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佐藤愛子
佐藤愛子九十歳・奇跡の話題作、待望の文庫化!老作家・藤田杉のもとにある日届いた訃報――それは青春の日々を共に過ごし、十五年間は夫であった畑中辰彦のものだった。「究極の悲劇は喜劇だよ」辰彦はそういった。それにしても、どうして普通じゃ滅多にないことばかり起るのか。当時の文学仲間たちはもう誰もいない。共に文学を志し、夫婦となり、離婚の後は背負わずともよい辰彦の借金を抱え、必死に働き生きた杉は、思う……。あの歳月はいったい何だったのか?私は辰彦にとってどういう存在だったのか?杉は戦前・戦中・そして戦後のさまざまな出来事を回想しながら、辰彦は何者であったのかと繰り返し問い、「わからない」その人間像をあらためて模索する。枯淡の境地で、杉が得た答えとは。『戦いすんで日が暮れて』『血脈』の系譜に連なる、かつて夫であった男と過ぎし日々を透徹した筆で描く、佐藤愛子畢生の傑作長編小説。
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