もういちど、ガリヴァーを呼び戻すために――。名手・吉田篤弘が贈る、おかしく哀しく奇妙で美しい、色とりどりのおもちゃ箱のような短編集。それは、「テントン」と名乗る男から来た一本の電話が事の起こりだった。男の誘いに乗り、新聞記者のSはある島へ向かう。出迎えたのはミニチュアの家が連なる街と、赤児ほどの背丈しかない男。「ようこそ我らの王国、リリパットへ……奇妙な味わいの表題作「ガリヴァーの帽子」元作家と元シェフが暮らし始めた洋館に現れた王子の奇妙な顛末を描く「孔雀パイ」奇妙な夢の中で、川を下りながら鰻屋を経巡る「ご両人、鰻川下り」シャンパンの泡たちの短い一生を描いたおかしな寓話「かくかくしかじか」ほかに、コーヒーカップを持つと手がなぜか震えてしまう「手の震えるギャルソンの話」、彼女の残していったトースターをめぐる奇妙な出来事を描いた「トースターの話のつづき」など。読む人々を、不思議な世界へといざなってくれる、物語好きの大人のための8編。
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