小学生からの殺害予告に引きこもり人間からの告発――。文通会社に届くワケありの手紙には、手紙で立ち向かえ!「ねぇ、まめに手紙をくれてた人と急に音信不通になるって、どんな場合だと思う?」叔母さんが突然切り出した質問にたじろぐ、17歳の岳彦。叔母さんのむぅちゃんは秘密裏に、ILL(I love letter)という会員制の文通会社をやっている。年会費を納めると、会員は自分のペースでILLの社員宛てに手紙を書いて出す。毎日でも、ひと月に一度でも構わないが、姓と住所は本物を明記しなくてはならない。子供の頃、せっせと叔母さんに手紙を書いていた岳彦はその腕を見込まれ、ILLの臨時スタッフとして雇われることに。二年間、ずっとILLと文通していた水元さんに何があったのか。岳彦は叔母さんに変わり、水元さんに手紙を書き始めるが……。「ぼくはママをころそうと思います」――八歳の少年からの殺害予告や、「どうしても、あの恋文を見つけたい」――大女優からの無茶な依頼などなどの難問に、自分自身の言葉を便箋に書き連ねて向き合う岳彦。メールや電話では伝わらない想いがある――。温かくて切なくて、ちょっと怖い六つの物語。※この電子書籍は2016年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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