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沙村広明

1970年千葉県生まれの男性漫画家兼イラストレーター。1993年『月刊アフタヌーン』にてデビュー。異色時代劇『無限の住人』がデビュー作であり代表作。同作品により1997年、第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。幾重に重ねられた繊細なタッチで、強烈な嗜好表現やグロテスクな描写すら気品ある美へと昇華させていく。

(六文銭/35歳/♂)

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沙村広明先生の全12作品を掲載!

破茶滅茶剣戟アクションの最高峰!
無限の住人(全30巻)
表紙『無限の住人(全30巻)』 - 漫画
無限の住人(全30巻)
【連載誌】アフタヌーン

<あらすじ>父を殺し、母を攫(さら)った剣客集団『逸刀流(いっとうりゅう)』に復讐を誓う少女・浅野凜(あさのりん)は、「百人斬り」の異名を持ち、己の身体に血仙蟲(けっせんちゅう)という虫を寄生させることで不死の肉体を持った剣士・万次(まんじ)を用心棒として雇い、逸刀流の統主である宿敵・天津影久(あのつかげひさ)を追う旅を始める――。

<書店員のおすすめコメント>見惚れるほどの高い画力と小気味よい会話劇をメインに、時折みせる独特の性嗜好が良いスパイスとなっている沙村広明作品。
作者にしか出せない、唯一無二のその感性にハマる人も多いはず。私もその一人です。
さて一発目は沙村弘明作品で私が初めて読んだ、かつもっとも有名な「無限の住人」です。
出会いは、とある友人から「壮大なシスコン漫画」だと言われて読み始めました。結局、彼の意図することの真意は最後までわかりませんでしたが、それ以上に圧倒的な画力の華麗さと敵味方問わずクセのあるキャラクター、血なまぐさい剣戟アクションには魅了されました。

ではそのストーリーなのですが、「血仙蟲」という虫を体に寄生させ、不死となった主人公、万次と、江戸で急激に台頭し始めた「逸刀流」という無頼派集団に両親を殺害され、仇を討つ旅に出た少女、凜。
凛の中にかつての妹の面影を重ねた万次は、用心棒として二人で「逸刀流」との戦いに身を投じる。少しSF風味がかったアクション時代劇です。
個人的に本作の魅力は、2点だと思っています。
1点目は、万次が不死ですが最強ではなく、むしろ泥臭く敵と闘い続けるところです。
それこそ、手足がもげて、血反吐を吐きのたうちまわっても闘い続けます。およそ不死の持つイメージとは真逆で、人間臭さを演出しています。
もう1点は、敵味方問わず、ブレることない信念のある闘いをするところです。
万次だけでなく、敵には敵の闘うべき信念とも言える理由が明確で、それを軸に時に残酷に、時に情けをかけるといった姿が格好良いのです。

重厚な設定に裏打ちされたストーリー展開と、幾重にもスネに傷のある極悪な人間たちによる痛快絵巻をとくとご覧あれ。

  • 『無限の住人(全30巻)』コマ
  • 『無限の住人(全30巻)』コマ
  • 『無限の住人(全30巻)』コマ
あふれだす言葉×言葉×言葉
波よ聞いてくれ(1~6巻)
表紙『波よ聞いてくれ(1~6巻)』 - 漫画
波よ聞いてくれ(1~6巻)
【連載誌】アフタヌーン

<あらすじ>舞台は北海道サッポロ。主人公の鼓田ミナレは酒場で知り合ったラジオ局員にグチまじりに失恋トークを披露する。すると翌日、録音されていたトークがラジオの生放送で流されてしまった。激高したミナレはラジオ局に突撃するも、ディレクターの口車に乗せられアドリブで自身の恋愛観を叫ぶハメに。この縁でラジオ業界から勧誘されるミナレを中心に、個性あふれる面々の人生が激しく動き出す。まさに、波よ聞いてくれ、なのだ!

