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三森定史
本書は、「真の哲学」を求めた在野の若い哲学者の果敢な試みの書である。 かつて、哲学が万学の女王の座に君臨していた頃、人間の聖なる「心」や「精神」に対する論究も、哲学だけに許された特権だった。しかし、近年の科学の発達、特に脳科学、認知科学、生命工学などの研究のめざましい進展が、哲学を追いつめ、その特権の?奪を激しく迫っている。つまり、デカルト以来の内省的な方法の賞味期限がとっくに過ぎ去っており、その聖なる範疇も、科学の研究成果を抜きにして語ることはできないというのである。そしてそれは、科学と哲学の領域が不透明になってきたというより、現実の現象に即応できない、極めて実践的ではない哲学そのものの不要論にまで及ぼうとしている。 しかし、本当に哲学は不要なのだろうか。哲学は自己認識の学問であり、事物に対する徹底的な論究と洞察が不可欠である。現実に求められる即応性の強い行動も、実はこの揺るぎない自己認識、真の哲学の上に成り立っていなければならないのである。いま、私たちの眼前に広がっている社会環境、政治環境、ひいては地球環境の急速な荒廃は、真の哲学なき者たちによって主導されているが故なのではないか。とすれば、いまこそ、真の哲学の出現が期待されている時代はないと言えるだろう。哲学の責任はますます重くなっているのである。 本書は、<科学は「存在者」についての原則記述学であるのに対し、哲学は「およそ存在者を存在者たらしめる存在そのもの」をテーマとする原理洞察学である>とする著書が、科学と距離を置きながら、あるいは科学を批判的に眺めながら、真の哲学の確立を目指して論究している壮大な「哲学試論」である。論究対象は、サブタイトルからもわかるように神、身体、言語、時空など多岐にわたり、随所で意表をつくロジックが展開される。この試みが成功しているかどうかは、本書を読んだ者のみに与えられる特権である。 アカデミーの世界に安住している知識人の多くが、哲学なき哲学史書や哲学解説書でお茶を濁している現状にあって、真の哲学の確立に挑んでいる在野の若い一哲学者の試みにはもっと光が当たってもいいのではないかと改めて思わせてくれるのが本書である。 〈目次〉序論 哲学とは何か一章 理性神学――人格神理念信仰必然性の理性価値論的証明二章 言語・概念・論理三章 時空原理論四章 形而下実時空統覚五章 数学基礎論六章 自由実感根拠論七章 自我意識を持った人工電子頭脳――人工電子生命体
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