上條淳士先生の全9作品を掲載!
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後の音楽まんがに多大な影響を及ぼした80年代の代表的コミック
【掲載誌】「週刊少年サンデー」
【あらすじ】
藤井冬威(トーイ)は16才。パンクバンド「GASP」のヴォーカル。現在はライブハウスでの暴力沙汰により活動停止中。そんなとき、歌手の森ヶ丘園子でありトーイのガールフレンドでもある日出郎がステージ乗っ取り計画を立てた。トーイの歌声は、「退屈」ってやつをブッつぶせるか……!?
【書店員のおすすめコメント】
80年代、連載時にリアルタイムで読んでいた世代ですが、今でも時々読み返す私のバイブル。この作品が切っ掛けで音楽に嵌り、ライブハウスに足しげく通ったものです。作者の上條先生は多くのミュージシャンとも交流があり、根っからの音楽好きで有名。そのため当時のインディーズシーンの空気感や、作中に登場するバンドのライヴシーンの描写がリアル。今読んでも当時の空気感が蘇ります。かと言って、まったく古臭く感じないのは音の表現方法のせいでしょうか? 作中の演奏シーンは楽器の擬音こそあるものの、トーイが歌う場面で歌詞など全く出さず、躍動感のみで表現。それでも読みながら音を感じられるのは緻密な線を特徴とした画力の賜物。後発の音楽まんがに多大な影響を与えているのです。音以外に注目してほしいのが街の描写。もう今は残っていませんが、新宿のライブハウスなど実在した場所が描かれているので、作品がより身近に感じられます。
都有13号地でのライヴシーン。ステージで歌うトーイと踊るニヤの対比が印象に残る。
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福生・沖縄・横須賀──。“金網のある街”を舞台に描くハードボイルド作
【掲載誌】「ヤングサンデー」
【あらすじ】
沖縄で夏だった──東京・福生に住むカホは、中学の修学旅行で訪れた沖縄で、幼なじみのナツを捜している。あてもなくさまよう街で、出会ったのはユキ。カホは6年間会っていないナツと同じ匂いを感じる。しかも、いとも簡単に車を盗むこの男、どうやらナツのことを知っているらしいのだ。「これで共犯だ…」曖昧な関係のまま、カホとユキは、ナツが向かったという那覇へ──。沖縄、福生、横須賀…基地の街を駆け抜ける、“恐るべき子供たち”のクライムアクション。
【書店員のおすすめコメント】
『TO-Y』連載終了後、次に発表されたのが本作。もう35年も前の作品ですが『TO-Y』同様、今読んでもまったく古さを感じません。普遍的な作品を作るのは簡単なことではないと思うのですが、ここが上條作品の凄いところ。連載当時はまだ10代だったので理解できない部分もありましたが、あらためて読み直すとなかなか深い味わいのある作品でした。ユキ、カホ、ナツ3人の関係性は、恋愛脳の女子高生じゃなかなか理解は難しかったかもしれません……。ストーリーはヤクザの勢力争いや武器の密売など、なかなかハードボイルドな内容なのに、泥臭さがまったくなく、むしろスタイリッシュ。ロードムービーを1本見たような読後感。個人的には作中ではあまり語られないユキ(男)の過去とユキ(女)との関係が非常に気になります。上條先生、是非続編をお願いします!
これで共犯だ──。ユキとカホとナツ、3人の関係はユキのこの台詞から始まった。
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“蹴り”に魅せられた男たちの闘争
【掲載誌】「ヤングサンデー」
【あらすじ】
サキと一緒に街を歩いていたシバは、今日も路上でケンカをしてしまう。相手を軽く倒してしまった後でボクシングジムに足を伸ばすが、そこでも日本ウェルター級1位の城島と一悶着を起こす。その日の夜更け、シバはジムからの帰り道で能面をかぶった男に突然襲われる。そして、男は蹴りの一撃で彼をノックアウトしてしまった…。
【書店員のおすすめコメント】
男だったらみんな大好き、いわゆるケンカもの。強いヤツが最強!という分かりやすい世界観の上に成り立った、上條作品では珍しい作品です。ただ、単なるケンカではなく“蹴り”という攻撃方法に重点を置いているところが一癖あり。主人公のシバは日々ケンカに明け暮れるほど、最強と謳われている。しかし、ある夜、街で出くわした能面を被った男にたった一発の蹴りで伸されてしまう。そこからシバの能面の男・大石と“蹴り”への執着が始まります。能の舞いが特徴的な美しい線で描かれており、単なるケンカものとは一線を画す作品となっております。
暗闇での大石の一撃。シバはたった一発の蹴りで伸されてしまう。
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舞台は渋谷・ストリート。上條淳士が描くリアルな街の風景
【掲載誌】「ビックコミックスピリッツ」
【あらすじ】
生徒数たったの6人の、宇田川中学3年の教室。うららかな昼下がりの授業中に、ナナコは爆睡をカマしていた。そして、ふと目覚めてもらした、「来た…」という言葉。それを裏付けるように、教師はきょう転校生が来る予定だと告げる。しかしナナコは、窓の外を見つめたままでいた──。ブッ飛び系の14歳が、新たなシブヤの伝説を作る!?
