ブラックユーモアが冴える初期作品集
<あらすじ>火星まで戦争をしに行くことになった軍人くんこと吉田一等兵の隊には、主婦の石井上等兵や死神中佐、そして「へんなやつ」がいた…。表題作のほか「戦え!学生さん」「戦火の恋人」などを収録。いじめてくんや火星田マチ子といった、のちに単体で主人公となるキャラも多数登場している。表紙を手掛けているのは祖父江慎氏。
<書店員のおすすめコメント>連載当時はバブル期。漫画も雑誌も元気一杯で、あちこちで斬新な作品が発表される中、私の目をひときわ引いたのが本作でした。まだ不条理ギャグなんて言葉はなく、サブカルとして読んでいた気がします。ギャグながら漂う背徳感とそれに伴うエロス。江口寿史風の絵に巻き込まれ型のキャラ。そして主人公のツリ目・吉田一等兵の狼狽ぶりがもう最高。”戦車だから戦争もの”ってノリで描いちゃう適当さが昭和なんだよな~。
ヘンなキャラが寄ってたかってぶち壊す
<あらすじ>「不条理ギャグ」のパイオニア・吉田戦車の名を世に知らしめた作品。「かわうそくん」や「かっぱ」はテレビ番組やCMにも採用され一世を風靡した。ほかにも、「かえる」「こけし」「王様」やカブトムシの「斎藤さん」、何者か不明の英語教師「山崎先生」など不思議で異様なキャラが次々登場。彼らが繰り広げるキテレツな日常は説明不能。
<書店員のおすすめコメント>平成元年の初日に第1話のネームを入れたという逸話もある、面白ければいいという時代に登場したのがこの怪作。その面白さを語るのは難しいのですが、当時からずっと思っていることがあります。それは、もはや4コマ漫画のオチを最後に持ってくるのは愚策だ、ということ。モヤッとした感覚がすぐ来るのがイイんだと、この漫画で気づきました。この手法の模倣は多いですが大体が消化不良。第一人者はセンスが非凡です。
おかゆだけ?で貫いた異色の料理漫画
<あらすじ>ひとり暮らしの青年サラリーマン・菊川八郎。彼のもとへある日突然やってきたのは、なぜか人語を解するネコ。その名もツブ! 都会生活により、生活習慣や食生活の乱れたご主人のため、ツブは日々、賄う。時には喧嘩もするしいやがらせもするがいつもツブは献身的。そんなツブが作りに作った194食+α。癒されながら読んでください。
<書店員のおすすめコメント>ネコ好きにはたまらないところをくすぐる癒し漫画。人語を理解する、食事を作れる、というのは夢だとしても、気まぐれな行動をしつつも、いつも飼い主の事を思っている、なんてもう…、かわいすぎるよツブ。実はこの作品は猫バカの家内に勧められました。吉田戦車も、『伝染(うつ)るんです。』も知らない漫画無知な人からです。ですので共通の話題ができました。家内円満にもつながりるなんて、やっぱりツブはいい子だね~。
しっかり毒づいてくれる”らしさ”あり
<あらすじ>父・吉田戦車、母・伊藤理佐、漫画家同士が結婚して2年立ち待望の赤ちゃんが生まれた。出産に立ち会う、立ち会わない。妊娠中の妻の前で酒を飲む、…などなど。これは生まれたムスメが小学生になるまでの成長と親のドタバタを“イクメン”目線で描く子育て奮闘漫画です!
<書店員のおすすめコメント>吉田戦車よ、お前もかと思ってしまった漫画家漫画風の育児エッセイ。この作品あたりから身近な情景ネタが増え、それは違う、と残念な気持ちになっていたのですよ。ただ読み進めていくと、世の中の隅っこを見つめ続けてきた作者だけのことはあり、ツッコむところが変。出産後の胎盤処理を見てしまったことや、子供の理解しがたい反応など、ほのぼのとした内容に毒を仕込んでくる。なので往年のファン目線でもこれはあり!です。
今日も頑張って生きて(爆発して)ます
<あらすじ>戦争中に作られたいじめてくんは、思わずいじめたくなる容姿を持った秘密兵器。いじめられて爆発してもすぐ元に戻るすごい機械だ。そんなロボット爆弾・いじめてくんの道行きには成長と不条理が横たわっていた。時代を越え、生物と無生物の壁も越えて、本来の目的とは違う方向へ走り出したいじめてくん。出会いと別れを繰り返しどこへ向かうのか!