<書店員のおすすめコメント>無限の住人から沙村ワールドに入った方は、この作品を読んで面食らったのではないでしょうか。
過去作ではエロ・グロ描写が強いのですが、本作では息を潜め、ギャグベースの会話劇を展開していきます。
バイオレンス的な表現と対をなす、著者の持ち味の一つ、独特のセリフまわしがより研ぎ澄まされて、読んでいて心地良いです。
持ち前の高い画力で魅せる場面展開も、印象的なフレーズとマッチしてより面白くさせてくれます。
ただ、個人的に…
いつかはラジオ収録中に後ろから刺され、血飛沫飛び散るなか、死の間際、倒れると同時にカフ・ボックスレバーを前に押すシーンなんか出るんじゃないかと期待しています。まぁないのでしょうけど。

  • 『波よ聞いてくれ(1~6巻)』コマ
  • 『波よ聞いてくれ(1~6巻)』コマ
女たちの修羅場(強)
ベアゲルター(1~4巻)
表紙『ベアゲルター(1~4巻)』 - 漫画
ベアゲルター(1~4巻)
【連載誌】ネメシス

<あらすじ>3匹の獣(めす)が牙を剥き合う、おんなの修羅場!!『無限の住人』の沙村広明が贈る、背徳のエンタテインメント!――中国の売春街で起きた謎の殺人。それはやがて、日本の某・広域暴力団内部での現金盗難事件と結びつき、とある辺境の孤島にて、予期せぬ火花となり炸裂する!!情慾(エロス)と暴力(バイオレンス)の完璧な融合……これが“叛逆ずべ公アクション”だ!!

<書店員のおすすめコメント>日本のとある島で、暴力団や謎の組織(極悪)やそれらに巻き込まれた人間たちがドンパチする、有り体にいうとそういう作品。
それゆえに、ハリウッド映画よろしくばりのアクションシーンのオンパレードで、極上のエンターテイメントに仕上がってます。
画力の高さにモノ言わせた、アングルや場面展開はスピード感があって、読んでいてアドレナリン出まくりです。
女の女による女のための異種格闘技バトル。闘う女性は、格好良く、そして美しいのです。
物語も、徐々に伏線が回収されつつあって、今後の展開も楽しみです。

  • 『ベアゲルター(1~4巻)』コマ
  • 『ベアゲルター(1~4巻)』コマ
  • 『ベアゲルター(1~4巻)』コマ
救いようのない少女達の絶望
ブラッドハーレーの馬車(全1巻)
表紙『ブラッドハーレーの馬車(全1巻)』 - 漫画
ブラッドハーレーの馬車(全1巻)
【連載誌】エロティクスF

<あらすじ>資産家・ブラッドハーレー家の養女になることが、孤児院の少女たちの憧れだった。ブラッドハーレー聖公女歌劇団で華々しく活躍する…そんな期待に胸を膨らませた少女たちがたどり着いた先は、暗い暗い塀の中。恐ろしく壮絶な悪夢が始まる―――。かつてこれほど残酷な、少女の運命があっただろうか。戦慄!衝撃!圧倒!沙村広明の傑作シリーズ!

<書店員のおすすめコメント>孤児の女の子ばかりを養女にする大貴族ブラッドハーレー家。その一族の養女になることは、絢爛豪華な「聖公女歌劇団」への舞台に上がれる切符だと噂され、少女達の間では憧れの的だった。
が、しかし、実態は貴族が国と癒着するためにつくられた法律により、囚人たちの暴動を防ぐ慰みものとして少女達が集められ、辱められ、絶望の底で無慈悲に死んでいくというお話。
絶望や残酷をここまで描けるのも卓越した技量によるものなのでしょうが、基本、連れてこられた少女達が主語の1話完結の内容は、どの話も救いがなく胸糞悪い展開で、後味が悪いです。
怖いものみたさという意味で記憶に残る1冊であり、王道とは別の価値を鮮烈に刻んだ作品であることは間違いない作品です。

  • 『ブラッドハーレーの馬車(全1巻)』コマ
  • 『ブラッドハーレーの馬車(全1巻)』コマ
血の宿命を背負った二人の物語
春風のスネグラチカ(全1巻)
表紙『春風のスネグラチカ(全1巻)』 - 漫画
春風のスネグラチカ(全1巻)
【連載誌】エロティクスF

<あらすじ>車椅子の少女と物言わぬ従者。互いの他に、信じるものなどない二人。◆極寒のロシアを舞台に沙村広明が描く、戦慄の歴史ロマン。◆1933年、ソビエト連邦カレリア自治共和国。とある別荘(ダーチャ)の管理人であるイリヤ・エヴゲーニヴィチ・ブイコフは、車椅子の少女・ビエールカと物言わぬ従者・シシェノークに出会い、奇妙な賭を申し込まれる。なぜ彼らはこの地を訪れたのか、どこからやってきたのか。そして互いだけを頼りに生きる二人が背負う、密かな宿命とは――。とある名家にまつわる、喪失と奪還の物語。

