【逝去直前まで推敲を重ねた津島文学の到達点】「津島さんはまだこの小説の中に生きていて、読む私たちとともに、奮闘している」――星野智幸(解説)でもあのことばだけは消え去らない。忘れていたはずなのに、ひどいことばを聞かされたという感触だけは残されていた。その痛みだけは忘れられなかった。(本文より)15歳で早逝したダウン症の兄との思い出、ヒトラー・ユーゲントの来日。「あこがれ」、障害、病気、戦争、差別、「不適格者」……大家族二世代の物語はこの国の未来を照射する。『火の山―山猿記』で第34回谷崎潤一郎賞・第51回野間文芸賞を受賞した著者による、絶筆長編。※この電子書籍は二〇一六年八月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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