<あらすじ>蔵の中に、500年も閉じこめられていた妖怪……ヤツはその昔、人を食い、悪業の限りを尽くしていた。ひょんなことからヤツを解き放ったのが、蒼月潮。うしおはヤツを「とら」と名づけた……。うしおととらの伝説が、いま、幕を開ける!
<書店員のおすすめコメント>「何のまんがが好きなの?」と聞かれたとき、答えが2パターンあります。誰でも知ってるような有名どころの大名作。そして、知らない人もいるかもしれないけど自分の好みや価値観を作ったような個人的大名作。『うしおととら』は自分にとってそのどちらにも属する珍しい作品だと思います。とにかくもう好きな場面、シチュエーションが多すぎるんですが、ひとつ例を出すとするなら「以前出てきたキャラクター総登場での最終決戦」という終盤の展開。すべてのキャラ、エピソードはこのためにあった…!と感じる流れには胸を熱くせざるを得ません。その点以外でもとにかくこの作品は最終決戦の熱量がハンパないので、まるで自分もともに戦ってるような気分になります。また、オトナになってから読み返すと、主人公・うしおがあまりにもまっすぐなので、「自分は真っ当に生きているのだろうか?」なんて考えてしまったり……。自分のなかで“少年まんが”というジャンルにおいてはこの作品を超えるものはないのではないかと思ってます。
<あらすじ>大正時代より、東京・沼半井町に傲然とそびえ立つ奇怪な屋敷、名を「双亡亭」。立ち入った先で闇と出会ってしまったら、もはや己は己でなくなるだろう。遺恨を辿る者達はその門戸へと導かれ、集い、挑む。おぞましき屋敷を破壊する為に…!!
<書店員のおすすめコメント>再び少年誌に舞台を移しての最新作。入ったものが帰ってこない、ミサイルを撃っても壊れない、という「双亡亭」を何とかして壊せ!(総理の命令)というお話。こう書くと荒唐無稽なんですが本当にそうなんだから仕方ない。これまで『うしとら』『からくり』といった長編では広い世界の話を描かれていたわけですが、本作は本当に舞台が狭い。だって基本的には街中にあるデカい屋敷だけが舞台ですからね。まあその屋敷の中はどエラいことになってるのである意味無限大に広いとも言えるのですが……。そんな「いいハッタリ」の効きまくった本作はまだまだいろいろと話の広がりもありそうなので、続きが楽しみです!
<あらすじ>大人気最強妖怪アクション『うしおととら』番外編。うしおの父・紫暮と母・須磨子の物語や、とらがうしおと出会うまでの物語など珠玉の短編を収録!!
<書店員のおすすめコメント>『うしとら』のスピンオフ作品なわけですが、一番好きなのは符咒師・ヒョウの修行時代を描いた短編。本編ではそのクールさでアツくなるうしとらコンビを諌めたり、仇を見つけたときには復讐に身を燃やしていたヒョウですが、ここでは、「もう自分には何も無い」と泣いたり女性の胸で泣きじゃくったりと意外なヒョウを見ることができます。他のエピソードも良くできていて、外伝というか本編どこかに組み込まれててもおかしくない話ばかり。『うしとら』はどのキャラクターも魅力的なので、できれば全員分こうした物語を読みたいもんです。
<あらすじ>遺産相続絡みで命を狙われる少年・勝と人を笑わせないと死んでしまう病にかかった男・鳴海、そして勝を助けるためにからくり人形を操る女・しろがね…。三人の運命が交錯する時、“笑顔”の本当の意味が…!? 欧風熱血機巧活劇、ここに開幕!!
<書店員のおすすめコメント>とにかくプロットが複雑! 話の筋が過去へ行ったり現代に戻ったり、登場人物の設定もクセがあるためちょっと読んだだけだと「ん?」となってしまうかもしれません。しかし! 全体が把握できればそこからはもうノンストップ!話やキャラ設定がすべて繋がったときの「そうだったのか!」感が気持ちいいんです! 果たして作者は連載開始時にどこまで考えていたのか……連載しながら話を展開し、最終的につじつまを合わせたというのであれば凄まじい豪腕です。また、『うしおととら』もそうなんですが、端役や敵キャラにもきちんと物語が用意されてるんですよ。だからこそ出てくる全員に何かしら感情移入をしてしまい、結果やたらと心を揺さぶられてしまうという……。個人的には敵の自動人形(オートマータ)「最古の三人」が機械のくせに人間くさくて好きでした。
<あらすじ>ある月の青い夜。月光と演劇部の前に、おとぎばなしの住人・鉢かづき姫が、いきなり本の中から現れた。彼女は、不思議な月光でねじれてしまった「おとぎばなし」の世界をもとに戻すべく、「月光条例」を執行する人間を求めてやって来た使者だった。偶然、条例の<極印>を授かり執行者になってしまった月光は…!?
<書店員のおすすめコメント>作者が「マッチ売りの少女」の結末に納得がいかない!ということで「童話」をテーマに描いた作品。古今東西の有名童話をモチーフに話が展開していきますが、まんがという物語のなかでさらに「ものがたり」を扱うということで、ある意味メタ的な構造になっています。それを利用した大胆な仕掛けがこの作品にはありまして、後半、作中で「“ものがたり”が世界から無くなる」という展開になった際に、この作品自体も……連載当時話題になったこの展開&表現はぜひ見てほしいですね!
