雁須磨子先生の19作品を掲載!
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歳をとるのは怖いですか?
【掲載誌】「Ohta Web Comic」
【あらすじ】
20代ほどがむしゃらじゃない。30代ほどノリノリじゃない。40代で直面する、心と身体の変わり目。立ちはだかる40代の壁。突然の病気、更年期障害、取れない疲労、働き方の変化、お金の不安、これからの人生プラン……私のあしたはどうなるの!? 本奈多子(ほんな・さわこ)、42歳、独身。映画宣伝会社に勤め、ハードワークをこなす日々。ある夜突然、心臓の動悸が止まらず、体が冷たくなって……。もしかして私、更年期障害かもしれない!? 苛々したり、涙腺がゆるんだり、おばさんと言われて悲しくなったり。心身の変化に戸惑いながら、迷いながら、私たちは、あしたを生きる。
【書店員のおすすめコメント】
わたくしごとですがアラフォーです。仕事や生活や趣味……色々な場面で変化や歯車のズレを感じたり、謎の動悸に襲われたり、あと寝汗がすごかったり——いよいよ生きることの難しさを感じております。本作『あした死ぬには、』はそんなお悩みを持っている人にドス…っとくること間違いなし。本当に共感しかなくて、うわ~~~わかる……のオンパレード。ふとすると自分と重なりすぎる不安さに目を背けたくなるテーマなのですが、雁須磨子先生の人物描写の妙で、死ぬのも怖いが生きるのも怖いお年頃の戸惑い嘆きと奮闘を切実かつコミカルに描かれているので、読んでいるうちに元気が出てきます。自分は自分として生きるっきゃないしな…という基礎に帰らせてくれたうえで、そっと背中を押して、もう一歩踏み出す勇気をくれる作品です。
帰路、電車に揺られつつ自身が変化することに思いを巡らす多子。
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こんなに楽しそうな日常ってある⁉
【掲載誌】「まんがくらぶ」
【あらすじ】
阿部かよ子、通称かよちゃん。今年で三十歳。無職になったり激太り・激痩せしたり、二十歳の弟に結婚を先越されたりしているけど、なんだかんだで雑貨屋さんに再就職して、気の合う年下男子(美容師)と出会ったり、人生山あり谷あり。そんなマイペースなかよちゃんの日常を描いた共感度100%ショートコミック、待望の新装版。
【書店員のおすすめコメント】
本作を読むとあふれ出す、ああ友達がほしいな~などという子どものような願望。主人公である荷物がやたら多いかよちゃんが、友達とご飯を一緒に食べ、近頃あった出来事の話をし、買い物の成果を発表しあったりなんだりしているのをみるたび、羨ましくて羨ましくて。悩み多き年頃のかよちゃん(無職になったり太ったり、イラっとしたり、母や祖母に申し訳なく思ったりする)に親近感を感じずにはいられない反面、でもいいよねかよちゃんは、仲良しがいてさ……と、ジェラシーを感じてしまうのです。私も【まだいける】【さっき同じようなのみた】と書かれたプラカードを掲げて友達の衣替えを手伝いたい! でも、かよちゃんがそうやって日々楽しげなのって、人徳というか、ちょっとした気分の切り替えや思いやりの積み重ねなんですよね。笑っても一生、泣いても一生。それならなるべく笑って暮らしたいので、かよちゃんの生き方をお手本にしたい今日この頃です。
美容師のアニメくんと恋の予感…と思いきや、予想外の展開。でもかよちゃんは楽しい。
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十人十色、悩む日もあれば笑う日もあり
【掲載誌】「Kiss」「Kiss PLUS」
【あらすじ】
いろいろワケありで上京した瑠加(るか)は、姉のアパートへ同居のお願いに行く。そこには姉の恋人も住んでいて……。それぞれの事情、それぞれの想いを抱えて生きていく人たち。秘めた恋、壊れかけた恋、自分でも気付かない恋、微妙に揺れ動く乙女心を鮮明に描き出す——。
【書店員のおすすめコメント】
すごくいいタイトルなんです。読んでいると、そういうことか……! とハッとすることしばしば。大好きな彼氏を大好きだからって操り糸で操るように思い通りにはできないし、同じ親から生まれた姉妹だって、なんだか別の星の人のようだったりするし——人間って結局、みんな思い思いに生きているんですよね。そして。別々の人生を生きる人たちがひょんなことから出会って”つながる”と、星座みたいに何かの形に見えてくることもある……みたいな。ひとりひとりが、輝いてるお星さまだよ、と言ってしまうとキザすぎるかもしれませんが、本作を読んでいると「人間ておかしくも愛しいですなあ」と感じるとともに、自分もまあ自分の人生を生きればいっか、と思えるのでした。(読む人によって、だれに共感するか違うのでは?と思うので、読んだことある方とお話したい~~)
瑠加にとって異星人のような姉と、彼氏(瑠加と同じタイプ)の馴れ初め。
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お嬢さん方のきらめく日々
