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宮西計三
80年代には黙殺されたこの才能を今こそ正当に迎え入れたい/松浦理英子(帯原稿より)。本書はペヨトル工房からの第二弾であるが-リリカ-から四年の月日がたっている。しかし内容は逆に-リリカ-以前のものが収められている。キャプションでもあるように-エステル-に至る道であり、宮西の“技術修練”を垣間見ることが出来る。作品は79年ブロンズ社刊「ピッピュ」と81年久保書店刊「薔薇の小部屋に百合の寝台」から自選した物で、いずれも77年~79年にかけて青年雑誌各誌に発表された作品である。なんと作者が18歳~20歳の間に描かれているというのだから驚いてしまう。宮西の言葉づかいは独特である、ここでその謎に触れておかなければならない。本書「Lyrica」の口絵にはタイトル下に《抒情》とある。では、その意図するところは? 抒情とは感情に訴える感覚であり、生来人に備わったが予感する能力とも言える。それは彼の追い求める感覚の総称であり作品はその予感の実体なのである。自ら捕らえようとしたものの姿がこれらの作品である。と、言いたいのではないだろうか。彼の文章は“詩”である。そこに音楽をつけるように彼は絵を描いてゆく。預言的感情に導かれ実体化した抒情…それが -Esther-における副題《あふれてくねるもの》なのではないか…では、あふれてくねるものとは何処へ? それは次回作で明らかとなるだろう。 収録作品:貧しきフリュート/嬲りのよる(ふたなりのよる)/鶏少年/花粉/エンゼルの丘/月の園/大きな黒い岩/メロンの岩/十七歳の妾/Chenges/Friend Angel No.5/ぼくのお尻にきみの勇気/肉体関係/充血果実/歓び、ふるえる/夜のつまづき/鬼百合秘/五月物語
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