<あらすじ>東京湾で座礁した米軍の空母から、一羽の鳥が逃げた。そのことで多くの兵士が死ぬ。さらに東京の街中にやって来たその鳥は、空前の死者を出す。その鳥とは、その眼で見られた者はすべて死んでしまうという一羽の恐ろしいフクロウだった。かつて猟師仲間とともに、そのフクロウを一度は撃ち落とした鵜平は、米軍の要請を受けて、再び銃を取る――!!
<書店員のおすすめコメント>「見たものを殺すフクロウ」vs. 凄腕猟師というのが大筋なのですが、その設定がいい!「なぜかわからないがそのフクロウに見られたら死ぬ」ってハッタリ効いてていいですよね。TVを通じてでもダメってことで、マスコミが映しちゃった映像を見て全国420万人が即死するというまんがだからこその荒唐無稽さ! でもそれが「馬鹿馬鹿しい」にならず物語としてキッチリ面白いのがすごい。対する老猟師・鵜平がまたかっこいいジジイなんです。かつてフウロウと対峙し、大切なものを失ったという過去を持ち、漂う悲哀がたまりません……。1巻でキッチリまとめきった良作です!
<あらすじ>19世紀・ヴィクトリア朝初期のロンドンで、女性ばかりを狙った連続殺人事件が発生。現場では、高笑いしながら跳び去る怪人の姿が目撃されていた。3年前、夜道で女性たちを驚かせたという「バネ足ジャック」が殺人鬼となって帰ってきたのか?事件を追うロンドン警視庁の警部は、意を決してある「貴族」の館へ馬車を飛ばす……。藤田和日郎の新境地! 熱き活劇の名手が奏でる怪奇と冒険と浪漫の協奏曲!
<書店員のおすすめコメント>青年誌の初連載作にして不思議な犯罪証拠品を収蔵しているという「黒博物館」シリーズの1作目で、「切り裂きジャック」ならぬ「バネ足ジャック」の物語。舞台がヴィクトリア期のロンドンなのですが、ちょっとゴシックで、「不思議なことが起こりそうな時代」というのが藤田作品にはピッタリ合っています。主人公はちょっと悪ぶった貴族なのですが、その悪ぶった顔の裏にはある女性を思う深い気持ちが……。とにかく心理描写や台詞回しが秀逸。青年誌連載ということでよりキャラの内面を掘り下げた作品なのでしょう。藤田和日郎作品の特徴である「人が何かによって変わる瞬間」をキッチリ味わえる作品ですね。
<あらすじ>ロンドン警視庁の犯罪資料館「黒博物館」に展示された“かち合い弾”と呼ばれる謎の銃弾。ある日、それを見せてほしいという老人が訪れたとき、黒衣の学芸員は知ることになる。超有名な「お嬢様」と、「もうひとり」が歴史的大事件の裏で繰り広げた、不思議な冒険と戦いを…! 藤田和日郎による19世紀英国伝奇アクション、超待望の第2弾がここに開幕!!
<書店員のおすすめコメント>『スプリンガルド』に続く黒博物館シリーズの2作目。人の悪意=生霊が見える女性・ナイチンゲールは、ひょんなことから出会った幽霊・グレイに「自分が絶望したそのときは私を殺して――」とお願いをし、その時が来るまでともに行動することに。史実とフィクションを交えながら、クリミア戦争におけるナイチンゲールの奮闘が描かれていきます。ただ患者のためにすべてを捧げるナイチンゲールのまっすぐさ、そんな彼女にどんどん惹かれていく幽霊・グレイ。「自分を殺そうとする相手との奇妙な関係」というのは『うしおととら』に似ていて思わずニヤリ。この幽霊・グレイは基本的にはクールでなのですが、最後の最後にとびっきりの笑顔を出すんですよ……! 藤田和日郎はこういう溜めて溜めて……からの笑顔が本当にうまい。こっちはわかってても絶対泣いちゃうんですよね……。
<あらすじ>新人コミック大賞入賞のデビュー作「連絡船奇譚」、美しき姫と若き忍者の大活劇「からくりの君」、探偵・削夜秋平が登場する怪奇ロマン「夜に散歩しないかね」など全5編を収録した藤田和日郎、初の短編集。
<書店員のおすすめコメント>読みきりデビュー作「連絡船奇譚」などを含む短編集ですが、読んだ最初の感想は「最初っから作風変わんねぇ(だがそれがいい)!」でした。後の『からくりサーカス』に連なる「からくりの君」、同じく『からくりサーカス』の登場人物が使う拳法・形意拳の使い手の物語「掌の歌」などその後に繋がる要素を含んだ作品はもちろんなのですが、そのほかの作品も藤田和日郎エッセンスがこれでもかと! この人の短編作品はどれも終わりがいいんですよね。余韻があるというか。ただ辛いだけ、みたいな終わりがないので安心して読めます。
<あらすじ>これぞエンターテイメント!! 2003年最高傑作読切と評された「美食王の到着」や、記念すべき初の青年誌作品としてヤングサンデーに掲載された「衝撃の虚空」など、全4編を収録した短編集第2弾!!
<書店員のおすすめコメント>収録された短編「ゲメル宇宙武器店」がすごい。何がすごいかっていろんなまんが家がメカニックデザイナーとして関わっている。『帯ギュ』『モンキーターン』の河合克敏、『俺たちのフィールド』村枝賢一、『烈火の炎』安西信行etc.。その豪華メンツがデザインした宇宙船や武器で、わりとアホっぽい(ほめ言葉)ドタバタコメディを繰り広げる。メンツの無駄遣いはなはだしい!あとコメディなのにバトルシーンとかが本気すぎてギャップがすごすぎる。藤田和日郎や90年代サンデー作家が好きなかたは必見の短編かと!