まだテレビ中継がなかった時代――。玉音放送を担当し、NHK「話の泉」の司会で国民的人気を博したアナウンサー・和田信賢。彼は戦後初めて日本が参加する夏季オリンピックに派遣されることが決まる。念願だったオリンピック中継だが、無頼な生き方を貫いた和田は、長年の無理がたたって体調を崩していた。「どうしても、オリンピックを中継したい」その一心で、男は、大会の舞台・北欧ヘルシンキへと向かう。現地から「日本人を鼓舞する」中継を続けるも次第に病は重篤になり、ついに――。戦争に敗れ自信を失った日本人に、夢と誇りを抱かせてくれたヘルシンキ五輪。スポーツ小説の名手・堂場瞬一が、選手以上にその生きざまに惹きつけられたという主人公の魅力とは?※この電子書籍は2020年4月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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