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『拝み屋横丁顛末記』完結記念! 宮本福助インタビュー

「月刊コミックZERO-SUM」2002年8月号より連載が開始され、あしかけ15年で大団円を迎えた『拝み屋横丁顛末記』。それを記念してまんが家・宮本福助氏にインタビューを実施。制作舞台裏やキャラクターへの思い入れ、15年で変わった部分、変わらないところを伺いました。この機会に『拝み屋横丁顛末記』の世界をどうぞお楽しみください!!

宮本福助メールインタビュー

連載15年で大団円を迎えた『拝み屋横丁顛末記』には、陰陽師、坊主、神主、神父など、洋の東西を問わず風変わりな拝み屋ばかりが集まる横丁の騒々しい日常を描かれています。温かな世界観、奇妙だけど愛すべきキャラクターはどのように生まれたのでしょうか? 作者である宮本福助先生に伺いました。

15年を超す長い連載、本当にお疲れ様でした。連載期間中には様々なことがあったかと存じますが、特に記憶に残るエピソードをお教えください。

どうもありがとうございます。記憶に残るエピソード…駅前の築40年以上の物件に住んでいた頃、アシさんが必ず一人分多くコーヒーを淹れたりご飯をよそったり、という事がありまして。
どうも霊的な何かがいたらしいです。住んでいる私はまったく気付かなかったのですが、そこを引っ越した途端にアシさん達がこぞって教えてくれました。
私は基本的に怖がりなので、住んでいる間は気を遣って言わなかったそうです(笑)。
作品に関するもので云うと、やはりドラマ化して頂いた時に現場を見学させてもらった事と、ドラマCDの収録現場でしょうか。
自分の作品が大勢の人によって作られる様は、とても興味深かったです。
でも、自分の描いたものを声優さんや俳優さんの素晴らしい演技で再現されると、何だか非常に居たたまれない気持ちになりました(笑)。

拝み屋“横丁”とあるように、作品からは落語や『寅さん』のような下町の雰囲気を感じます。拝み屋横丁という舞台をどのように構想されたかをお教えください。

構想なんて大層なものは何もなく…! 色んな種類の拝み屋が集ってたら便利で面白そうだよね→じゃあ神社とか教会が雑多に建ってる感じかな、で横丁が出来上がりました。
もともと下町の感じが大好きなので、好みが色濃く出たのかもしれません。

第一話の時点で、正太郎、文世、三爺、小説家の東子、徳光と魅力的なメインキャラクターが登場しますが、キャラクターはどのように考えられたのでしょうか。

キャラクターを考えるのは割と後回しの作業でして…漫画の中の役割と大まかな性格、年齢だけざっくり決めてネームを切るので、最初にあまりキャラクターを考えていないんです…。
ネームを切っているうちに「あ、こういう性格の方が面白いかな」でころころ変わるので、メインキャラはネームで叩き上げられて出来たとしか(笑)。でも魅力的と云って頂けて嬉しいです。

なんだかんだで大家さんの家でくつろぐ店子の皆さん

なんだかんだで大家さんの家でくつろぐ店子の皆さん (『拝み屋横丁顛末記 (12)』より)

『拝み屋横丁顛末記』には魅力的な文世や徳光といったナイスミドル、三爺はじめとするナイスシルバーが登場しますが。やはり若者よりは、壮年男性への思い入れは強いのでしょうか?

思い入れ! そ、そうですね描いていて楽しいのは壮年男性ですね…。かろうじて見分けがつくように描ける、という点が大きい気もしますが(笑)。
イケメンを描くのが苦手というのと、若者の描き分けが難しいという技術的な逃避でもあります…。

たくさんのナイスミドル、ナイスシルバーが大活躍するぞ!

たくさんのナイスミドル、ナイスシルバーが大活躍するぞ! (『拝み屋横丁顛末記 (25)』より)

15年の間連載されてきて、特に思い入れの強いキャラクターは誰でしょうか。理由と合わせてお教えください。

どのキャラクターも遠くから眺める感じで見ているので、実は思い入れはそんなにないです…。
強いて挙げるとしたら文世でしょうか。あまり良い目にあわせてあげられなかった点で申し訳ないなと(笑)。

店子には強い文世も、先代大家である父・龍之介にはなかなか勝てない

店子には強い文世も、先代大家である父・龍之介にはなかなか勝てない (『拝み屋横丁顛末記 (21)』より)

『拝み屋横丁顛末記』は一話ごとに完結するストーリーです。正太郎だけではなく三爺や平井が主役のこともありますが、毎回のストーリーはどのように考えられていたのでしょうか。

打ち合わせで、担当さんとの雑談の中からネタをひねり出してます。大体私が「最近おもしろいことあった?」って振ると担当さんがあれやこれやと話してくれるので、ブレーンはほぼ担当さんと云って差し支えないです(笑)。で、使えそうなネタが決まったらおおまかに起承転結を決めて打ち合わせ終了。私がネームに起こして更にこねくり回して出来上がります。
あまりにネタがない時は、最近出してないキャラから決めたり昔のキャラを引っ張り出したりと、色々試行錯誤しながら頑張りました(笑)。

今、第1巻を読み返されて、ご自身で変わったなと思うことがありましたらお教えください。

ストーリーの作り方やキャラクターは今でもさほど変わっていない気がします。昔はページ制限があったので1ページあたりの密度が高いですね…描きこめばいいってもんじゃないぞ、と昔の私に教えたいです(笑)。
ただ昔は勢いがあったなと。絵柄は勢いに任せて描いていたのでひどいですが…!その時にしか出せない瞬発力で描いていたなあと感じます。
今は昔より読みやすい画面が作れていると思うのですが、勢いで読ませる点においては昔には敵わない気がします。
…変わらない点がもうひとつありました…〆切が守れない…。

次にどのような作品を描かれるのか、非常に気になるところです。次回作やこれまで『拝み屋横丁顛末記』を読んでこられたファンの方へのメッセージをお願いできますと幸いです。

15年間に渡るお付き合い、本当にありがとうございました! 初めての連載がここまで長く続けられたのも、ひとえに読んで応援して下さった皆様のお陰です。
「横丁に住んでみたい!」なんて感想が一番嬉しかったです。世界観がちゃんと皆さんに伝わるように描けていたんだなと(笑)。
次回作は登場人物が少ないものを描きたい…なんて願望もありますが、基本的には拝み屋横丁のような箱庭を作って、またわちゃわちゃする感じのものになりそうです。
「おっさんか爺を」的な提案を良く頂くので、察して頂ければ…(笑)。
楽しく読んで頂ける作品をお届け出来るよう頑張りますので、引き続き応援して頂けると嬉しいです。
本当にどうもありがとうございました!

©宮本福助/一迅社

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