朔ユキ蔵先生の全6作品を掲載!
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迷えるアラサー女性の慟哭
【掲載誌】「ビッグコミックスピリッツ」
【あらすじ】
小津晃太朗、25歳。3年間の会社員生活から転職し、小田原女子高等学校に社会科教諭として赴任。春爛漫な新天地「女の園」で出会ったのはお年頃の女性教諭! 英語教諭の原多香子は32歳の独身で……!? 朔ユキ蔵が贈る、女子高ラブ・ストーリー!!
【書店員のおすすめコメント】
自分にある種の性癖を植え付けてくれた作品。学生の頃本作を読み「年上女性の魅力」を教えていただきました。
内容は、転職して女子校に赴任した主人公・小津晃太朗(オヅコウタロウ)と、上司である原多香子(ハラタカコ)との恋愛漫画。とにかく、ヒロイン多香子(通称:タカコサマ)が可愛らしいのです。32歳とそこそこ大人なので、普段は凛としているのですが、ひとたび教室を離れれば、ビールをグイグイ飲んだり、恋愛に奥手でモジモジしたり、ちょっとした失態があれば「あーあー」と後で悩んだり……この普段とのギャップが愛くるしいんです。30過ぎた大人ってもっと落ち着いているものだと思っていただけに、このガタガタっぷりに当時の私は萌えたのです。(ただ、タカコサマ、奥さんがいる人と不倫していたり、婚約者がいる主人公と三角関係に突入したりと、ギャップ萌えだけでなく大人な苦味も与えてくれます。)
迷えるアラサー女性のリアルな恋愛をご堪能ください。ダメだとわかっているはずなのに……
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生と死 心と体 すべて移ろいゆく それが「無常」
【掲載誌】「ジャンプ改」
【あらすじ】
望んで(?)望まれて(?)実家の副住職となった佐伯清玄29歳。僧として妻を娶らないと心に決めている清玄の生活は、言葉とは裏腹に色欲に負けっぱなしで……。今日もまた、“言い訳たっぷり悶々ライフ”が始まります!!
【書店員のおすすめコメント】
お寺の副住職である佐伯清玄(さえきせいげん)と、マラソン選手の元日本代表である清沢節子(きよざわせつこ)がお見合いをすることから始まる本作。清玄は僧侶として自戒しなければならない身でありながら肉欲に溺れ、ヒロインの節子はライバルに負け続けたことから嫉妬と憎悪に支配されているという、ともに煩悩まみれた状況。そこから仏教の教えを通して、ままならない「自分の気持ちのあり方」を少しづつ整えていきます。この教えが、誰しもあてはまる感情だけに非常にしみるのです。また昨今のお寺の経済事情にもふれており、現代社会における宗教的価値観の変遷を描いているのも特徴。宗教ってどうしても敬遠してしまいがちなのですが、いつの時代もどんな人でも同じことで悩むし、それに対し宗教は一定の答えを与えてきたのだと本作を読んで痛感しました。生きることは悩むこと。悩み多き現代人に一つの光明となる1冊だと思います。
煩悩に苦悩 流されて自己嫌悪
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女優、アイドルとの接待セックスをするハードなお仕事
【掲載誌】「ビッグコミックスピリッツ」
【あらすじ】
アイドル好きのさえない大学生・卓郎は、超難関であるお台場TVの新卒採用に応募する。サバイバルレースに勝ち残った体力が評価され、特別技術職に内定するのだが、30年ぶりに新人が配属されたその部署の業務内容はアイドルや女優、女子アナとのセックスだった! 卓郎にとって夢のような仕事と思いきや……!?
【書店員のおすすめコメント】
アイドル大好きな主人公・露崎卓郎(つゆざきたくろう)は、その並外れた精力を見込まれてTV局の「特別技術職」に就職する。その部署は、自局を優遇してもらうため、アイドルや女優との「接待セックス」をする部署だった。アイドルに憧れていたので夢のような職場に興奮するが、何かと条件や裏があって……という話。アイドルと女優とできる、この全男子の妄想のような突き抜けたエロは、良い意味でおバカな作品です。ただ、エロ特有の露骨な下品さは少なく、それよりもギャグテイストでポップに描かれている感じは、ハードなエロよりちょいエロ位がちょうどよい人におすすめしたい作品です。
返す言葉もありません
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愛のままに わがままに オナニー
【掲載誌】「ビッグコミックスピリッツ」
【あらすじ】
自分のペースでアプローチしてくる彼女。職場の親睦のためと称した定例の飲み会。そんな状況に微かな煩わしさを感じつつも、抵抗もせず受け入れて生きている国木田陽一。ある時、職場の図書館で貸出人気の高い、マスターベーションに関する学術書の存在に気づく。同僚はその話題で盛り上がるが、陽一には、実はオナニーの経験がなく……!?