【掲載誌】「マンガ・エロティクス・エフ」
【あらすじ】
学校に通う良家のお嬢さま、杉内さんは、あることをきっかけに同級生の滝さんと親友になりました。ところが杉内さんの縁談が“背丈”を理由に破談になったと聞いた滝さんは、まだ見ぬ杉内さんの許婚者を見に行こう!と言い出して!? 人の恋路に口出ししたり、自分の恋には足踏みしたり…と周囲を巻き込み大騒ぎ、かわいい凸凹コンビがおくる今よりもちょっと昔のものがたり。
【書店員のおすすめコメント】
今よりもちょっと昔が舞台の本作。女の子たちの言葉遣いや衣装の一つ一つがとてもかわいらしい。まさに、お嬢さんという感じです。雁須磨子先生独特のセリフまわしで、お嬢さんたちがわーーーっとしゃべって、くるくる表情を変えているのを見ているだけで愛しさがこみ上げてきます。小さいけどパワフルな滝さんが走り回っていたり、男装の麗人・鷹子さんが策略を巡らせていたり、のっぽでおっとりな杉内さんがびっくりしていたり。本作に登場する女の子はみんな、キラキラしているのです。ちょっと昔の今とは違った女性観・結婚観が垣間見えるなか、本作のお嬢さん方はマァマァ、それはそれとして……、私はどこに行こうかな? 私ってどうなるのかな? と、どきどきわくわくしている様子がとてもまぶしい。雁須磨子先生の描く"愛しさ”をギュギュギュっと詰め込んだ作品ですね。
お嬢さん方の良き理解者のパワフルなお母様も素敵です。
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自分の中にある感覚を呼び起こされるような
【掲載誌】「ハツキス」
【あらすじ】
女は五感で恋をする! 視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感(+霊感)をテーマに描かれる珠玉のオムニバス。
【書店員のおすすめコメント】
五感(+霊感)と恋がテーマの短編18話で構成されるオムニバスで、最高に胸がほっこりする優しい恋、胸を抉り尽くす恋いろいろあれど、その恋ってどこから来たんだろう? を"感じ”させてくれる作品です。毎回とくに前置きなく物語が始まるのですが、登場人物が感じている感覚とそれによって動く感情が、自分の視覚を通じて流れ込んできたときの既視感で、ス……っと作品世界にひきこまれます。「あれ、こういう感じ知ってるかも……?」と、自覚していなかった自分自身の感覚を呼び覚まされたりして、心揺さぶられちゃうのです。本作は18人の主人公と、主人公が恋する(恋した)人と、主人公を取り巻く人々のお話なので、登場人物はかなり多いのですが、ちょっとした言動でその人の“ひととなり”を表現してしまう雁須磨子先生の人物描写の妙(切り取り方が絶妙~!)が随所に感じられて、そこもまた垂涎ものです。
元カレの置いて行った服の残り香が、予期せぬ事故(くさや)で上書きされるシーン。
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来世はこの駐屯地に配属してほしい
【掲載誌】「メロディ」
【あらすじ】
憧れの先輩を追いかけて婦人自衛官になった朱野(あけの)。だけどその実態は…!? 花の自衛隊グラフィティ☆コミックス未収録10話を含む完全収録版がついに登場! 描きおろしストーリー(2巻収録)をはじめ、カラーイラスト、ショートエッセイコミックなど描きおろしをたっぷり収録!
【書店員のおすすめコメント】
自衛隊の駐屯地を舞台に女性自衛官の朱野と仲間たち(同僚&上司)の日々を描いた本作。登場人物たちが自衛官になった理由は憧れの先輩を追ってだったり、借金返済のためだったり、フェチをこじらせてだったりと様々、性格も考え方も様々です。自衛隊というと規律正しく厳格なイメージで自堕落な私には遠い存在に感じていたのですが、雁先生の手にかかるとどこかホノボノしていて、わいわいキャッキャと楽しげで「あっ入隊したい」と人生初の感情が芽生えちゃうからすごい。いいなあ……と憧れてしまうポイントは多々あるのですが、あえて一つ上げるなら職場も住まいもなんなら休暇も一緒、四六時中一緒にいるのに飽きることなくわいわいしているところ。よくこんなに話すことがあるな……と思うくらい作中の登場人物は多弁です。そしてそのゆるゆるの思考と会話のなかに時々ハッと目の前が開けるようないい話があったりして、何度も読みたくなる作品です。
乙犬の朱野に対するイメージ。これはベタボレ…なのか?(そうなんです)
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BL編は後日公開予定です。
お楽しみに!
【ご注意事項】
- ※本ページに掲載している連載中作品の巻数は、2020年3月時点のものです。
雁須磨子(かり すまこ)福岡県生まれ。BLから青年誌、女性誌で執筆中。「このマンガがすごい!2020」(宝島社)オンナ編第3位にランクインの『あした死ぬには、』(太田出版)をはじめ、2006年に映像化された『ファミリーレストラン』(太田出版)、『幾百星霜』(太田出版)、『どいつもこいつも』(白泉社)など著作多数。
(書店員:イヌスキ―/30代/女性)