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山口瞳
後に映画化され大いに話題を集めた小説『兆治』を始めとして、1979年10月~1980年までに書かれた43作品収録。収録作品は、小説『兆治』(「波」1979年10月~1980年11月。単行本化の際に『居酒屋兆治』と改題)から、エッセイ「武蔵野写生帖9 回想の目白界隈」(「芸術新潮」1980年12月)まで、1979年10月から1980年までに発表された小説、エッセイ等43作品を初出掲載順に収録。 『居酒屋兆治』は、連作的長篇小説として「波」に連載されたときには、単に『兆治』という題であった。この、素っ気ない題名に、山本周五郎の時代小説の世界、たとえば、「さぶ」の世界を、現代に舞台を変えて書こうという山口瞳の意気を感じないわけにはいかない。愚直なまでに、損な道を進んでしまう不器用な兆治と、なにをしても不幸を呼び込んでしまうさよ、兆治に陰険な仕打ちをしたがる上司など、舞台を江戸時代の下町に変えると、このまま、山本周五郎の時代小説の世界になるのである。『兆治』を原作として、昭和の大スター・高倉健が主演した映画『居酒屋兆治』が、1983年に公開される。この映画では、舞台は北海道の函館に変えられ、それに伴って、兆治が辞めた会社が造船会社、さよが働いていたキャバレーがある旭町が、ススキノに変わっていた。 画文の紀行文『武蔵野写生帖』は、美術専門誌の「芸術新潮」(新潮社発行)に連載された。いつもの旅で相棒であったドスト氏の同行はなく、これまでの、絵と会話を楽しむ旅行とは違った印象の画文紀行文で、20巻、21巻の2巻に分けて全編を収録する。付録として、電子全集の総監修を務める、山口瞳の長男・山口正介が回想録「草臥山房通信」(20)を寄稿。
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