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古谷実

古谷実。1972年生まれ。1993年、「ヤングマガジン」にて『行け!稲中卓球部』でデビュー。同作はアニメ化されるなど大ヒットを記録。連載第3作目『グリーンヒル』まではギャグ作家としてのイメージが強かったが、その後の『ヒミズ』からは人生の不条理や、日常に潜む非日常等を描き出すシリアスな作風に。

(kkkkk/30代/男性)

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古谷実の全9作品を掲載!

徹底的なギャグで常識を揺るがすデビュー作
行け!稲中卓球部(全13巻)
表紙『行け!稲中卓球部』 - 漫画
行け!稲中卓球部(全13巻)
【連載誌】ヤングマガジン

<あらすじ>“変態”前野、“あしたのジョーおたく”井沢、“ムッツリスケベ”田中、“ハーフでワキガ”田辺ミッチェル五郎、“女殺し”木之下、そして部長の竹田。稲豊中学校、卓球部の六人は、今日も練習に励んでいた。ある日、前野に告白しようとする女子が現れた!前野と「女なんかくそくらえ会」会長と副会長の間柄だった井沢は激怒して…!?あの伝説のバカたちが帰って来た!

<書店員のおすすめコメント>当時の中高生でこの作品を知らないやつはいなかったんじゃないかと思うくらい爆発的にヒットした古谷実の連載デビュー作。ド直球バカの前野、矢吹ジョーに憧れるバカ・井沢、クソムッツリスケベの田中、悪臭ハーフ・田辺、イケメン粗チンの木之下、そんな個性派メンツを束ねる一番平均的な中学生男子・竹田。こうして特徴を書いているだけでキャラ立ちとは何たるかを教えられる気がします。大人になった今読み返すと、「バカでエロくて奇行に走ってみたりそのくせヘンに悩んでしまったりする思春期の中学生」を描いた作品としてはとても秀逸なんじゃないかと。作中における青春・性欲・ギャグのバランスがいいんですね。初期は望月峰太郎ライクな描線太めの絵柄だったものの、後半にかけてどんどんスタイリッシュになっていったのも印象的。後半、竹田が将来について考えるという回で「普通がいちばん素晴らしい」という考えが出てくるのですが、これこそがこの後の作品でも繰り返し描かれる古谷作品根底のテーマだと思っています。そもそもギャグとは「普通」(常識)を疑ったり揺さぶったりするものなわけで、本作で徹底的にギャグをしたからこそ、その後「普通とは?」を徹底的に問う作風が生まれていったのではないかと思うのです。

『行け!稲中卓球部』コマ
初見時に笑い転げたコマ
“異常”な三人は“普通”を目指す
僕といっしょ(全4巻)
表紙『僕といっしょ』 - 漫画
僕といっしょ(全4巻)
【連載誌】ヤングマガジン

<あらすじ>親ナシ、金ナシ、職もナシ。だけど俺らにゃギャグがある!『行け!稲中卓球部』の名匠・古谷実が問いかける、“人生って、何?”――母が死に、養父に捨てられた兄弟=すぐ夫(14歳)&いく夫(小3)。縁もゆかりもなく上京してみた“根無し草”ブラザーズは、シンナー依存症の辮髪(べんぱつ)孤児・イトキン(たぶん14歳)やイケメン秀才・カズキと、チン妙きわまる居候(いそうろう)暮らしをスタート。その手始めとして、出張ホスト会社「ホワイトペニーズ」をおっ立てるが……!?

<書店員のおすすめコメント>ある日突然親に捨てられたすぐ夫(14歳)&いく夫兄弟(小3)とシンナー中毒の孤児・イトキンが親切な理髪店のオジさんに拾われて(というか居座って)気ままな居候生活を……というのが本筋。社会の常識というレールを外れてしまった彼らが、普通に生きていくさまをギャグメインで描いていくのですが、設定がまず重いじゃないですか。状況的には全然笑えないはずなのに、その異常な状況を、常識と対比させることで笑いへと転化させるその手腕こそがギャグ作家としての古谷実の凄みだと思います。ハイテンションなギャグの間で唐突にハッとするようなセリフが来たりするので油断できません。ずっと不遇なすぐ夫たち……救いも何もない最終回もなかなかに衝撃です。

