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田中千禾夫
1959年、岸田演劇賞、芸術選奨文部大臣賞を受賞した名作 ■原爆によってケロイドになった長崎浦上天主堂のマリア像が何者かによって、バラバラに盗まれている。戦争や被爆の体験を忘れようとする人々と、その爪痕を残し、記憶を風化させまいとする人々がいる。看護婦であり、夜の女にもなる美しい女・鹿。恨みのある男を探す美しいとはいえない女・忍。この二人とそれを取り巻く男たちや女たちの、様々な思いが時に詩的に、時に哲学的に語られる。また長崎弁のニュアンスと、挿入される劇中歌(芥川也寸志作曲)がドラマチックである。【著者】田中千禾夫:1905年、長崎市生まれ。劇作、演出家。岸田國士、岩田豊雄らの指導を受け、1932年、第一次「劇作」同人となり、処女作の「おふくろ」(築地座上演)が出世作となる。「教育」ほかで読売文学賞、他、受賞作多数。戦後の主要作品に「雲の涯」「肥前風土記」「千鳥」「右往左往」などがある。1995年逝去。
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