【書店員のおすすめコメント】
舞台は過疎により閉校が決まった大都会・渋谷の中学校。7人しかいない生徒の内のひとり、マサトがストリートバトルで死んでしまうところから物語は始まります。ある日、マサトにそっくりな詠兎(エイト)が転校して来る。彼の目的はバトルの首謀者を探しマサトの仇を討つこと──。上條作品に出てくる10代はいつもどこか大人びた人物が多い印象ですが、この作品の彼らは今までの主人公たちと違い、10代ならではの熱さを持っているのが特徴的。相変わらず街の描写も素晴らしく宮下公園や宇田川町のレコード屋、クラブが立ち並ぶ道玄坂からの小道など’90~’00年代初頭あたりの渋谷が画の中に息づいています。ただ、こちらの作品は途中で打ち切りとなってしまい、アナザーストーリーとしての結末しか掲載されていない。出来ることなら、またどこかで詠兎(エイト)たちに会えることを期待しています。
マサトの仇を誓う詠兎(エイト)。彼の正体は謎に包まれている。
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武論尊×上條淳士だと!? これは読まずにいられるか‼
【掲載誌】「ビックコミックスピリッツ」
【あらすじ】
都心へ向かう高速バスが、カルト集団によってジャックされた。犯人の要求は逮捕拘留中の「ウータン教」教祖・林モモヨの即時解放だったが、警視総監・室田はSATに乗客もろともバスを爆破させるよう指令を出し、自爆テロと見せかけて事件を隠蔽しようとする。それを聞いた市民運動家・市村は、室田との面会を求めて警視庁に押しかけるが、この時もうひとりの男が“裁き”を執行すべく庁内に潜入しており…。
【書店員のおすすめコメント】
“傷ついた秩序の回復”のため、法で捌けない罪人に鉄槌を下す、超法組織・通称「D・O・G」。武論尊原作のハードボイルド作品ですが、上條淳士の手に掛かるとこんなにもスタイリッシュに。1話ごと完結で読むとスカッとします。
法で捌けぬ悪事なら“犬の法”にて捌くのみ。「目には死を! 歯にも死を!」
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カラーイラストが満載のTO-Yデビュー30年を記念した特装版
【掲載誌】「週刊少年サンデー」
【あらすじ】
To-y デビュー30周年記念! 「退屈ってやつを…ブッつぶす……」 バンドブームに沸く1985年。「週刊少年サンデー」誌上に発表された『To-y』は、それまでの漫画の常識を覆す表現で「音」=「Sound」を描き、数多の音楽漫画、ミュージシャンに影響を与えました。そして、上條淳士の美麗なタッチから生みだされたキャラクター達は世代を越え、今もファンを魅了し続けています。今回の単行本は『To-y』のデビュー30周年を記念した永久愛蔵版(全5巻)です。各巻、カバーイラスト描きおろしはもちろん。連載時のカラー(4色・2色)を初めて再現。上條氏自らがシーンを選びリファインしたイラストの収録。画集『1983SINCE』にも入らなかったレアイラストの収録。ファンへの感謝の想いを込めた全巻購入特典など、30周年に相応しいアイテムです。第1巻には、ニヤが主人公のスピンオフ短編『山田のこと』も収録します。
【書店員のおすすめコメント】
TO-Yのデビュー30周年を記念した特装版。5年前の出版時には個展も開催され、貴重な原画も販売されていました。私に財力があれば全部購入したのに! 巻末には過去に掲載されたカラーページや描きおろしイラストも付いています。1巻にはコミックスでは読めないニヤのスピンオフが収録されているので、かなりオススメです!
掲載時のカラーが再現されたG.A.S.P.の解散シーン。懐かしさに思わず涙。
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描きおろしイラストはもちろん、本編コマのカラーカットは必見!
【掲載誌】「ヤングサンデー」
【あらすじ】
SEX誕生30周年記念完全版! 「これで共犯だ………」 沖縄、福生、横須賀―― 基地の街をユキ、ナツ、カホが駆け抜ける。終わらない夏のストーリー、再び。1987年に発行されたムック「少年サンデーグラフィック・スペシャル-To-y-」の中で衝撃的なタイトルとともに設定が初公開された『SEX』。読者を魅了するだけに留まらず、音楽・映画・アート・アニメ等、ジャンルを隔てる境界線を越え、今も数多のクリエイターに影響を与え続けています。今回の単行本は作品誕生30周年を記念した新装版にして完全版(全4巻)です。各巻カバーイラストの描きおろしは勿論のこと「ヤングサンデー」連載時の4色原稿を再現いたします。そして20数年前、たった2巻しか出ることがなかった特装版『Sex』。その最大の特徴ともいえる、本文に配した贅沢なポイントカラーをあらためて全巻に施します。その他、上條氏自らがシーンを選びリファインしたイラストや、画集『1983SINCE』にも入らなかったレア画稿も収録いたします。「音」「時間」「空気」を革新的表現で描き、漫画映像表現の到達点とも称される傑作『SEX』の完全版をぜひその目で確かめていただきたい。
【書店員のおすすめコメント】
掲載から30周年を記念した特装版。特にこちらの作品は、巻末の描きおろしのカラーイラストのほかに本編のコマに所々色付けがされているのが特徴。主人公・ユキが色盲という設定なのもあり、ストーリーがより味わい深く読める演出です。
カラーで表現することでより印象的なカットに。ユキの目からは何色に見えるのか──。
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【ご注意事項】
- ※本ページに掲載している連載中作品の巻数は、2020年6月時点のものです。
上條 淳士(かみじょう あつし)1963年東京都生まれ。1983年『モッブ★ハンター』(週刊少年サンデー増刊号)でデビュー。代表作に『TO-Y』『SEX』など。デビュー35周年の際に作品集「東京」を発表。その原画展も開催した。
(書店員:李央奈/40代/女性)