『僕といっしょ』コマ
急に来る重いセリフ
古谷実、ギャグ期の終わり
グリーンヒル(全3巻)
表紙『グリーンヒル』 - 漫画
グリーンヒル(全3巻)
【連載誌】ヤングマガジン

<あらすじ>『稲中』の古谷実プレゼンツ、ねっちょりGAGが青春全開フルスロットル☆――童貞生き腐れマンの関口(19歳)は、バイク乗りの激マブ嬢=みどりにZOKKONラブ!!“無免許&無バイク&無知識”のくせにガツガツモードに変身し、みどりの属するバイクチーム「グリーンヒル」にむりやり加入することに。しかしそこは、胸毛ボンな金満ニートに暴力硬派男、『僕といっしょ』のイトキンそっくり(!?)な男たちなど……猛獣ライクなハンパ者たちが、“バイク愛”に生きる聖域だった!!

<書店員のおすすめコメント>バイクチーム「グリーンヒル」の面々の悲喜こもごもを描いた作品で、『僕といっしょ』の主人公・イトキンが成長した姿?(明言無し)のイトーさんも登場。そんなイトーが、主人公・関口の、「自分は常識という柵から出られない羊」だという、いわば「普通であることの悩み」に対して語る、「俺は生まれも育ちも柵の外、柵のなかに入るために頑張って来た」というセリフは『僕といっしょ』を読んだ後だとかなりグッとくるものがあります。その他にも「不幸はダイオキシンや放射能のように人体に蓄積される」「人生最大にして最強の敵は“めんどくさい”だ」等々、作者の考えが割とストレートに出ている作品で、まさにギャグ期最終作にふさわしい仕上がりだと思います。

『グリーンヒル』コマ
個人的大名言
「普通じゃない」をギャグ無しで描くとこうなる
ヒミズ(全4巻)
表紙『ヒミズ』 - 漫画
ヒミズ(全4巻)
1~2巻ポイント50倍
全巻セットポイント30倍
【連載誌】ヤングマガジン

<あらすじ>人生って、とんでもねえぇぇぇ――!!超極端な不幸に巻き込まれずに生きる、ズーズーしき「普通の人間」たち。そんな彼らに憧(あこが)れつつも、激しい憎しみを抑えきれない中3男子・住田。彼の悩みは、「自分にしか見えないバケモノ」にとりつかれていることだった……。メガヒットGAG大作『行け!稲中卓球部』から一貫して、「人生とは何か?」というテーマを問うてきた漫画家・古谷実。その魂をつぎ込んで描き出される、圧倒的な「絶望の世界」!!

<書店員のおすすめコメント>それまでは古谷実を一応「ギャグのひと」だと思ってたこともあり、本作が連載開始されたときのキャッチコピー「笑いの時間は終わりました。これより、不道徳の時間を始めます。」の衝撃はすごかった…。これまでの作品ではギャグというエッセンスをまぶすことで笑いに転化したり誤魔化したりしていた「普通ではない、普通になれない人間」の悲哀や現実。それをとてつもなく醒めた目線で、かつリアルに描いているため、当然全くもって救いがない。そもそもタイトルのヒミズとは“日見ず”でモグラのことだそうで。人生において日の目を見ることなく、ただただ沈んでいく高校生・住田の悲劇にあなたは何を思うでしょうか。

『ヒミズ』コマ
14歳で全てを諦めた瞬間
普通と異常は薄皮一枚の差でしかない
シガテラ(全6巻)
表紙『シガテラ』 - 漫画
シガテラ(全6巻)
【連載誌】ヤングマガジン

<あらすじ>あこがれはバイク。恋心もほんの少し。そんな青春17遁走曲(フーガ)!!見た目も成績も「中の下」で、完璧イジメられっ子な17歳、荻野優介(おぎの・ゆうすけ)。ダメダメ平凡な彼の夢は、バイクの免許を取得して、教習所でチラ見している美人なゆみちゃんに近づくこと……。ムリめな妄想と諦(あきら)めてたのに、なんと彼女の方から急・接・近?これはあれか、ワナなのかっ!?青春という名の、毒やドロ沼がモニュッと凝縮。『稲中』の巨匠・古谷実による、「読んだら語りたくなる系」青春ドラマ!!

