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中上健次
紀州熊野サーガの変奏曲『化粧』、『熊野集』。紀伊半島全域の“陰”を断行ルポした『紀州 木の国・根の国物語』を収録。『化粧』、中上健次ならではの歴史物語的な「過去」と、私小説的な「現在」を変幻自在に異種交配させた紀州熊野サーガの変奏曲の趣を持つ短篇集。夢と現(うつつ)、生と死、聖と賤が絶えず入れ替え可能な物語要素として、作品空間を妖しく揺さぶる。『熊野集』でも物語的な「過去」は、私小説的な「現在」とスリリングに交叉している。ここでの進行中の「現在」とは、中上一族がかかわる「路地」の解体=地区再開発であり、血族のもめ事である。だがそれは、ただのトラブルなどではなかった。中上健次は、小説の中では解決できない問題をのみ取り上げてきた作家だった。その彼が手がけたルポルタージュが、『紀州 木の国・根の国物語』である。これは紀伊半島全域の被差別部落に取材した労作。三十歳の中上健次は、約十ヶ月を費やしてこの取材旅行を敢行した。「私が知りたいのは、人が大声で語らないこと、人が他所者には口を閉ざすことである」。聞き書きを終えた中上は、「語られた物を、書き写すのは難しい、とあらためて思う」と語る。中上健次は終生、この「語り」と書き言葉の異次元性に身をさらし続けた作家でもあった。特別寄稿として、長女・紀の回想録「家族の道端」(7)、編集担当者だけが知っている(4)、(5)を掲載。付録:『紀州 木の国・根の国物語』取材風景のスナップ「中上健次 写真館」(5)、『熊野集』の生原稿等を収録した「特別付録」(6)を収録。【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。※この作品にはカラー写真が含まれます。
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