【書店員のおすすめコメント】
かつてここまで「オナニー」に真剣になった漫画があっただろうか。いや、ない!(たぶん)主人公は、謎にモテてたことから性行為が基本となり、一度もオナニーをしたことがないという男性。結果として、自分本位に性欲を解放することができず、20代過ぎてからオナニーに興味をもって探求し始めるというお話。「オナニーに何もそこまで……」と言いたくなるような、謎にストイックな姿勢と行動力は、逆に笑いを誘います。同じように研究している仲間をみつけて切磋琢磨したり、同僚の女性「泉さん」をいわゆるネタにしたり(そしてそれをはばからず公言したり)色々ヤバイ方向にいきますが、男性諸氏ならわかってくれる……はず!
性行為にも喜びを見いだせず男はオナニーを探究する
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悲しくも美しい「別れ」と「再会」
【掲載誌】「flowers」
【あらすじ】
予想外の展開とラストに衝撃が押し寄せる表題作ほか、さまざまなキャラクターや状況の「別れと再会」をテーマにした感動の短編集。○収録作品 70年の時を越え、現代に戻ってきたサチコ。10年間暮らした過去との絆を鮮やかに描いた『帰ってきたサチコさん』、幼い頃の荒唐無稽な思い出が蘇る『かりそめ』、引退したアイドルへ憧れ続けた少女の半生『走れみつる』、国を捨てた父と残された者の思い『心ここにあらざれば』、ベストセラー小説と弟の最後の言葉『劇的』の5作品を収録。
【書店員のおすすめコメント】
エロスの影は潜め「別れと再会」をテーマにした短編集。著者の描くキャラクターはどこか影があって、物悲しい印象なのですが、それとこのテーマが見事にマッチして良い味を出しております。表題作『帰ってきたサチコさん』は、主人公サチコが、過去にタイムスリップして現代に戻ってきた所からはじまり、過去と現代の出来事を断片的に語っていく構成。1970年代にタイムスリップしたサチコは、その時代で結婚し子供をもうけ10年の歳月を経ますが、夫も子供も残して再び現代に戻ってきてしまう。ただ現代に戻っても自分の居場所を感じられず、過去に残してきた夫を探しはじめて……というお話。サチコにとっては一瞬の別れでしたが、残された夫にとっては、何十年という月日が流れているわけです。その間も、サチコを想い続けた夫の描写はひたすら感動します。
本作以外も、作者特有の悲しくも美しい「別れ」と「再会」の表現が満載な短編集です。是非、お試しください。タイムスリップしたサチコ どっちの時代を選ぶのか?
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全てを惹きつける「天才」の圧倒的存在感を描く
【掲載誌】「月刊モーニングtwo」
【あらすじ】
1935年、演劇を学ぶ少年たちが集う千鳥芸術学校。「舞台の真ん中に立ちたい、スターになりたい」という夢に向かって、誰よりも激しい努力を重ねる少年・千鳥敬太郎と、彼の前に現れた、秘密を抱える新入生・麦蒔摂。“才能”をめぐる格闘の物語がいま、開幕のベルを鳴らす。演劇の天才vs.秀才を描く、朔ユキ蔵渾身の最新作! 努力は才能を超えることができるのか──二人の闘いから目を背けてはならない。
【書店員のおすすめコメント】
才能があって努力も惜しまない主人公・千鳥敬太郎(ちどりけいたろう)。演劇学校で、首席間違いないと噂された彼の前に、地方から来たという麦蒔摂(むぎまきせつ)が圧倒的才能で立ちはだかってきます。理事長からも「神に選ばれた」と称される才能。持つものと持たざるもの。敬太郎と摂は学生寮で同室になり、あらゆる場面で摂の異能を目の当たりにしていきます。しかし、圧倒的な才能を前に敬太郎が感じたのは挫折や絶望ではなく、野心とも言える更なる向上心でした。自らの才能のなさを自覚しても腐ることなく立ち向かう姿勢は、凡庸さで嘆く多くの人に共感できるシーンではないかと思います。努力できることも、また才能なのだと感じます。
1935年代第二次世界大戦前という激動の時代に、才能を問い、芸術を問う二人の運命を是非ご覧ください。「天才」は存在だけで何かが起き、全てを変える
【ご注意事項】
- ※本ページに掲載している連載中作品の巻数は、2020年8月時点のものです。
朔ユキ蔵(さく ゆきぞう) 栃木県出身。1997年、「コミックライズ」(メディアックス)に掲載された『きのうの裏庭』でデビュー。青年誌に活躍の場を移し、2002年『つゆダク』2005年 『ハクバノ王子サマ』 2008年『セルフ』を『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載。『ハクバノ王子サマ』は2013年にテレビドラマ化もされた。
(書店員:六文銭/30代/♂)