恋ざかり

恋ざかり

宇能鴻一郎

1

遠ざかっていく下駄の音と、春の夕方の空気のあたたかさと、どっかの庭からただよってくる花の匂いに、体じゅうで、ひたってました。家族でない男女がひとつ屋根の下にいると、半日でこれだけ、胸がドキドキしたり、顔が赤らんだりするようなことが、あるんです。こんなこと、主人、想像したことがあるのかしら。

ジャンル
文芸
出版社
双葉社
掲載誌/レーベル
双葉文庫
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