家慶最晩年の黒船来航。そこからわずか14年で幕府は瓦解を迎えたイスラーム研究の泰斗として知られる山内昌之東大名誉教授の新たなる挑戦。徳川幕府の通史がついに完結!下巻は、黒船来航から大政奉還までの幕末を描く。嘉永六年(一八五三)、米国東インド艦隊司令官マシュー・ペリーが率いる四隻の黒船が浦賀沖に現れた。十二代家慶の最晩年である。以来、国内は海防と将軍継嗣問題で揉めに揉め続ける。騒動の中心にいたのは水戸家当主・徳川斉昭だった。声望ほどに実力が伴わない斉昭の言動に周囲は振り回され、その負の遺産が息子・慶喜の足を引っ張ることになる。関ヶ原から二百六十七年目にしてついに政権は徳川家の手を離れた。山内歴史学のもうひとつの到達点がここにある!担当編集者より最後の将軍となった慶喜は、家茂が薨去した後、徳川宗家は継ぐが将軍職は継がないなどと、ずいぶんゴネた印象があり、松平春嶽が「ネジアゲの酒飲み」と言うように、なかなか飲まないくせに、それでもどうぞと勧めないと機嫌が悪くなる、嫌な奴だと思っていました。しかし、本書を読んで、慶喜もたいへんだったなあ、としみじみ感じました。父・斉昭のおかげで、とにかく江戸での評判が悪い。側近が次々と暗殺されますが、犯人は身内であるはずの水戸藩士や幕臣であるのですから、慶喜もやってられなかったでしょうね。幕末維新史の見方が変わりました。
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