<書店員のおすすめコメント>主人公は普通の高校生。しかし彼の周りで起こるのは、普通じゃない事態。例えば同級生による監禁や暴行、そして殺人。彼女に盛られる睡眠薬。彼女の家の近所に住む、全てに嫌気が差した男。こう書くといかにも漫画的で、事件ありきのように思いますが、そうした派手さは一切ありません。主人公が何か行動を起こしているわけでもありません。話の流れで事件が起きそう……だけど起きなかったり、実際に事件が起きてしまったり。ことが起きるか起きないかの分岐にも大した理由はありません。まさに「たまたま」そうなっただけ。それゆえ、普通の日常というものは、あくまで平行棒のバランスのようなもので、いつでも転げ落ちる可能性があるものだと思い知らされます。現実には伏線などなく、なぜそれが起きるのかと言えば「ただそういうこと」だから、という無常さ。ラストで描かれる、無事に大人になった主人公のその後もとても現実的で、でも幸せという「普通さ」。しかしその普通、こそが得難いものなのだと思います。

『シガテラ』コマ
事件ってこう起きるんだろうなぁ…感すごい
小悪党たちの“悪意”のリアリティ
わにとかげぎす(全4巻)
表紙『わにとかげぎす』 - 漫画
わにとかげぎす(全4巻)
【連載誌】ヤングマガジン

<あらすじ>流れ星さん、お願いです。オレに友達を、友達をください――!!!!深夜のスーパーマーケットに生息するひとりぼっちの警備員、富岡ゆうじ、32歳。「恋ナシ友ナシ困難ナシ」の深海魚ライフを生きていたけれど、突然ながら「孤独は罪」だと気付いてしまったのである!!パンツ一丁で悶(もだ)えまくる、寂しき富岡の願い。これに応えてくれたのは、ラブレターならぬ「脅迫状」……!?32歳の超うす口な人生が、ブッ飛びドラマに大転換!!恋アリ友アリ困難だって……超いっぱい☆

<書店員のおすすめコメント>これまで「何も考えず、何もしていなかった」がゆえに友達がいない32歳の男・富岡。もうこの設定が辛い。しかし、それまでの自分の考えや行いを「間違ってた!」と反省した富岡は、そこから動き出し、知人は増え、彼を好いてくれる女性も現れ、とな~んとなくこのまま好転していくのかな?と思うのですがそうはいかない。『シガテラ』同様、転落の可能性なんて街中そこらじゅうにあるんです……。しかしこの作者は本当に「どこにでもありそうな悪意」をリアルに描くのがとてつもなくうまい。車泥棒をする若いニーちゃん、盗撮男等々、小悪党のリアリティがすごいんですよね。普通にその辺にいそう、というか。そしてそうした人がいつでも悪意を発露する可能性がある、ということを日常と非日常として物語にしていると。ただ『シガテラ』もそうなんですがヒロインが超素敵。明るくて賢いんだけどバカもできるという一緒にいて楽しそうな女性なんですよねー。大好きです。

『わにとかげぎす』コマ
気づけてよかった
快楽殺人者の哀しみ
ヒメアノ~ル(全6巻)
表紙『ヒメアノ~ル』 - 漫画
ヒメアノ~ル(全6巻)
【連載誌】ヤングマガジン

<あらすじ>人生、黄色信号点灯中! ゆらゆらと――ヒシヒシと――けっして交わってはならない2つの世界! ショボくれた青春を送ってきた岡田(おかだ)君。ビル清掃のバイトしかない、モヤモヤした日々。職場の先輩・安藤(あんどう)さんに相談したけど、逆に片思いのお手伝いをさせられる始末。同時期、岡田君の高校時代の同級生・森田(もりた)は、抜け出せない深い闇をさまよっていた――。