<書店員のおすすめコメント>1933年のソビエト連邦を題材にした作品。足のない少女と、彼女に従う寡黙な青年の物語。
二人はある目的のため、片田舎にある別荘を訪れ、そこから「ロシア革命」につながる大きな流れへ…というお話。
丁寧に構成されたストーリーとともに、謎が解き解き明かされていく展開は圧巻の一言です。また、流れに抗うように宿命を背負った人間の行動は痛みや困難をものともせず、読んでいてグッとくるものがあります。
私、恥ずかしながらその時代のその国の内情とか全く知らないのですが、そういった知識がなくても十分楽しめました。巻末にある人物紹介もありがたい。
また実際の人物を題材にしているので、歴史的背景を知っている方はもちろん、読みこんだ後に調べてみるのも面白いです。

  • 『春風のスネグラチカ(全1巻)』コマ
  • 『春風のスネグラチカ(全1巻)』コマ
  • 『春風のスネグラチカ(全1巻)』コマ
ギャグ×SF×自由=カオス
ハルシオン・ランチ(全1巻)
表紙『ハルシオン・ランチ(全1巻)』 - 漫画
ハルシオン・ランチ(全1巻)
【連載誌】good!アフタヌーン

<あらすじ>突然現れたおかしな美少女ヒヨスは、ホームレス化野元(あだしのげん)の荷物をリヤカーごと一瞬で食べてしまった。驚く元をよそに、脈絡もなくヤンキー三人組がやってくる。そして、ヒヨスはヤンキーの男二人も一瞬で食べてしまった! 吐き出せば元に戻せるというので吐き出してみると、リヤカーとカバンと魚と人間が融合したクリーチャー(怪物)が誕生してしまった! これが第1話。第2話以降はさらにおかしな事になっていく……。

<書店員のおすすめコメント>ギャグテイストな雰囲気にSFが加わってフリーダムに化学反応したような作品。
物語は、何でも(人間さえも)食べる雑食宇宙人娘「ヒヨス」(1巻表紙)と、元会社経営者40歳ホームレスのあまり心温まらないストーリー。
ヒヨスは食べる→怒られる→戻す(吐く)を繰り返す。吐瀉物は、直前に食べた者同士が合体して出てくる(この設定のリアルさよ)ので純粋に気持ちが悪い。というかヒロインが、指突っ込んでゲーゲー吐くって、どういう感覚なのか。悪ふざけか。
不条理かつぶっ飛んだハイセンスギャグの数々に圧倒されます。

  • 『ハルシオン・ランチ(全1巻)』コマ
  • 『ハルシオン・ランチ(全1巻)』コマ
  • 『ハルシオン・ランチ(全1巻)』コマ
沙広弘明的青春ラブコメ
おひっこし 竹易てあし漫画全集(全2巻)
表紙『おひっこし 竹易てあし漫画全集(全2巻)』 - 漫画
おひっこし 竹易てあし漫画全集(全2巻)
【連載誌】アフタヌーン

<あらすじ>全身全霊をかけたバカ漫画!!その圧倒的画力で描き出される、恋と笑いと涙の青春残酷物語。アフタヌーン・シーズン増刊で掲載され、伝説となった謎の新進気鋭漫画家・竹易てあし最初で最後の?漫画全集!!――「愚痴っぽくて刹那的。おせっかいなくせに傷つきやすく。経験ないのに知ったかぶって。でも、まっすぐだったあの頃に、もう一度戻ってみたくなりました。――ナチュラル沙村ワールド万歳!!」(漫画家・藤沢とおる)

<書店員のおすすめコメント>大学生の片思いを、独特の恋愛観で展開した作品「おひっこし」を表題作とした全3編の短編集。
ギャグを中心としたテンポの良いセリフ回しは相変わらず面白いです。また、熱量の低い情熱と無駄な行動力だけが取り柄で、そのクセ優柔不断で煮え切らないという大学生像は、どこにでもいそうで妙にリアル。
全体的にテンション高めで、斜め上をいく小ネタたちには、声を上げての笑いというよりも、唸るような関心による笑いが強いです。枠外のセリフも良い。
くだらないやりとりからにじみ出るセンスにただ脱帽です。

  • 『おひっこし 竹易てあし漫画全集(全2巻)』コマ
  • 『おひっこし 竹易てあし漫画全集(全2巻)』コマ

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