美を探求する唯一無二のアートコミック
<あらすじ>芸術・美術界を舞台に繰り広げられる、”美”をめぐるヒューマン・ドラマ。贋作専門の画廊「ギャラリ-フェイク」のオ-ナ-・藤田玲司は、贋作だけではなく美術品のブラックマ-ケットに通じ、裏では盗品や美術館の横流し品を取り引きしている。そんなフジタのもとには、表に出せないさまざまな依頼が舞い込んでくる。
<書店員のおすすめコメント>人の一生は短いけれど、優れたアートは後々まで世の中に影響を与えるんだな、と読んでいてつくづく思います。モナリザやゴッホ、ゴーギャンから始祖鳥の化石や銭湯の絵まで。作中、フジタはあらゆる”美”に対して形はどうあれ敬意をもって向かい合い続ける。そしてその行為も他者に影響を与えることになり、例えば16巻のW杯チケットの話などが生まれる。奥深く永遠の存在である世界にフジタという案内人を立て、誰しもが楽しめる娯楽として成立させている名作。そう、この作品自体もアートといえるんじゃないでしょうか。芸術の意義をここまで意識することができるようになったことに感謝、そして連載再開に感謝です。
マジックを駆使して悪党に鉄槌を下す
<あらすじ>2つの顔をもつ男が弱者を救うため、手品を駆使して悪党に制裁を加える勧善懲悪ストーリー。消費者金融「月影ファイナンス」の営業員・春居筆美は気弱で押しも弱いダメ社員で、他の社員たちには使いパシリにされるようなドンくさい男。だがその正体は「月影ファイナンス」のオーナーであり、凄腕のマジシャン・Dr.WHOOだった。
<書店員のおすすめコメント>春居筆美=はるいふでみ。手品好きの人ならピンときませんか。そう、これは奇術師のハリー・フーディーニをもじったもの。芸が細かいですね。春居のもうひとつの顔にはマジシャンのバックボーンがあり、奇術を駆使して善良な市民から巻き上げた金を悪党から回収する。私もそうですが、手品に興味のある人にはさらに楽しめる見どころのある作品です。ただその手法は結構えげつない。これをやられたらトラウマにもなりますよ。
アニメにもなった少年誌時代の代表作!
<あらすじ>ちょっとエッチな忍者ラブコメディー。忍者を養成し現代社会に送り込むのを目的とした高校、私立忍ノ者高校。そこに創立者の孫・猿飛肉丸が転入してきた。校長の可愛い娘・霧賀魔子とデブでスケベな肉丸は幼馴染でなぜか大の仲良し。魔子のピンチには必ず肉丸が駆け付け、「神風の術」などの忍術を駆使して窮地を救うのだった。
<書店員のおすすめコメント>私が最初に読んだ細野作品で、その印象はまさにドラマ版の『アオイホノオ』においてホノオが語っていたのと同じ。「カッコイイ絵柄でギャグをやる」を思いつき喜んでいたら、先にやられていて衝撃を受けるというもので、配合の妙に感銘を受けたものです。意外に肉丸はリアルな顔していますし、緒形先生なんか「男組かよ!」と思いましたもん。その辺、ツボにはまって『増刊少年サンデー』、定期購読するはめになりました。
肉丸・魔子が成長した姿で世界を駆ける
<あらすじ>30年以上の時を経てあの忍者ラブコメが復活。世界に通用する忍者育成を目的とした「忍の道学院」。24歳になった魔子はエリートが集まる学院の中で奮闘するものの、勢力を拡大する外国人組の前に押され気味。そんな中、FBIアカデミーから肉丸が帰ってきた。外国人組とひと悶着あった後、肉丸は編入テストを受けることになる。
<書店員のおすすめコメント>正直、今さら荒唐無稽な忍者ものを描くのはどうかと思ったのですが…。やはり細野不二彦、さすがですね。現代の環境に舞台を置き換え、諜報活動的な匂いを漂わせつつ忍者本来の超人的アクションをメインにして、かつ肉丸と魔子の関係性もおろそかにしない。新旧読者を満足させる抜群の仕上がりです。30年以上たっているので当然ながら絵柄も今風の作画ですが何の違和感もないです。いや、風魔小太郎は別人のような気もするが。
愛憎の果てにたどり着いた結末とは
<あらすじ>テレビ業界を舞台にしたサスペンス。倒産寸前の芸能事務所を経営する鯨岡のもとに、謎の女が現れた。彼女の名は天宮詩織。北海道のFM局でアナウンサーをしていたが、テレビの世界で実力を試したいと考えて上京したという。やがて天宮はその類まれなる美貌と卓越した才能を武器に、欲望渦巻くテレビ業界でのし上がっていく。
<書店員のおすすめコメント>テレビ業界でしたたかに生きる女の物語、と思ったら大間違い。半分は正解。ですが、もう半分こそが、作品を何倍にも魅力的にしている肝の部分なのです。それは主人公・天宮の過去に関わること。その顛末は「谷口ハジメの回想」として語られ、メインストリームに絡み始めたとたん、物語は怒涛の展開を見せる。そしてラストは細野作品の中では他に類を見ないもの。ここはできれば、いや是非、見開きで見てもらいたいです。
様々なジャンルが楽しめる贅沢な作品集
<あらすじ>多作である細野不二彦が長期連載の合間をぬってビッグコミック、ビッグコミックスペリオール、スピリッツなどの各誌で発表した読切作品を収録。作品は仮想世界と現実生活が交差する恋愛モノ、超がつくベテラン刑事が活躍する刑事モノ、そしてあの名作の読切など、読み応えがあるものばかり。「匠の技」が冴える珠玉の短編集。
<書店員のおすすめコメント>『ギャラリーフェイク』短編が各巻に1話ひとつずつ入っているのがあざと……、くはないですね、コレ。代表作の特別編が各巻に収録されていますし、ギャグありシリアスありで、どの世代の人も入り込める構成。いいとこどりで作者の多才さを垣間見ることもできる作品集です。私のようなヘビーファンにとっては雑誌掲載時に見逃した作品を読めるのは本当にうれしい。この調子で初期作品も出して欲しい…という欲も出ちゃいます。
学生映画サークルを舞台にした青春活劇
<あらすじ>大学の映画サークル「あどりぶシネ倶楽部」の部員たちの人間模様を描く青春活劇。監督の神野は単なる学生映画ではなく商業作品を意識して映画を製作していた。そんなある日、プロデューサーの片桐が佐藤という優秀なカメラマンを連れてきた。最初は反目する神野と佐藤だったが、やがてふたりはお互いの実力を認めるようになる。
<書店員のおすすめコメント>この作品を読むと懐かしさがこみ上げる。実は私も学生時代に映画を撮っていて、作品内の人物と自分たちがダブってしまうのです。若さゆえの熱さや未熟さ、そしてこの先、映画にどう関わっていくか。若者は、わいわいしながらも自分の身の程を知って、作中の神野や片桐のように結論を出していくのですよ。昔の仲間たちもそうだったよなあ。この感覚を味わうにはうってつけの青春ドラマなんだけど、ああ、何かこそばゆい。