一度はあきらめた漫画家への道
──デビューしてからしばらくの間は、サスペンスやホラー作品を多く描かれていますが、もともとそういうジャンルがお好きだったのでしょうか?
嫌いではありませんでしたが、とくに好きなジャンルというわけではありませんでした。デビュー直後担当氏からはプロットなら3本以上持ってこいと言われていたので、とにかく思いつくストーリーを書いて持って行きました。かなり多岐なジャンルを描いたと思います。
サスペンスを描き始めた発端は、次の担当氏が、ちょうど夏だったので「ホラーが描けるんだったら40枚あげる。本誌に載せるよ」といわれ、それまで増刊・31ページしかもらったことないわたしは「本誌・40ページ」につられて(笑)必死に勉強しました。…といっても、ヒッチコックの映画を見まくり、小説だとウィリアム・アイリュッシュあたりを読みまくる程度ではありますが。その時描いた『真夜中の訪問者』が、最初にだしていただいたコミックスのタイトルロールになりました。その後2年くらいは同様なサスペンスやホラーの短編を描いたでしょうか。望んで始めたわけではありませんが、けっこう性にあっていたみたいです。
──その後、初の連載作品『闇のパープル・アイ』が始まりますね。
デビューから3年目にいただいたお話でした。3年たってこの仕事で自立できなかったら、別の仕事を探そうと思っていて、転職も考えていた時に連載のお話をいただいたので有り難かったです。
──漫画以外にもお仕事をされていたのですか?
はい。当時は十代でデビューする方が多かったので、二十歳をすぎた頃にいったんプロをあきらめて就職したのですが、やはり性に合わなかったようで(笑)ふたたび持ち込みをはじめました。こちらも3年真剣に持ちこんでデビューできなかったら今度こそ真面目に働こうと思っていたのですが、ありがたいことに3年目でデビューが決まりました。
わたしが続けてこられたのはサスペンスを描いてこられたおかげかなと思っています。確認していないので真偽不明ですが、初単行本が連載作品ではなく短編集なのはあなたが初めてだ、と当時の担当氏に言われました。サスペンスは固定ファンが多いので短編集でも買ってもらえる可能性があると。
初連載の「闇パ」は当初単行本1冊分という予定でスタートしました。読者の方の反応をみながら、まず1回延ばしてと言っていただき、12回(単行本2冊分)になり、18回(3冊分)に…と結局単行本12巻まで延ばしました。とてもありがたいことですが、冷静に考えると恐いことですね。いろいろ綱渡り(笑)。でも長期連載はみなさんそんなものじゃないかな。
──『闇のパープル・アイ』はテレビドラマも話題になりましたね
連載終了後、かなり経ってからのお話でした。漫画を知らない方でも、テレビドラマは観たよと言っていただいて、たいへん嬉しいことでした。