<書店員のおすすめコメント>『グリーンヒル』がギャグ期の終わりだとしたら、本作は「普通とは?という問い」の終わりではないでしょうか。主人公こそ「普通の男」ですが、話の中心になるのは殺人鬼・森田、自分の衝動を抑えられず殺人を繰り返す男。『ヒミズ』以降の作品が、「普通になりたい」という思いや、「普通であることの幸せ」を描いていたとしたら、この作品では「ならば普通になれなかった人間は?」ということを突き詰めて描いたものだと思います。最後の最後、「普通」に生まれることができなかった男・森田の、誰に向けるわけでもない、魂の独白――。「中学の帰りにさ…オレは完全に“フツーじゃない”って気づいた日の事…もう本当に悔しくて…その場で死にたくなった…泣いちゃったよ…」見開きでうずくまる中学生の森田、その姿に何を思えばいいのでしょうか。

『ヒメアノ~ル』コマ
この絶望感
「奇人の正義」は異常なのか
サルチネス(全4巻)
表紙『サルチネス』 - 漫画
サルチネス(全4巻)
【連載誌】ヤングマガジン

<あらすじ>関東甲信越のとある田舎街……。犬猫くらいにしか見向きもされない“残飯おとこ”登場!!『行け!稲中卓球部』『ヒミズ』の古谷実、2年ぶりの新作は、塩味たっぷりきいたシニカルコメディ。14年間、引きこもっていた残飯おとこが、自立をするため立ち上がる……。とはいえ、何もできるはずもなく、周囲に大迷惑をかけるだけ。己のため、“愛”のため、この想いをつらぬけるか!?

<書店員のおすすめコメント>主人公の夢はただひとつ、妹が健康で立派な大人になること――。もうそれはとっくに叶っており、肝心な自分は無職で何もしていない、他人から見たらいわゆる「やばい奴」。しかし本人的には「人生100点」というズレまくった認識をしていたところ、妹が「兄が結婚しないと結婚しない」と言っているというからさあ大変。最愛の妹の重荷になっていたとは!と一念発起するわけですが、とにかく主人公の思考がぶっ飛んでいる。そんな主人公に合わせるように、物語のなかには観念的な例えが多くなり、そのセンスや物の捉え方には思わず唸ってしまいます。しかし、ズレてはいるものの、この男には自分の芯があり、それは「どんなに辛く悲しいことが起こってもその時その時をがんばる」というもの。無茶苦茶な思考、行動がひたすら描かれてからのこのセリフには胸がギュっと締め付けられました。この男はこの男なりに必死で人生を生きており、そして本人が幸せなら誰が何と言おうと幸せなんです。誰にでも勧められる作品ではないのですが、刺さる人にはどうしようもなく刺さってしまう作品だと思います。

『サルチネス』コマ
ヤバみー
古谷実、ひとつの到達点
ゲレクシス(全2巻)
表紙『ゲレクシス』 - 漫画
ゲレクシス(全2巻)
【連載誌】イブニング

<あらすじ>バウムクーヘン職人・大西たつみは四十路にして初恋に落ちる。だが、その恋の行方は、文字通り迷宮入りに。次々に大西に降りかかる説明不可能な不自然現象。翻弄に次ぐ翻弄で、もはや大西は人とは呼べない存在に。この迷宮から無事に帰還し、再びバウムを焼ける日は戻ってくるのか。イブニング初掲載時から大反響を呼んだ古谷実最新作、いよいよ単行本解禁です!!

<書店員のおすすめコメント>「普通とは?」の問いの後に出てきた作品はまるで禅問答のような異質な作品でした。まるで夢を見ているかのような物語で、より観念的なセリフが増え、もはや哲学! 「世の中にいてもいなくてもいい比率が半々の人」がなってしまうという、人間をデフォルメしまくったような見た目の“ゲレクシス”という状態。それになってしまった男が元に戻ろうとする奮闘記……という説明が合っているのかどうなのか…。ただ、マンガでしかできない表現でありギャグともシリアスとも言い切れない、古谷実という作家のひとつの完成形な気がします(人によって好みがかなり分かれそうですが……)。

『ゲレクシス』コマ
絵もセリフもかなりの突き抜け感
  • ご注意事項
  • ※本ページに掲載している連載中作品の巻数は、2018年5月時点のものです。