い人は、相手の得意な展開や戦略を、そうさせないように立ち回ってきますし、そういう方と対戦するときは燃えます。私はどちらかといえば、自分よりも強い相手にガンガン挑戦していきたいタイプ。(自分が)勝てる相手とずっと戦って連勝数を伸ばすよりも、強い相手、たとえば、連勝を重ねているような相手に「私がその連勝を止めてやる」と思って挑んでいくのが大好きです。作品のなかでも描かれていましたが、余裕な感じで負かされたりしたときなんかは「絶対、負けない。ぶっ倒す」と内心思いながら、連コイン(※)します(笑)。
──『ハイスコアガール』のなかでは、筐体を蹴ったり、リアルにプレーヤーを殴る描写もギャグっぽくあります。
佐藤 私も悔しくて筐体を「ポン」って叩くことはありますけど、蹴ることはないです。次(ゲームセンターに)来られなくなっちゃうので。でも、よく「顔に出すぎ!」と言われます。怒った私の顔はかなり近寄り辛いそうです(笑)。たぶん私たちよりも上の世代で、ゲームセンターでプレイする人が幅広く、プレイヤー数も多かったときは、そういうこともあったんだと思います。「灰皿が飛んできた」という話を聞いたこともありますし。みんな本気だったんだと思います。でも、本気度合いは今も昔もゲーマーは変わらないと思います。
──作中ではゲームの技名やコマンドなどが随所に挿入されています。
佐藤 技名やコマンドは覚えようと思って覚えたものではなく、必然的に身に付いたような感覚です。会話のなかで「あの技、強いよね。どうやって対抗しよう?」と話すときに、技名で呼ばないと、会話自体が成立しなかったりするので。コマンドに関しても、基本的に方向レバーといくつかのボタンの組み合わせなので、学校の授業で数式などを覚えるよりも全然簡単です。好きなものだからってのもありますが。
私、ゲーマーって大きく2種類のタイプに分かれると思っていて。普段はあまりゲームの話はしなくて、ゲームをプレイするときだけゲームの話をするタイプと、ずっとゲームの話をしているタイプ。ずっとゲームの話をしている方と会話するのは、本当に楽しいです。食事している間中、ゲームキャラクターのフレーム数の話をしたり、あのキャラクターのこの技がすごく強いということを延々と話したりとか。ゲーマーと会話していると、ゲームへの愛を感じて、本当に面白いです。
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© Rensuke Oshikiri/SQUARE ENIX
クセのある技名や複雑なコマンドも、好きなものだからこそ覚えられる。「学校の授業で数式などを覚えるよりも全然簡単です」とはインタビュー中の佐藤さんの言葉だが、おそらくゲーマー全員に共通していえることだろう。
ゲームとラブは別!?
『ハイスコアガール』の恋愛
――作中のハルオくんの場合『ストリートファイターII』のガイルが持ちキャラで、ガイルのセリフを借りて心中を表現する場面もあります。佐藤さんの持ちキャラは?
佐藤 ゲーマーはみんな自分の持ちキャラのカラーやコスチュームにこだわっている人が多いと思います。『ストリートファイター』シリーズなら、私はキャミィをよく使うのですが、私のキャミィが一番かわいい、一番強いと思っています。他のプレイヤーが使用しているキャミィを見ても、たしかに可愛いですが、自分が使用しているキャミィの方がすごくかわいくて、輝いて見えます。(キャミィが)攻撃を受けたりすると「私のかわいいキャミィちゃんに何してくれるんだ!!」と思いますし、同じキャラクターで戦うことになったときなどは「私以外のキャミィちゃんに、絶対負けません!!」と思いながらプレイしています。さすがに相手の攻撃を受けて「痛い」と思うことはありませんけどね(笑)。
──本作では“恋愛”の要素もありますが、ゲームを通じて恋に落ちることはありますか?
佐藤 細かいところかもしれませんが、ゲームをしてほかの予定をすっぽかしたことはあります。ゲームセンターで待ち合わせ時間までの2時間遊ぶハズが、盛り上がってしまって3~4時間。待ち合わせの時間はずいぶん前に過ぎているのですが「ごめん、まだ仕事が終わってなくて遅れる」とか、「今向かってるところ!」と言いながら、ゲームをプレイしている、とかあります(笑)。実は友達にはバレていて、逆に、「ゲームしてるんでしょ」みたいな。「え、どうして分かるの?」「いや、昼間ゲームセンターに行くって言ってたよ」とか「いつもの事じゃん」「いいよ、キリのいいところまでで。先にご飯食べてるから、デキトーにおいで」と、優しい友達にいつも感謝しています。
──最後に本作をこれから読む方にコメントをお願いします。
佐藤 世代が違うと全然知らなかったりするゲームもたくさん登場するので、そういうゲームの歴史的な部分を楽しむこともできますし、物語自体はシンプルなんですが、ゲームの情報はすごく細かくてマニアックだったりしているので、ゲーマーの方にはそういうところが刺さると思います。特にプレイヤーの心情が細かく描かれているので、ゲーマーは共感できると思いますし、ゲームにあまり興味がない方には「ゲームに熱くなっている人って、こういう心理なんだ」と分かってもらえるんじゃないかなと思います。
一般的にゲームって、あまり人とコミュニケーションするイメージが無かったりすると思うんです。でも、実際は友達同士のネットワークや人との繋がりがあってこそ楽しめる部分も結構多くて。『ハイスコアガール』では“恋愛”の要素が表に出てきていますが、家で一人で閉じこもっているように見えて、実はネットワークで人と繋がっている。私は友達の家でゲームをプレイすることが多いのですが「本当にかよって、ゲームしているとき、よくキレてるよね」ってよく言われるんです。私としては楽しんでプレイしているのですが、すごく真剣なので、怒っている風に見えるのかもしれません。正直、(対戦で)負けたりすると「こいつ~」みたいに、本気でムカついていることもありますが……。日高さんみたいにかわいい顔でプレイできるように、これから頑張りたいと思います(笑)。
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コマ絵6
© Rensuke Oshikiri/SQUARE ENIX
「同志」「戦友」という言葉がぴったりなハルオと大野の関係。日高が登場することで、俄然、ラブコメ色が強くなってくるが、それも本作の魅力のひとつ。コミックス最新6巻には、気になるハルオと日高の対決のその後が収録されている。恋愛に疎いハルオの答えは……?
※連コイン……連続で筐体に硬貨を投入すること。連コインすることで、同じ対戦相手に続けて立ち向かうことができる。
佐藤かよ(さとう・かよ)
1988年12月26日、愛知県生まれ。ファッションモデル、タレント。「東京ガールズコレクション」など、多数のファッションショーに出演。ゲーム界では「かよぽりす」などの名前でアーケードゲームを中心に活動中。 主な出演作に、テレビ『ヒルナンデス!』『スクール革命!』、映画『探偵はBARにいる2』など多数。現在、テレビ『ゲーム☆アニマックス』、ラジオ『佐藤かよ Vitamin Radio』にレギュラー出演中。
第6巻好評配信中!!
ハイスコアガール (6)
ハイスコアガール
『2D』派? それとも『3D』派? そんな二極化が進む古き良き格闘ゲーム対立の1995年。角ばる『ポリゴン』がツルツルになりゆく場末のゲーセンで、ひとつの恋路が決着した──。※「ハイスコアガール」6巻より前の物語は、「ハイスコアガールCONTINUE」1~5巻でお楽しみください。
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