<あらすじ>何のとりえもない、特技もない。けれど人知れず、熱い心を秘めた少年・柄本(つかもと)つくし。孤独なサッカーの天才・風間陣(かざま・じん)。嵐の夜、交わるはずのないふたりが出会ったとき、高校サッカーに旋風を巻き起こす、灼熱、感動、奇跡の物語が幕を開ける!!
<書店員のおすすめコメント>サッカー好きというわけではないけれど、読み始めると(つくしの成長を追いかけはじめると)止まらなくなりました。仲間のためにできることを必死で探す柄本つくしと天才肌のサッカープレーヤー・風間陣の関係性を軸に、聖蹟サッカー部の面々やライバル校のメンバー、十傑と呼ばれる超絶プレーヤーの存在など、サッカーの試合はもちろん、登場するキャラクターそれぞれの背負うドラマに力点が置かれて物語が展開していきます。『Over Drive』で群像劇に挑戦した作者が『一瞬の風になれ』を通して、チームの伝統(先輩から受け継がれてきたバトンを次の世代につなぐ)を取り入れ、『振り向くな君は』で「サッカーが好きだからサッカーマンガを描くのは違う」と辿りついた境地が、本作に活かされているように感じます。物語の行く末も楽しみですが、それ以上に、安田剛士氏の描く作品から目が離せません。
<あらすじ>胸がズキン、手に汗ギュッ。“熱さ”だらけの自転車×青春ストーリー!! ――片想い中のゆきちゃんから自転車部に勧誘された、篠崎(しのざき)ミコト15歳。天にも昇る気持ちだけれど、そーいやボクは、自転車にすら乗れないダメな子だった!! 猛烈にヘコみまくるミコトだけれど、「君には天性のココロの強さがある」と口説かれて……!? 各誌大絶賛の、自転車ロードレース物語。もうくすぶらない青春……ここに開幕!!
<書店員のおすすめコメント>“描きたいものがあるけれど、それをうまく表現できない”──そんな気持ちで原稿と格闘していたのが本作ではないでしょうか? 描いても描いても先がある、そんな気持ち。デビュー作を下地に、キャラクター設定を練り直し挑んだ本作は、クロスケ(大和武)が登場するあたりから、ふっきれたかのように物語が動きはじめます。チーム戦としての自転車レースをもっと見たいと思うのですが、素人目にも作画カロリーが高いと感じる自転車に怯むことなく立ち向かった作者の熱い心には感服します。
<あらすじ>「連、俺と勝負しよう」夢をうしなった元サッカー少年・神谷新二(かみや・しんじ)。練習嫌いの天才スプリンター・一ノ瀬連(いちのせ・れん)。ふたりの少年が共に走りはじめたとき、灼けつくような青春ドラマが幕を開ける!!2007年本屋大賞(第1位)を受賞した大人気小説『一瞬の風になれ』を『DAYS』の安田剛士が入魂の漫画化!! 陸上に青春をかける少年たちの熱く清々しい物語!!
<書店員のおすすめコメント>『スプリンター』(小山ゆう)という100Mランナーの肉体や心理を描いた名作があります。それに対し本作は、ランナーの内面描写はありますが、それはあくまでモチーフの一つで、テーマになっているのは人と人とのつながり、チームとしての団結、和だと感じます。ヨンケイ(4×100mリレー)という競技に着目しているのも、そのテーマをより明確化するためだと思いますし、それは本作が新二と連の物語でありながら、新二と兄・健一の物語として読めたり、あるいは陸上部の顧問・三輪の成長物語として読めるところからも伝わってきます。いずれにしてもここで獲得したテーマ性が、後の『振り向くな君は』『DAYS』に連なっているのは間違いありません。
<あらすじ>ぜんそく持ちの少年・成神蹴治(なるかみ・しゅうじ)は、父・龍(りゅう)が創った桜木(さくらぎ)高校サッカー部でプレーするのが夢だ。桜木高校入学式の前日、蹴治は北海道からやって来た少年・犬童(いんどう)かおるに出会う。ふたりは訪れた桜木高校の練習試合で急遽、後半戦から出場することに。蹴治とかおるがピッチに立った時、奇跡が生まれる……!!
<書店員のおすすめコメント>「サッカーが好きだからサッカーを描くのはちょっと違う」と作者自身が振り返るように、サッカーをモチーフにしながらも、描かれているのは人と人とのつながり。『DAYS』でつくしたち聖蹟高校サッカー部の前に立ち塞がった桜木高サッカー部が、廃部寸前から犬童かおると成神蹴治を中心に立て直されていく物語を縦軸に、2人の関係性と部員同士の絆を横軸に描かれていきます。桜高サッカー部としてまとまり、全国制覇を目指すところで本作は終了しますが、『DAYS』でより逞しくなった犬童と成神の姿を見ることができます。
<あらすじ>九歳の沖田惣次郎(おきた・そうじろう/後の沖田総司(そうじ))は、河原で野宿をする謎の男と、盗賊団退治に挑む。男は名を土方歳三と名乗った――!!
<書店員のおすすめコメント>時代劇は好き嫌いがはっきり分かれるジャンルですが、現実に存在しない世界を描くには、その世界を説得力を持って分からせる画力が必要です。本作は『DAYS』連載前に安田氏が手掛けた作品で、『Over Drive』『一瞬の風になれ』『振り向くな君は』とは一風変わった作品世界を楽しむことができます。沖田総司を“人類史上最後の剣の高みへ辿り着いた男”と定義し、あえて青年時代を描かず、少年時代のひとときを描いています。土方歳三が登場したときは、沖田とのバディものかと思いましたが、その方向性ではなく、あくまで少年・沖田の視点で一貫されているのも本作で別の作品世界に挑戦するんだ、という作者の心意気を感じます。