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バロン吉元
昭和31年、この年、柳勘一は、熊本の鎮西高校の一年生で、柔道部員であった。一時期、得意の絶頂にあった菊水グループ会長・滝村もGHQの謀略で逮捕され、この頃ではすでに“過去の人”となっていた。また父親の柳勘太郎は、無実が証明され、昭和26年に無罪、釈放されている。しかし、同じ年に都内の露店も全廃され、テキヤの大親分・柳勘太郎にとっては、世間の風は、想像以上に冷たいものとなっていたのだ。そして、時が移り、昭和31年、柔道に精力を注いでいた柳勘一は、長い間、音信不通だった母・朝子と再会することになる。父・柳勘太郎は、軍隊の先輩のツテで、日航の副操縦士となっていた。母との出会い以降、稽古に身の入らない勘一は、思春期の影響もあるのか、しばしば授業も練習もサボるようになる。そして、そんな時、遊子という、とてもセクシーで不思議な女と出会うことになるのだ……。
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