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古谷圭一(著)
“すでに無くなった教会の歴史ですが、1.記述は、キリスト教教職者でなく、神学、歴史学の専門でない自然科学の信徒である著者が書いている。2.その記述はそれぞれの時代のキリスト教全般との位置づけを行い、3.四谷教会に関連する日本の東部バプテスト系の彰栄幼稚園、同保母養成所(現在の彰栄専門学校)、バプテスト女子学寮、東京学院(現在の関東学院)などとの関連が密接であること、4. 普通の記念出版ではなく、客観的事実を追ったもので新しい歴史的発見が加えられて、5.まぼろしの建築といわれていた建築家アントニン・レーモンド設計の教会堂建設の経緯、6.戦中戦後の日本基督教団、日本バプテスト同盟設立の事情などが取り上げられています。本書は単なる一教会の記念誌的態度をとらず、日本のプロテスタント教会が明治以降にたどってきた戦争と平和に対する歩みの記録としての意味を読み取ることを意識した。具体的には、義戦論、反戦論の立場に立つ日清戦争から日露戦争に至る教派の違い、武士道的精神とキリスト教信仰の結びつきが強い渡部元牧師の教会にやってきた中村(坂田)祐が、日露戦争の戦いの現場において直接経験した戦争の非人間性のゆえに、教育界に転進する事例、第一次世界大戦後の景気が教会堂の建設に有利に働き、大衆の関心は戦争の悲惨さよりは部外者にやってきた経済的好況に戦争の罪を認識し損ねたこと、また、昭和初期から次第に強まる宗教法による国家統制の流れに、初めは信仰的論議が成された上での教会の対決が、次第に時勢に押されて本質的論議ないままで日本基督教団設立へと至ったこと、戦時中の異常時の中での生きることへの呼びかけ、終戦後この歩みについての罪の自覚のないままの日本の教会の流れの中での四谷教会の戦争責任への模索、それが教団からの教派独立の波と重なって解散へとつながったこと、これらの諸点は、戦後のキリスト教ブームの歩みの惰性の中に、信仰的深まりがないままに対立と衰退の現在の主流派プロテスタント教会の状態を省みる一つの足がかりとなるのではないだろうか。(あとがきより)”
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