<書店員のおすすめコメント>うん、タイトルからして現在では絶対描けない漫画。不幸を煮詰めてネガティブで固めたような容姿の主人公が、毎度さんざん暴行されて爆発するという、カタルシスになるのかどうかよくわからないオチ。だけど、あとがきでも触れていますが、情が移るとこんなキャラクターでも成長するんです。徐々に爆発しなくなるし、馬になったり恋をしたりする。で、全編通して読むとロードムービー風の話になっているのが意外な作品です。
その県の魅力をつとむが全力アピール!
<あらすじ>日本のどこに位置しているのか不明な「ぷりぷり県」。そこから上京して来た“つとむ”。窓から東京タワーが見える五郎商事に入社した彼を待っていたのは、他都道府県出身者たちとの熾烈な郷土自慢合戦だった…!! 吉田戦車の代表作『伝染るんです。』終了後に『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載が開始された伝説の都道府県民ギャグ漫画!
<書店員のおすすめコメント>地方出身者として、あるある的なおもしろさで楽しめた半面、主人公・つとむに非常にイライラした覚えあり。郷土愛が強すぎる。そしてよく癇癪を起こすし、よく泣く。ああ、そしてこんな性格なのに先輩OLのよし子さんと結婚しちゃうし。吉田戦車キャラと相性は良かったはずなのだが、やはり地方出身者ならではの近親憎悪やひがみなんだろうか…。あと、この表紙って『美味しんぼ』のパロディだよね? 食漫画でもないのになぜ?
人気キャラも多数登場(半分うそ)!!
<あらすじ>吉田戦車の最長単行本作品(2019年現在)。かわうそ型のドジなお手伝いさん・和歌子が、気配り上手な犬が、肉体改造に情熱を燃やす乳児・フィジカル君たちが繰り広げるシュールな4コマの数々。『ぷりぷり県』から登場の麦次郎など他の作品のキャラらしき人物も参戦! さらには作者も登場してネコにツッコミを入れられる?
<書店員のおすすめコメント>これが最長作品というのは意外。ただ『伝染(うつ)るんです。』以来のスピリッツ連載4コマ漫画ということで、広がった幅をうまく収めた感あり。ややマイルドな作品になっていて、ある意味代表作、初心者向けなのかも。かわうそくん似の和歌子などファン心理を微妙についてくるのがツボにはまります。あと作者本人が出てくるのも新しい発想。日々、思ったことや行動をギャグのネタにしてしまうって、なんて自由なんだろ。
殿の胃を満たす。『ぷりぷり県』の続編!
<あらすじ>時は現代。あのP県にある虎尾の里のお殿様・虎尾岩髭は日々、肉&ご飯オンリーの「肉とめし」を所望! 苦心する料理番の父のため、新米くノ一・ハコベが白飯にあう肉を求め大奮闘! 今晩のおかずの参考にもなるヨダレもんのレシピ盛りだくさん! さらにあのキャラやこのキャラも端々に登場し吉田戦車ファン必見の一品!!
<書店員のおすすめコメント>肉とめしって、そんな難しい縛りを設けなくても…、ってあら意外に続くじゃん。難問レシピを作るために奔走するくノ一・ハコベ。そして舞台は現代のP県(ぷりぷり県)。良い材料を揃え、かつ料理の腕前も手慣れたもので安定感抜群じゃないですか。一応、『ぷりぷり県』の続編だそうですが、設定を拝借しているだけでテイストは別物。新米忍者・ハコベの成長を見守れるのもミソです。相棒の忍猪・ニックもいい味出してるよ~。
擬人化海産物とたまに人間が海辺で活躍
<あらすじ>純情な小学三年生ウニのシンジ。ませた小学三年生ウニのトモヤ。強欲なウニ分校教師のウニ先生。シンジの同級生である杉村ハルコは人間で、ジェニファーはタコ。なんでも屋をしている文治おじさんはクラゲで…。シジミ汁港やアサリ汁ヶ浜といった不思議世界を舞台に繰り広げられる吉田戦車の少年少女向け(?)ギャグの数々!
<書店員のおすすめコメント>ウィキに書いてあるけどこの作品、ホントに”低年齢層向け”だと思う? 確かにウニの絵はかわいいし、週刊少年誌での連載だったし。でも私が親なら「まだ敷居が高い」といって取り上げるね。だって初回から顔面リアルなウニ先生が教えるのは「今日はここでナンパの勉強をしよう!」だよ。下半身裸の貝柱がワカメを売ってたりするんだよ。これは大人のファンタジーだよね、多分。だから、子供から説明を求められても困るぞ。